1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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村亡編

448.全員で出発進行

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 ルカはまだ暗い中、竜車に乗り込んだ。
 手綱は誰も引いていない。
 にもかかわらず、ジュナイダー二代目は自分の意思でしっかりと舗装された道を駆けて行く。その足取りは飛竜らしいと言えばらしく、らしくないと言えばらしくない。
 それほどまでに足の裏で舗装された地面の石畳を捉え、運動エネルギーへと変換する。最大限の効率の良さを体現しており、もはや地竜と言っても遜色はない。

「凄いねジュナ二。地竜みたいに速いよ」
「むっ! ルカ、僕は地竜じゃないよ」
「地竜ぐらい脚が丈夫なんだよ。今の、私なりの褒め言葉だから」

 ルカは笑みを浮かべてそのまま零した。
 するとジュナイダー二代目にも若干伝わり辛い部分もあったが、触りの部分だけは理解を示してくれた。

 そのままルカは竜車の外、一応付けられた御者台の上に鎮座する。
 ナタリーに貰った地図を開き、エルフの森を睨んだ。
 ここから距離にして三日。しかも場所は入り組んだ森の中。
 ナタリーやリタリーの故郷があるエルフの里は北方に位置し、それに加えて古代樹に囲まれていた。しかしエルフの森は北東方面。直線距離に換算するだけで唇を噛みたくなった。

「まあ、私一人なら余裕かな」

 ルカは地図を畳んで亜空間の中に放り込んだ。
 御者台の縁に背中を預けると、唐突にジュナ二がルカに声を掛けた。

「ねえねえルカ~。どうして早く出発させたの?」
「ん? 早い方が良いでしょ?」
「そうだけどさ~。誰か来てたんじゃないの?」
「それはそうだね。でもみんな忙しいだろうから、少しくらいの配慮は……無縁かな」

 ルカは首だけ後ろに回した。
 それからジュナ二に最低限の謝罪を申す。

「ごめんねジュナ二。もう少し女の子達が増えそうだ」

 ルカの視線の先。暗闇の中により濃い影が浮かんでいる。
 数は四つ。そのうちの一つは風を纏い、足に糸が絡みつく。
 残りの二人はかなり目立つ。流星の煌めきのように炎を灯し飛行をし、ましてや虹色の翼を優雅に羽ばたかせる。
 いつもの面々。その中でも風の少女、シルヴィアは怒鳴り声を上げた。

「待ちなさいよ!」

 ルカはシルヴィアの姿を捉えた。
 怒った表情を浮かべていて、足に糸を絡みつかせるライラック共々落ちて来る。
 あまりにも危険な真似だ。けれどシルヴィアは風を心得ているので、落ちる寸前で下から突き上げる風を起こし、その場にホバーする。

「おはようシルヴィ、ライ」
「おはようー」
「じゃないわよ! どうして勝手に行っちゃうのよ!」

 もの凄く怒っていた。しかも今回怒っているのはシルヴィアだけではない。
 後から降りて来たダリアとブルースター。二人共激怒ではないものの、若干ピリピリとした異彩を放っていた。

「酷いですよルカさん。勝手に行かないでください」
「自分で誘っておいてこの対応はあまりだと思いますよ、ルカさん?」

 顔を詰め寄られてしまった。しかし四人共こんな時間に大概だ。
 揃いも揃って勢揃い。本当は暇を持て余していたのではないかと、ルカは自分の脳内にある候補と格闘をする。

「みんなおはよう。本当に来たんだね」
「もちろんですよ」
「「「予定を崩してきました」」」

 ブルースター以外の三人は同時にそう言った。
 ルカは凄い罪悪感を感じてしまう。
 それもそのはずで、予定が無いならと誘ったものの、まさか予定を崩してまで来てしまうなんて。そんな魅力というか魔力の様な物があるのか、ルカには分からない。
 けれどエルフの森という場所がどれだけ人の好奇心に促し掛けるのか、それだけは存じ上げていた。

「予定があったの? それって大丈夫?」
「大丈夫じゃないわよ。ルカは分かっているでしょ!」
「もちろんだよ。だから聞いているんだ」

 魔術省の重役。即ち官僚の親族と会うんだ。
 これ以上に自分を売り込むチャンスは無いし、家族団欒に発展もする。
 それを蔑ろにしてしまうなんて、流石にルカは表情を歪めた。
 けれどシルヴィアに迷いはない。何故なら相手がエルフだからだ。

「家族にはまた会えるわ。でもね、エルフの森なんて、この機会を逃したら一生行ける訳ないでしょ!」
「そう言うことー。昨日は葛藤してたんだよ?」
「だろうね。それで上手く行ったの?」
「は、はい。大変……ではありませんでしたよね」
「ええ。青春を謳歌しろですって。その一瞬で物事が決まるわけじゃない。やってみたいことなら、芽生えたチャンスや好奇心に飛び込め。どんな結果になろうとも、それは自分の力になる。ですって」
「良いこと言うね」

 かなり寛容のある良い両親だとルカは思った。
 背中を押してもらえるということが、どれだけ安心するのか。
 それをよく理解している証拠で、悩みの多いシルヴィアにとっては、最高の一言だったに違いない。
 ルカは自然と笑みを浮かべてしまうと、変に気持ち悪がられてしまった。

「ルカ、キモいわよ」
「そうかな? でもみんなの今の体勢の方が気持ち悪いよ?」

 ルカは素早く切り返した。
 シルヴィア達はとても痛い顔をする。実際に気味の悪い大勢をしていたからだ。
 自分で放った言葉の矢が自分に返ってくる感覚。無性に胸が痛い中、ルカは平然と声を掛ける。

「それじゃあみんな乗ったね。行こうか、エルフの森へ」

 結果的にはいつも通りになった。
 ルカはこの時間、借り受けるなら“青春”を大事にしたい。
 ルカとみんなの流れる時間は一緒じゃないと気が付いているからこそ、この瞬間瞬間を噛み締めるのだった。
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