1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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エルフの森編

510.触媒のリング

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 エルフの森に来て早々、色々なことがあった。
 しかし一日が過ぎるのは早い。
 北側に近いせいか、陽が沈むのも早く、気が付けば夜になっていた。

「ここを使っていいよ」
「そうですね、ルカさん達はこの木を自由に使ってください」
「ありがとうございます、ゾーラさん、セレビュさん」

 ルカ達はゾーラとセレビュに寝床へ案内して貰った。
 集落の端にある巨大な木。真ん中をくりぬかれており、最低限の家具が備え付けられている。
 数泊するのは悪くない。ダリアが代表して頭を下げると、ゾーラとセレビュは作り笑顔を浮かべ去って行く。

「それじゃあお休み」
「お休みなさいです」
「お休みなさいです。ふぅ……長い一日でしたね」
「本当。散々な一日になったわ。もう、精神的に擦り減ったわよ」

 ゾーラとセレビュが立ち去った後、急激に精神を蝕んでいたものが剥がれ落ちた。
 ここまで気を張っていたのか、シルヴィアは肩を落として全身から力を抜く。
 腕がダラーンと床に付き、体が崩れそうになっていた。

「確かに疲れたね」
「そうですね。それに加えて、早速山火事が起きてしまいましたね」
「あーあ、これじゃあ私達のせいみたいじゃない」
「そうだねー。あまりにもタイミング良すぎだよねー。あはは」
「笑い事じゃないわよ」

 ルカが黙る中、シルヴィア達は腹の内に抱えていた本音を吐き出す。
 自分達がエルフの森に来たせいで、惨事が起きてしまった。そう思ってしまったのだ。
 けれど無理もない。あまりにもタイミングが計ったように完璧で、自分達が引き金になったとばかりに感じてしまう。

「実際そんなことは無いけどね」
「ルカー、根拠のない励ましは止めてよねー」
「根拠がないのは惨事を嘆くのと同じでしょ? 誰のせいでもない。既に引かれていた引き金に、他人が何度手を掛けようが、既に放たれた弾丸を止めることはできないんだから。その証拠に、山火事には誰も気が付いていなかった。おまけに煤になったのも最近。少なくとも今日じゃないのは確かだね」

 ルカはシルヴィア達を根拠もない自虐に憑りつかれる前に救い出す。
 例え言葉としては充分であったのか、シルヴィア達も分かってくれたらしい。
 やや疲れ気味な笑みを浮かべると、思い出したように話し始める。

「そう言えば、ルカ。回収したリングは何個あったの?」
「リング?」
「あー、ダリア達は知らないよねー。実はさー、あの後現場に戻ったら、ねっ?」
「煤の中に隠れるようにリングが落ちていたんだよ。この通りね」

 ルカは亜空間の中に手を突っ込み、大量のリングを取り出した。
 数は全部で十五個。金属製のため、幾つか燃えて無くなってしまったのかもしれないが、少なくとも煤付きの金色リングはあらかた回収した。
 そのどれもに異様な魔力が練り込まれており、ルカでなければ触るのも億劫の代物だ。

「ルカさん、それは?」
「これがリングだよ。もっと噛み砕くと、魔法や魔術用の触媒だね」
「「触媒!?」」

 ダリアとブルースターは目を見開いた。
 首を突き出し驚くと、ルカに訊きたいことが山ほど生まれる。

「ルカさん、触媒ってどういうことですか!?」
「どうもこうもないよ。個のリングに魔力を込めることで、あらゆる事象を可能にする。自分の手を汚さなくても、魔力さえ込めれば遠隔で動くんだよ。こんな風にね」

 ルカは試しに魔力を注ぎ込んだ。
 今回は炎の対となる水の魔術を可能にする魔力をイメージした。
 リングに注ぎ込まれ、ルカの膨大な魔力を浴びると、煤が剥がれ落ち、ギシギシと今にも砕ける音を立てる。

「ルカさん、これ大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ。それっ」

 ルカが指を鳴らすと、リングが回転し形を変える。
 宙に浮いたリングを中心に、水でできた金魚の姿になった。
 優雅に空中を泳ぎ回ると、ルカの手を離れてダリアの下に辿り着き、指を再度鳴らす頃にはルカの魔力に耐えきれず、リングの姿に戻ってしまった。

「こんな感じかな。見せた通り、触媒を使えば遠隔で動かせる。それが強力な魔術を操る練度の高い魔術師なら尚更ね……あれ?」

 ルカが締めるように説明するも、ダリア達はリングを見つめたまま黙り込んでいる。
 何一つ返してくれる気配は無く、ジッとリングに視線を注いでいる。

「みんなどうしたの? 私、なにかしちゃったかな」
「ううん、ルカにしては可愛いものを作ったわね。いつもはもっと派手なのに」
「そうだねー。ルカが金魚って。ぷふっ」
「「金魚?」」

 ルカは呆れてしまった。いつもの私らしくないと思われたのだ。
 あまりにも如何でも良いことに言葉を失うと、シルヴィアがにやけた笑みを浮かべる。

「ルカ、これくらいの方がいいのよ」
「心外だな。私はいつもそうだよ」
「何処の誰が言ってるのよ。全く、いつもやりすぎなのにね」

 シルヴィアにバカにされてしまった。
 ルカはムッとした表情を浮かべると、シルヴィアの上から水をぶちまけようかと思う。
 けれどそんなことをする暇は無い。ルカが頬杖を付きながら考え事をしていると、ドタドタと慌てた足音が木の中を伝っていた。
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