1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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エルフの森編

522.ダリアと後始末

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 ダリアは駆け出した。
 残った炎獣は見えるだけでも十匹前後。
 その全てを一人で倒そうというのだ。

「先生ならできます。だったら私もやってみせます!」

 ダリアは自分の背丈以上に長く太い、所謂大剣を両手で抱え込んでいた。
 切っ先が地面を擦り、太い一本の道を作る。
 重量もかなりあるのだが、ダリアはそれを軽々と扱った。
 華奢な体にはとても似合わず、ましてや王族には不向き。
 そんな技量を見せると、ダリアは一匹の眼の炎獣を視界に捉えた。

「まずは一匹目です」

 体力はあり余っていた。
 おまけに活躍もできていない。
 誰よりも動けると悟ったダリアは地面を蹴ると、五型のゴーレム型炎獣を相手に、果敢に大剣を叩き込む。

「硬い部分は狙わずに、薄い部分を……見えました、それっ!」

 ダリアは飛び掛かると同時に魔眼を使った。
 炎獣の体は内側から炎、それを抑え込む様に岩の体でできている。
 だからこそ、分厚い岩の部分と薄い岩の部分が存在する。
 その微妙な高度の違いを見抜くと、迷わず大剣を叩き込む。

「ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!」

 小型ゴーレム型は悲鳴を上げた。
 薄い岩の体が破け、中からボワッ血炎が漏れる。
 油が跳ねるみたいにダリアに襲い掛かるも、ダリアは得意の火属性魔法、否、魔眼発動状態の火属性魔法を使った。

「《フレイム・カーテン》!」

 ダリアは体を捻ると、同時にヒラヒラと赤い幕が舞った。
 幕の正体は炎そのもの。漏れ出た炎を受け止めて軽く吸収すると、内側からコールド・ストッパーを投げ込む。

 グサリ!

 コールド・ストッパーが刺さり、中に入っていた冷却材が浸透する。
 小型ゴーレム型は一瞬で動きを止めると、ダリアは次の炎獣を標的にする。

「後九匹です」

 ダリアは残った炎獣にも果敢に挑んだ。
 大剣を担ぎ上げ、素早く小回りの利いた動きを見せる。
 炎獣よりも速くは動けない。
 だからだろうか。ダリアは決して目を放したりはしないが、それでも背中を見せたりしない。

「犬型と猫型は同時にまとめて……《ファイアボール》!」

 ダリアは牽制目的で左の手のひらから炎を出す。火球の形に早変わりすると、直線距離で飛び、犬型、猫型、二匹の胴体に当てた。
 けれどダメージにはならず動きを一瞬で止める程度に留まり、犬型と猫型は苛立った様子でダリアに飛び掛かる。

「ワフッ!」
「ニャァ!」
「ありがとうございます、私の狙い通りです」

 ダリアはこうなることを読んでいた。否、待っていたのだ。
 一歩も動くこと無く立ち尽くすと、担ぎ上げていた大剣を構える。
 飛び掛かる犬型と猫型。その胴体、丁度腹辺りに目掛け、大剣を投げつけた。

「それっ!」
「「ンッ!?」」

 投げ付けられた大剣は性格じゃなかった。
 けれど広い胴体にぶち当たると、嗚咽を漏らして炎を噴き出す。
 お腹の部分は脆かった。魔眼で把握していたダリアは続けざまにコールド・ストッパーを刺して二匹を撃沈させる。

「ふぅ、上手く行きました。残りは七匹ですね。この調子で頑張ります!」

 ダリアは自分自身を鼓舞すると、拳を作ってから次の剣を生み出す。
 軽くて丈夫なレイピアを装備すると、地面を蹴り込み一揆に近付く。
 視界に収めた蛇型・山羊型・シマウマ型。全部まとめて切り刻む。

「《スカーレット・フレイム》!」

 レイピアの剣身に炎を纏わせる。
 炎と炎のぶつかり合い。
 強い火力が食い合うのだが、ダリアの剣術と相まってか、横切るだけで炎獣の体を八つ裂きにし、内側から漏れ出る炎さえ食べてしまった。

「後、四匹はまとめて……」

残った炎獣は空を飛んでいる。
 ダリアも飛べばいいのだが、地上で体を捩じる。
 剣もレイピアから長剣に変化させると、魔法を唱えた。

「《スカーレット・スパイラル》!」

 ダリアの体に炎が集まる。
 円を描いて、まるで泳いでいるみたいだ。
 その状態、強烈な熱さに心身を焼かれながらも、ダリアは大技を繰り出した。

「全部まとめて熱気流にやられてください!」

 ダリアは回転を続けた。
 すると巨大な炎の渦が生まれる。
 全身を捻り、巧みに剣を揺らすことで、気流の流れを見事に生み出すと、飛んでいる炎獣達を纏めて包み込む。

 真っ赤な炎の渦が君臨する。
 その中でダリアは回り続け、縁銃を閉じ込めてしまう。
 圧倒的な熱量はサウナのレベルを超えていて、ダリアも炎で上手く気流を操作して耐えていた。

「いくら炎獣でも、体を構成する岩が砕ければ……」

 炎獣の体にたくさんの亀裂が生じる。
 パキンパキンと異様な音を立てると、中から炎が漏れる。
 気流に煽られダリア目掛けて落ちて来るも、そこをチャンスと見たダリアは残りのコールド・ストッパーを放り投げた。

「《ファイアダーツ》、当たってください」

 ダリアはコールド・ストッパーが熱気流に負けないようにお尻を押した。
 《ファイアダーツ》が火力を与え、真っ直ぐ、炎獣の露出した部分に刺さる。
 すると動きが鈍って行き、段々と飛行能力を失って落ちてくる。

「お、落ちてきました! 《スカーレット・バリア》!」

 ダリアは急いで自分を守る障壁を生み出す。
 落ちて来る炎獣達。それを全て《スカーレット・バリア》一つで受け止めようというのだ。

「いや、流石に無理がある……《クリア・シールド》」

 炎の渦の中をずっと黙止していたルカはそう思った。
 このままだとダリアが押し潰される。
 負傷は免れないと悟り、バレないように二重の盾を張る。

 透明な盾がダリアの《スカーレット・バリア》と重なる。
 炎の渦で視認性は完全に消失している。
 これで見えない。ルカは魔力を込め乍ら、炎獣が受け止められるのを待つ。

「あ、あれ?」
「成功、かな」

 炎獣は急速落下して盾とバリアにぶち当たる。
 しかし思った以上に衝撃が伝わらない。
 困惑した表情のダリアと一息を付くルカ。
 お互いの思惑なんて知らぬまま、全ての炎獣の機能は停止した。

「とりあえず炎獣はこれで全部だけど、なにか怪しいな」

 ルカは炎獣を倒し切ったことで安心した……訳も無い。
 むしろ生温いと感じてしまい、妙に怪しさを覚える。
 これを起こしたのがあの悪魔だとして、まだ何かあるんじゃないかと疑うと、その頃には炎の渦が解け、無事なダリアがポカンとしていた。
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