1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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エルフの森編

526.エルフの宴は賑やかに

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「では、森長として私が挨拶をさせて貰う。今回は炎獣による森の消失及び集落の安全を期することができた。これは一重に、懸命に戦ったエルフの同士、並びに森の外から来た魔術師達の活躍によるもの大きい。今夜はその祝に会し、宴を行う。盛大に食べて・飲んで・交流を育ませてほしい。乾杯」
「「「あいやしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 ディンネルを代表に挨拶を交わすと、木製のジョッキを手に、謎のコールを返した。
 一体何が起きているのか。
 訳も分かっていないシルヴィア達は、唯一コールに合わせることができたルカに訊ねる。

「ル、ルカ、今のなに?」
「なにって、エルフの言語だよ」
「エルフの言語!? もしかしてルカは分かるの?」
「全部じゃないけどね。今のは、乾杯、って意味らしい」
「……普通ですね」
「普通だよ。だからいいんだ。さぁ、私達も飲もうか……ジュースだけど」

 ルカ達は会場となっている木の幹、その中に開けられた巨大な空間。
 そこを会場とし、端の方に寄って立っていた。
 完全にエルフ達の輪に入ろうとせず、併設されたウッドデッキの柵にもたれかかる。

「うん、このジュース美味しい」
「ザクロみたいな味がします」
「そうね。後、ちょっと匂わない?」
「自然酵母によってアルコールが発生しているんだよ。このジュース、多分ザラメシュアの実を砕いて、発酵させた飲み物だから」

 ルカはこのジュースの味を知っている。
 というのも、未成年が飲むものとしては、エルフの中ではかなりポピュラーだった。
 しかしながらそれはエルフの常識だ。
 成人の議を済ませるまでのもので、人間とは圧倒的に分化が異なり、自然発酵由来のアルコールならば、摂取しても問題なとされていた。

「ちょっと待って。それじゃあ私達、とんでもないことしてない?」
「そうだね。でもここはエルフの森。つまりはエルフの領分だ」
「つまり、アルコールを摂取しても問題無いと言うことですか?」
「ある程度は世界基準で決まっているけどね。アルコールに関しては、別に決められてない。だから飲んでも問題無い……ううっ、アルコールさえなければ……」

 ルカは酒が苦手だった。というか飲めなかった。
 もちろん飲むこと自体はできる。けれど味を楽しめない。
 そのせいだろうか。ルカの顔は渋く歪み、我慢して飲んでいるのが一瞬で窺えた。

「味は悪くないんだけどね……」
「そうですね。確かに味自体は悪くありませんが、アルコール度数がかなり高いと思いますよ」
「だろうね。みんな、アルコール耐性強化の魔術は掛けておく……シルヴィ?」

 ふと視線を預け直した。
 全員にアルコール耐性を掛けようとしたのだ。
 しかし時既に遅かった。シルヴィアはコクリコクリと頭を垂れ、声を掛けるとルカにもたれかかった。

「し、シルヴィアさん、ズルいです!」
「ダリアはなに言ってるのかな? おーい、シルヴィ、起きて。ダメか……ライ、引き取ってよ」
「えー、面倒だよー。そうなったシルヴィ、ウザいんだー」
「そうなった? 面倒? 一体なに言って……」

 ルカはライラックの言っている言葉の意味を考える。
 “面倒”とは一体何なのか。
 ルカは首を捻るも、シルヴィアはそのまま腕を首に預けた。

「ルカぁ~、貴女はいつもいつも、なんでなにも教えてくれないのよ!」
「はっ?」
「じぇんぶ分かった風に言って、結局なーんにも伝わってないでしょ!」
「シルヴィ、酔ってる?」
「酔ってないわよぉ。もう、全くも~、いつもいつも、いつもいつも……ルカがちゃんと教えてくたらぁ、怪我なんてしなくて済むのよぉ~! 今回だって、もうっと早く対処でくたでしょー、もう!!」

 シルヴィアはウザ絡みをしてきた。
 ルカは目を見開くも、すぐにジト目になる。
 ライラックの言っていた言葉の意味が解った。
 これはあれだ。脳が軽く麻痺しているんだ。

「どうなのよ、ルカぁ~」
「どうと言われてもね、それはあくまでも結果論だよ」
「結果論!? ルカ、貴女はねぇ」
「結果的にエルフの森と集落はしばしの平穏を得られたんだ。それ以上に欲しいものは無いでしょ?」

 ルカは面倒に思いつつも、絡んで来るシルヴィアをいなす。
 今回の炎獣襲来の一件で、被害はさほど出ていない。
 おまけに対処の仕様も無かったのは言うまでもない。
 ルカ自身に落ち度は無く、むしろ被害を防ぐことができただけで充分だった。

「それじゃあなーに? これでよかったってことー?」
「よかったのかは分からないけど、とりあえずはね。それに見てよシルヴィ」
「ん?」

 ルカは宴の席を楽しんでいるエルフ達を見せた。
 戦いが終わり、無事に幕を下ろしたことを安堵している。
 もはやそこに後悔は無く、自分達のすべきことを成した、一種の達成感が包んでいた。

「みんな楽しそうでしょ?」
「そう……ね」
「誰も後悔していない証拠だよ。当の本人達があんなに楽しそうなのに、私達がしかめっ面をしても意味無いでしょ?」
「……うね」
「だからこれでいいんだよ。分かった、シルヴ……ィ?」

 ふとシルヴィアのことを見つめた。
 すると寝息を立てて眠っている。相当疲れが溜まっているようで、ジュースを飲んで眠ってしまったのだ。完全にアルコールに脳を麻痺させられたようで、頬を叩いても起きる気配が無い。

「寝ちゃったね」
「そうだねー。眠っちゃった」
「もう時間も遅いですからね。明日に備えて私達も眠りましょうか」
「そうだね。それじゃあ気が付かれないように退散しようか」
「はい。シルヴィアさん、帰りますよ」
「よいしょっと。それじゃあ寝よう―」

 ルカ達は初めって早々、宴の席から姿を消した。
 完全に気配を消すと、酒や食べ物、歌に踊りと夢中なエルフ達は気が付かない。
 死角に入り込むように会場を後にすると、速やかに借りた部屋へと戻るのだった。
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