1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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エルフの森編

527.真夜中のさえずり

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 時刻は真夜中。深夜も回り、日もまたいだ。
 外は未だに騒がしく、爛々とした灯りが付いている。
 簾越しに見えた光源にルカは薄く開けた目を擦ると、そのままゴロンと横になる。

「眠れないな」

 部屋の中は広い。そのおかげか、全員がゆとりを持って眠っていた。
 寝息を立てるシルヴィ。安らかなダリアに警戒心強めな姿勢を取るライラック。
 壁際で不動な姿勢を見せるブルースターの姿を視界に収めると、ルカも今一度目を閉じた。

「まあ、そのうち眠れるだろ」

 ルカは瞼を閉じると、暗闇が目の前に広がった。
 何かを考える気はない。だからこそ、頭の中はリラックスしている。
 こうしていれば自然と眠れる。
 そう思ったのも束の間、ルカの頭の中に炎が揺らめいた。

「ん!?」

 ゆっくりと上半身を起こした。
 今の炎は何だったのか。
 あまりにも限定的かつ、気を窺ったような好奇心が、ルカの意識を覚醒させる。

「今の炎は……魔力ってことか。凄く気持ちが悪い」

 炎の正体は魔力によるものだろう。
 その人の魔力適正を映したものであるのは間違いない。
 とは言えダリアのような純粋な炎じゃない。もっと邪悪な、ペテン師のような気持ちの悪い炎だった。

「久々に感じたな。……チャンネルを合わせすぎたかもしれない」

 ルカは額を摘まむと、自分が無意識に意識していたことを後悔する。
 そのせいもあってか気になってしまう。
 このまま横になっても眠れないのなら、体質を利用して調べに向かった方が効果的だ。

「って、私も落ち度を感じているのかな」

 シルヴィアに言われた言葉を重く受け止めていた。
 そんな気が一瞬だけどしてしまい、私は音を立てないよう、気配を完全に消してから部屋を出る。

 外にはまだ光源が残っている。宴もまだまだ中盤だ。
 ルカは楽しんでいるエルフの兵達を労うかのように、一人で請け負うことにした。
 早速魔力を辿り、エルフの森へと向かう。

「とは言っても、《パーフェクト・サーチ》を使うのはな……」

 目の前には何処までも広がる森。
 昼間や炎獣が通った時のような明るさは何処にもない。
 深い闇が広がっていて、お化けがダメな人なら、気絶していることだろう。

「エルフの森の魔力濃度は濃い。変に干渉して、散らされても困るな」

 ルカはいつものことながら、《パーフェクト》シリーズを使おうとした。
 けれど、精度が高すぎるもの考え物だ。
 魔力に干渉し、遮断され、上手く目標物を補足できない可能性がある。
 ルカは頭を悩まされると、一度考えを変えてみることにした。

「ここは普通の《サーチ》を使って……ん?」

 ルカは腕を組むと、いっそのこと初歩的な魔術を試すことにした。
 その準備のためか、言霊として魔術を行使しようとする。
 しかしルカは一度取り止める。と言うのも、森の奥から何か聞こえた気がしたのだ。

「気のせいかな?」

 そう思っても不思議じゃない。
 こんな時間に森に立ち入るなんて真似、ディンネルが許しはしない。
 ルカは分かり切ったことを気のせいだと片付けようとするも、再び耳にしてしまった。

「私は、なにも……」

 この声、もしかしなくても。
 ルカはつい気になって視線を向ける。
 森の奥は暗くて見えない。だからこそ実際に行くことにした。

「誰がいるんだ……いや、気付いてるけど」

 ルカは小陰に隠れながら気配を殺して進む。
 下手に魔術も魔法も使えない。
 干渉して感化されれば、森自体が気付いてしまうのだ。

「……やっぱり」

 ルカは小陰に隠れて覗き込む。
 目の前には黒い人影があり、一体誰か、もちろん分かっている。
 そこに居たのは……

「こうなったしまったのも、私の注意が足りなかったせいだ。糞っ、私は、私は……」

 ディンネルが悩んでいた。否、自責していた。
 地団駄をし怒りを吐露すると、奥歯を噛んでいる姿が浮かぶ。
 よっぽど腹立たしいのだろう。自分自身が。

「森長は大変だね。私には永遠に分からないことだよ」

 そんなディンネルのことを、ルカは終始他人事として見ていた。
 それ以上に思うことは無く、ディンネル自身が口にすることも無い。
 だからだろうか。ルカは不干渉を続けることにした。

「今日は止めておこうかな」

 ルカは見なかったことにすると、踵を返して部屋に戻ろうとする。
 しかし、それができなくなってしまった。
 背後から硬い何かを打ち付ける音がしたからだ。

 ドンッ!

「ん? 今の音は……はっ!?」
「誰だ!」

 ルカは突然のことに声を上げた。
 そのせいでディンネルにバレてしまい、険しい顔をされてしまう。
 見られたくないものを見られた。そんな表情だった。

「ルカか……なんの用だ」
「そんなのは後回しだよ。なにしてるの?」
「質問を質問で返す……」
「黙って欲しいな。なにしてたの? いや、なにしたの?」

 ルカは威圧感を放った。
 ディンネルはあまりの威圧に気圧され、言葉を失ってしまう。
 今にも膝を折ってしまいそうな中、ルカはディンネルの腕を見る。
 
 右の拳は真っ赤に染まっている。
 木の幹は野イチゴでも潰したように、ベッタリした赤が付着する。
 その正体は言及しない。代わりにルカは睨み付けた。

「自責するのは勝手だけど、自傷するのは意味が無いな」

 ルカの言葉は鮮烈だった。
 グサッとディンネルの心を貫くと、頭の中で膝を折る。
 ルカに思う壺にされると、ディンネルは腹立たしそうだった。
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