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炎の悪魔編
541.頭の固い幹部達?
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「と言うことだ。まだ炎獣襲来騒動は終わってはいない」
ディンネルは集会場に集めたエルフの森の長老達にそう答えた。
炎獣襲来はあくまでも序の口。手始めにも程がある。
実際、ディンネルは経験則からか、それともルカの見えた表情からか、まだ終わりでは無いと悟っていた。
もちろん、これで終わってくれれば何も問題はない。
けれど、そう甘くは無いことを理解し、入念な準備を怠ってはいけないのだが……
「いやぁ、それはディンネルよ、無いのではないか?」
「なんだと?」
ディンネルの言葉に異を唱える者達が居た。
まず口火を切ったのは、右側に座る男性。
エルフ族の血が流れてはいるが、純粋なエルフではない。
そのせいか、エルフにしては珍しく、白髪で長髪。顔には皺ができており、優しく言っても老爺だった。
「スヴェル、それはどう言うことだ?」
「いやの、炎獣を倒したと言うことは、もう森が焼かれることは無いと言うことじゃろ?」
「それは違う。炎獣はあくまでも尖兵の一つに過ぎない。実際、歯応えが無かった」
ディンネルだけじゃない。
ゾーラとセレビュ。森の外から来たルカ達が圧倒した。
しかも、まだ本気ではない。余裕とは言えないが、対処は可能なレベルだった。
「なんだぁ、そりゃぁ!? 俺達が仕込んできた兵士達が弱いみてぇじゃねぇか!?」
「実際そうだ。実践ではほとんど役に立っていない」
「なんとゴラァ!? おい、森長よ。黙って聞いてればいい気になりやがって。表出ろやぁ!」
「ゴラップ。私に勝てると思うのか?」
巨漢な男性エルフ、ゴラップは、筋骨隆々な体を見せつける。
ズケズケと前に出ると、ディンネルに盾突いた。
だがしかし、ディンネルも表情を変えない。
乾いた目を向け、常に余裕を見せつけた。
するとゴラップも大人しく黙るしかない。
確かにエルフの兵士達では相手にはならなかったのは事実だ。
「チッ。んならよ、一体なにがあんだよ! 分かってんだろうな!?」
「さぁ、それは分からない」
「分からないだと? 舐めてんのか、森長」
ディンネルの言葉に騒めきが上がった。
ゴラップの言葉が、それだけ集会場のエルフ達に伝染したのだ。
幹部達が狼狽えている。これを諫めるのがディンネルの役目なのだろうが、流石にディンネルも冷静ではいられない。それだけ敵が未知数で、なんなのか掴めていないのだ。
「森長、どうするの?」
「どうするもなにも、ここをフォローするのは私達の役目だよ、お姉ちゃん」
「その必要は無い。だが、事実は事実だ。炎獣は所詮、私達を脅かす一因に過ぎない」
ディンネルは姿勢を崩さない。
その凛とした眼が、集会場に居る全員の視線を釘付けにする。
けれど、そんなディンネルに反発する声も上がった。
「一因だと!? だったらなんだってたんだ」
「そうだ、ディンネル。連日集会場に集めて会議をするなんて、どういうことなの?」
「ちゃんと対策をしたんじゃないのか? だからもういいんじゃないのか?」
「森長、ちゃんと説明できないの?」
幹部達に問い詰められてしまった。
ディンネルの味方になってくれるエルフ達が少ない。
その対比はあまりにも一方的で、ゾーラとセレビュは今すぐ割って入りそうだ。
「「森長」」
「どうなんじゃ、ディンネルよ。なにか根拠でもあるなら説明して欲しいの」
スヴェルの言葉がディンネルに問う。
集会場の中で、空気が一瞬にして冷える。
完全に劣勢な空気。如何やって一変するのか、手腕が試される中、ディンネルの言葉は冷え切っていた。
「ふぅ、根拠があった所で、信用しないだろう」
「「「!?」」」
ディンネルには初めから分かっていた。
自分の言葉に散々反論してくることを。
だからこそ、まともに相手をする気はない。
ましてや反論するのなら勝手にすればいい。それがどんな結果を生むのか、どんな結末を招くのか、その全てにおいて、ディンネルは知ったことではない。
「確かに私はダークエルフであり、微かではあったが、エルフの里を納めるリタリー・ルラン様から直々にこの森を納めることになっている。それに腹を立てる者もいるだろう。当然のことだ」
ディンネルは分かっていた。
自分のことをよく思わない。むしろ嫌っていることを。
だからだろうか。少しでも陥れようと画策しているのだろう。
だがしかし、それに屈する気は一ミリも無い。
私は私であり、私のやり方で全うする。
「付いて来れないのなら仕方がない。聞く耳を持たないのなら構わない」
「ちょっと森長!?」
「森長様、流石にそれは……」
「そうだとしても私は私の成すべきことをするまでです。用心を取ること。まだ終わりが見えていないのに、浮かれている暇はない。気を引き締めて欲しい。以上だ」
私はバッサリ言葉を切った。
それ以上の言葉を吐く気はない。
私は誰よりも先に立ち上がると、集会場を出て行く。
「お、おい、森長!」
「ディンネルよ、流石に一方的ではないか?」
「ああ、待ってよ森長」
幹部達は慌てていた。こうなるとは思っていなかったのだ。
けれど狂ってしまった空気は元に戻すことはできない。
何故ならば、そこに当人が居ないから。
完全に砕け散ってしまった感情の嵐が、集会場をどよめかせた。
ここにあるのはただそれだけ。それだけの感情でしかない。
取り残されたゾーラとセレビュにはそう思えてならない。
そんな空気にしてしまったディンネルでさえ、もう後戻りはできないと覚悟を決めると、自分が何をするべきか、未だ迷っているのだからだ。
ディンネルは集会場に集めたエルフの森の長老達にそう答えた。
炎獣襲来はあくまでも序の口。手始めにも程がある。
実際、ディンネルは経験則からか、それともルカの見えた表情からか、まだ終わりでは無いと悟っていた。
もちろん、これで終わってくれれば何も問題はない。
けれど、そう甘くは無いことを理解し、入念な準備を怠ってはいけないのだが……
「いやぁ、それはディンネルよ、無いのではないか?」
「なんだと?」
ディンネルの言葉に異を唱える者達が居た。
まず口火を切ったのは、右側に座る男性。
エルフ族の血が流れてはいるが、純粋なエルフではない。
そのせいか、エルフにしては珍しく、白髪で長髪。顔には皺ができており、優しく言っても老爺だった。
「スヴェル、それはどう言うことだ?」
「いやの、炎獣を倒したと言うことは、もう森が焼かれることは無いと言うことじゃろ?」
「それは違う。炎獣はあくまでも尖兵の一つに過ぎない。実際、歯応えが無かった」
ディンネルだけじゃない。
ゾーラとセレビュ。森の外から来たルカ達が圧倒した。
しかも、まだ本気ではない。余裕とは言えないが、対処は可能なレベルだった。
「なんだぁ、そりゃぁ!? 俺達が仕込んできた兵士達が弱いみてぇじゃねぇか!?」
「実際そうだ。実践ではほとんど役に立っていない」
「なんとゴラァ!? おい、森長よ。黙って聞いてればいい気になりやがって。表出ろやぁ!」
「ゴラップ。私に勝てると思うのか?」
巨漢な男性エルフ、ゴラップは、筋骨隆々な体を見せつける。
ズケズケと前に出ると、ディンネルに盾突いた。
だがしかし、ディンネルも表情を変えない。
乾いた目を向け、常に余裕を見せつけた。
するとゴラップも大人しく黙るしかない。
確かにエルフの兵士達では相手にはならなかったのは事実だ。
「チッ。んならよ、一体なにがあんだよ! 分かってんだろうな!?」
「さぁ、それは分からない」
「分からないだと? 舐めてんのか、森長」
ディンネルの言葉に騒めきが上がった。
ゴラップの言葉が、それだけ集会場のエルフ達に伝染したのだ。
幹部達が狼狽えている。これを諫めるのがディンネルの役目なのだろうが、流石にディンネルも冷静ではいられない。それだけ敵が未知数で、なんなのか掴めていないのだ。
「森長、どうするの?」
「どうするもなにも、ここをフォローするのは私達の役目だよ、お姉ちゃん」
「その必要は無い。だが、事実は事実だ。炎獣は所詮、私達を脅かす一因に過ぎない」
ディンネルは姿勢を崩さない。
その凛とした眼が、集会場に居る全員の視線を釘付けにする。
けれど、そんなディンネルに反発する声も上がった。
「一因だと!? だったらなんだってたんだ」
「そうだ、ディンネル。連日集会場に集めて会議をするなんて、どういうことなの?」
「ちゃんと対策をしたんじゃないのか? だからもういいんじゃないのか?」
「森長、ちゃんと説明できないの?」
幹部達に問い詰められてしまった。
ディンネルの味方になってくれるエルフ達が少ない。
その対比はあまりにも一方的で、ゾーラとセレビュは今すぐ割って入りそうだ。
「「森長」」
「どうなんじゃ、ディンネルよ。なにか根拠でもあるなら説明して欲しいの」
スヴェルの言葉がディンネルに問う。
集会場の中で、空気が一瞬にして冷える。
完全に劣勢な空気。如何やって一変するのか、手腕が試される中、ディンネルの言葉は冷え切っていた。
「ふぅ、根拠があった所で、信用しないだろう」
「「「!?」」」
ディンネルには初めから分かっていた。
自分の言葉に散々反論してくることを。
だからこそ、まともに相手をする気はない。
ましてや反論するのなら勝手にすればいい。それがどんな結果を生むのか、どんな結末を招くのか、その全てにおいて、ディンネルは知ったことではない。
「確かに私はダークエルフであり、微かではあったが、エルフの里を納めるリタリー・ルラン様から直々にこの森を納めることになっている。それに腹を立てる者もいるだろう。当然のことだ」
ディンネルは分かっていた。
自分のことをよく思わない。むしろ嫌っていることを。
だからだろうか。少しでも陥れようと画策しているのだろう。
だがしかし、それに屈する気は一ミリも無い。
私は私であり、私のやり方で全うする。
「付いて来れないのなら仕方がない。聞く耳を持たないのなら構わない」
「ちょっと森長!?」
「森長様、流石にそれは……」
「そうだとしても私は私の成すべきことをするまでです。用心を取ること。まだ終わりが見えていないのに、浮かれている暇はない。気を引き締めて欲しい。以上だ」
私はバッサリ言葉を切った。
それ以上の言葉を吐く気はない。
私は誰よりも先に立ち上がると、集会場を出て行く。
「お、おい、森長!」
「ディンネルよ、流石に一方的ではないか?」
「ああ、待ってよ森長」
幹部達は慌てていた。こうなるとは思っていなかったのだ。
けれど狂ってしまった空気は元に戻すことはできない。
何故ならば、そこに当人が居ないから。
完全に砕け散ってしまった感情の嵐が、集会場をどよめかせた。
ここにあるのはただそれだけ。それだけの感情でしかない。
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そんな空気にしてしまったディンネルでさえ、もう後戻りはできないと覚悟を決めると、自分が何をするべきか、未だ迷っているのだからだ。
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