1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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炎の悪魔編

542.《ドリームビジョン》

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「ううっ……はっ!?」

 ディンネルは目を開けた。
 重たい瞼を押し開けると、眩しい日差しが差し込む。
 「ぅっ」と嗚咽を漏らすと、怪訝な表情を浮かべるが、それと同時に人の顔がある。

「お前は……」
「あっ、やっと起きた」

 そこにあったのはルカの顔。
 真顔でディンネルのことを見ている。
 一体何が起きたのか。地面に横たわる自分を見ると、ディンネルは全て悟った。

「私は眠っていたのか?」
「うん。うなされてね」
「魘される……そうか」

 つまりさっき見た光景は夢。否、現実を夢で復習したんだ。
 ディンネルは寝覚め最悪。
 顔を押さえると、奥歯をギュッと噛んだ。

「夢で魘されるってことは、相当ストレスを感じているんだね」
「当り前だ。お前とこうして話すことでさえ」
「ストレスってこと? それじゃあせっかく見張ってて上げた私に感謝は無いと?」
「くっ……助かった」

 ディンネルは渋々感謝した。
 だけど本心から出るものではない。
 現状、ディンネルは最悪な夢のせいで機嫌が悪く、これ以上言葉を交わすことさえ億劫だった。

「はぁ、よりにもよってお前だったのか」
「私じゃダメだったの?」
「ふん、当たり前だ。お前のことだ。きっとなにかしていたんだろ」

 まあ、それは当然のことだった。
 ルカはディンネルが眠っている間、夢に魘されている間、ずっと観ていた・・・・・・・

「なんだ、その顔は。私の顔がそんなに面白いのか!?」
「いいや。ただ、森長は大変だなって。自分のことを陥れようとする相手とも、対等な権利を持って話し合いをしないといけない。しかもその中で自分の意見を通さないといけないなんて、かなり精神を壊すよね。私はそんな経験したくも無いよ」
「ふん、それが森長と言うものだ」

 ルカの言葉はディンネルのことを煽っていた。
 森長と言う立場は確かに与えられたもの。
 そうだとしても、責任を持って取り組む。それがディンネルの答えだった。

 だからだろうか。ルカの言葉にも真っ向から突っかかる。
 例えそれが、森長のような、政治の立場を経験したことが無い相手でもだ。

「いや、少し待て」
「ん、なにかな?」

 そんな中、ディンネルはルカの言葉に違和感を覚える。
 引っ掛かった部分に糸を柔らかく解いて行く。

「その口振り、私は寝言でも言っていたのか?」
「さぁね、どうかな?」
「仮にそうだとしても、そこまで鮮明な光景がお前の目と耳に入っていたのか?」
「なんのことかな。私にはさっぱりだよ」
「とぼけるな!」

 ディンネルはルカが嘘を付いていつことを一目で見破る。
 何故なら、ディンネルは生まれてこの方、寝言を発したことが無い。
 ましてやルカの言葉は完全に的を射ていて、まるで全て見ていた・・・・・・ように、正確な回答だった。

「答えろ、お前はどうやって!」
「《ドリームビジョン》。他人の夢を映像として読み解くことができる魔術だよ」

 ルカは一切包み隠さなかった。
 今回使った魔術は最近本で読んだものだ。
 上手く行って良かったが、ここまでの精度が成せたのは、ルカだからだろう。

「《ドリームビジョン》だと!? 私の夢を観た訳か。つくづく感情を踏みにじって来るな」
「そうだね」
「そうだね、だと!? 分かっているのなら尚のことだろ」
「それもそうだけど、私は自分のしたことを悔いることは無いよ。むしろこれで分かったこともあるからね」

 ルカはディンネルの悩みの根幹を見た気がした。
 そう、ディンネルは……

「いや、自分で気が付かないとダメかな」
「なにが言いたい!」
「別になんでも無いよ。でもね、自分で気が付いているんでしょ? ディンネルは“賢い”からね」

 ルカはそう答えると、ディンネルを更に苛立たせた。
 “賢い”そんな言葉は似合わない。
 ディンネルは何も“賢く”なんかない。自分で自分を貶すと、つい感情が零れた。

「一体なにが正しいんだ」

 もう訳が分からない。そう言いた気だ。
 ただ一言の重み。空気を支配すると、ルカにその答えを求めだす。

「この世の中に、本当の正しさなんて無いよ。人間、誰しもエゴを持って生きているからね。永遠に見えない答えなんて、模索して逃避する気にもなれない」

 ルカの言葉は的を射ているようだった。
 しかしディンネルが欲しているものとは違う。
 そのせいか、ディンネルの好感度は上がらず、むしろ下がっていた。

「お前は一体、なにを見ていて……」
「そんなことはもういいよ。とにかく私は戻るからね。なに、時間はたっぷりあるんだ。エルフ特有の長寿の中で、答えを自分なりに探せばいいんだよ。それじゃあ、また後で」

 そう言うと、ルカはディンネルを置いて去る。
 もちろん、ディンネルの疲労や体の痛みは直に良くなる。
 魔術を薄っすらと掛けてあるから、まるで心配は無かった。

「何処までも上から目線な……」

 ディンネルの嫌味がルカの耳にも届く。
 だけどルカは振り返ることもしなければ、否定もしない。
 完全に無視を決め込むと、集落へ戻る最中、近くに生っていた木の実などを収穫しながら戻って行くのだった。
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