1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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炎の悪魔編

552.ワイバーン型

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 ルカ達が悠長に考えていた。
 今にも衣服に炎が灯りそうな中、森の奥地から異様な音が聞こえた。

「ねぇ、なにか聞こえなかったー?」
「はっ? 急になに言ってるのよ」

 最初に気が付いたのはライラックだった。
 当然、ライラックにしか聞こえなかった音に、他の面々が気が付きはしない。
 シルヴィアは真っ先にツッコむ中、視線がルカに向いた。

「ねぇー、ルカは聞こえたでしょー?」
「うん、聞こえたよ。てっきり私だけかと思ってたけど……」
「私も聞こえていた」

 ルカとディンネルの二人は気が付いていた。
 もちろん、ディンネルは森の異変に気が付ける。
 長くこの森に住んで、常日頃から見回りをしているおかげだった。

 一方のルカは森に生える前から、身体能力を強化していた。
 時空魔術ではなく、魔法で介入し、森の細部を事細かに探知。
 それらが組み合わさり、呼吸法も交えたことで、ルカにはライラックと同じ音を聞き分けられた。

「ほらー、やっぱり聞こえた―」
「うるさいわね! 大体ライは、五感だけは以上に優れてるのよ!」

 シルヴィアはライラックに抗議を入れた。
 互いに反発し合っているが、ライラックの方は「あははー、なんでかなー?」と曖昧に誤魔化している。
 完全にあしらわれると、シルヴィアは地団駄を踏む。
 完全に子供のやり取りだったが、ルカも疑問を抱く。

(下手に詮索はしないけど、ライラックのアの才能。持って生まれた才能化、あるいは後天的に植え付けられたものか……どちらにせよ、今は……)

 ルカはライラックのことをジッと見る。
 観察してしまいそうになるが、すぐに意識を変える。
 今やるべきは、この音の真相を確かめることじゃない。
 炎の悪魔を止めることだった。

「とりあえず、炎の悪魔を見つけ出そう。本体を叩けば、この魔法は解かれる」
「そんなに簡単に行くのか?」

 もちろんディンネルは速攻で疑う。
 ルカも自身は無く、表情に影が落ちる。

「どうかな? 本体が魔力を込めている場合なら、その供給が解かれれば、勝手に消えるよ」
「それなら、供給でなければ?」
「自然鎮火を待つしかないかな? 消化ができない以上、こっちも手を打つ必要があるよ。例えば、インフェルノを持続的に維持しているなにかを潰すとかね」
「くっ、また面倒だな」

 ディンネルは本気で嫌そうだった。
 とは言えこれで方針は決まった。
 手分け……と言いたいが、分かれて行動すると危険だ。
 接敵に備え、二手に分かれて炎の悪魔を探すことにした。

「とりあえず、私とディンネルで分かれて行動しよう」
「ふん、その必要は無い」
「ディンネル、今はそんなこと言ってる場合じゃ……」
「無論だ。だが、お前のことを私はまだ信用しきってはいない。強さは本物でも、その態度は気に食わない。だから、私は私の行動を取らせてもらうぞ」

 勝手なことを言いだすディンネル。
 このタイプは、後から言っても聞きはしない。
 ルカは早急に諦め、「仕方ないな」と呟いた。

「それじゃあディンネルは単独行動。なにかあったら知らせて」
「その必要は無い。炎の悪魔だろうが、私一人で……」

 ディンネルは息巻いていた。
 だがしかし、ルカにはディンネル単騎では勝てないと分かっている。
 圧倒的な実力の差。余裕がまるで無かった。

「そう言うの要らないよ。とりあえず私達は向こうに……あっ」
「あっ、ってなに? なんか嫌な予感が……するんだけど?」

 ルカの違和感に、シルヴィアは過敏に反応した。
 表情がギコちなくなると、視線の先を睨んだ。
 燃え盛る森を掻き分け、地均しを鳴らし、ドスンドスンとやって来る。

「なんだ、あれは?」

 ディンネルはナイフを握った。
 腰を低く落として構えを取ると、現れたのは巨大な炎獣。
 その姿形は今までの炎獣とは、少し異形。
 竜のような頭に、分厚い脚、長い尾は黒く焼け落ち、背中には二枚の翼を生やし手と一体化している。

「ル、ルカさん。これは……炎獣ですよね?」
「そうだね。けれどただの炎獣じゃないかな」
「ただの炎獣じゃないとは?」
「ワイバーン型。炎の悪魔、秘蔵品を出して来たみたいだよ」

 ルカの目には一発で分かった。
 明らかに他の炎獣とは作り込みが違う。
 魔力の質もさることながら、その威圧感はまさに本物。

「ワイガァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 高らかに吠えるワイバーン型。
 ルカ達は気圧されはしなかったが、その迫力を前に足止めを喰らった。

「どうするのよ、ルカ!」
「どうするもなにもね」

 シルヴィアはいきなりルカに仰ぐ。
 けれどワイバーン型が来るとは想定外。
 本気度が伝わると、ワイバーン型は、長い尾を使って攻撃する。

「ワイギャァ!」

 当たれば骨の一本や二本、軽く折れる。
 全員しゃがみ込んで上手く躱すと、ワイバーン型の尻尾が、木の幹を叩き潰す。
 バキッと横薙ぎで倒されると、退路を断たれてしまった。

「あはは、逃げられなくなっちゃったね」
「なに呑気に言ってるのよ!」

 シルヴィアは怒鳴り込む。
 ルカは、そんな中でも表情は変えない。
 むしろこの空気を一人乗りこなせると、拳を強く握って開いた。
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