1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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炎の悪魔編

570.幕引きや楽々と

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「ぜぇぜぇぜぇえぜぇ……」
「あれ、もうお終い?」

 オービエンは疲れを見せた。
 ここまでの戦いで相当魔力を消費したらしい。

 魔力は生命力の源だ。
 尽きれば、心身共に多大なる影響を与えることは分かり切っている。

 だがしかし、オービエンは魔族だ。
 魔界に住む魔族は魔法との密接な関係がある。故に魔力は多く、魔法にも慣れ切っている筈だが、異様な疲れと消耗を見せる。

「な、何故だ? 何故炎の火力が……」
「落ちるのは当然だよ。なんたって、こっちにいる限り、いくら魔族でも魔力量には制限が掛かるからね。強力な魔法を連発していれば、そのうちガス欠を起こすよ」

 ルカはこれを狙っていた。
 オービエンがいくら強力な魔法を使える魔族であり、悪魔の中でもかなり上位の存在であったとしてもだ。魔力はいつか切れる。そのタイミングを見謝れば、結局不利になるのだ。

「超獄炎は魔力も肉体も消耗が激しい。考えれば分かるけど、あれだけ強力な魔法を何度も使っていれば、こうなるのは目に見えていたでしょ?」

 ルカは全力で煽った。オービエンを逆撫でし、より強さを発揮させようとしているのだ。
 しかし、オービエンに残された魔力は少ない。
 ルカの挑発に乗っている暇などなく、もはや勝敗は決している。

「くっ、《超獄炎の》……」
「それ以上は辞めた方がいいよ」

 ルカはスッと近付くと、オービエンの蟀谷に指を当てる。
 人差し指を押し当てると、そのまま力を入れずに押し倒す。
 オービエンの足が震え、そのまま尻餅を付きそうになるも、自力で踏ん張り立て直した。

「おっ、凄いね。まだやれるんだ」
「お前がこの距離に来ることを待っていた!」
「えっ?」

 オービエンは嬉々とした表情を浮かべる。
 ルカに腕を掴み、逃がさないようにする。
 すると右手から黒い炎が膨れ上がり、ルカのことを狙った。

「焼き払え、《超獄炎ハイ・インフェルの深炎・アビスフレア》!」
深炎アビスフレアか。だったら私も見せてあげるよ……《終焉のロストベル・エ嫉炎《・ヴュラーシュ》》!」

 ルカとオービエンの魔法がぶつかり合った。
 お互いに超至近距離。故に衝撃波は大きく振幅する。

 爆発的な炎が重なり合うと、黒と赤。まじりあう筈の無い炎が溶け合い、赤が黒を塗り潰す。

「な、なにっ、その魔法は!」
「ふん。終わりかな?」

 ルカの炎がオービエンを飲み込んだ。
 右腕から全身を包み込み、本来発散されるはずの火の粉を全てオービエンが被ってくれる。

「くっ、俺の炎が、俺自身を飲み込む気か!」
「まあ、これ以上の被害はね」

 ルカが魔法を完全支配する。
 オービエンは全身を炎に包まれ焼かれてしまう。もはや抗うことも、抜け出すこともできない。全身が塵のように分解されると、オービエンは睨み付けた。

「何故だ、何故、何故、何故、何故お前が!」
「エヴュラーシュのこと? 答えは簡単、私はエヴュラーシュの友達だからね」
「黙れ! 我が主人の名を騙るな。お前のような不届きな人間が、友人など、友人など、ありえない!」
「それがあり得るんだよ。ごめんね」
「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 オービエンは発狂した。如何やらそれほど意外だったのだろう。
 狂ったようにのたうつと、オービエンの姿は炎に食われた。

「何故だ、何故何故何故、何故、お前がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「何故も無いんだけどな」
「くっ、まだだ。まだまだまだまだ……こんな所で、ショーを終わらせるには……」
「惜しいと思うの? それならもっとやろうか?」

 ルカは炎に食われたオービエンを更に追い詰める。
 もちろん、殺すような真似はしない。
 試すのは、ちょっとした魔法だ。

「あまりしたくは無いけど……えいっ」

 スパッ!

 ルカは自分の左手に右手の親指を押し当てた。
 爪を引っ掛けなにをするのかと思えば、縦に線を一つ入れる。

 ジュル

 ルカの皮膚が傷付けられ、血管が切れてしまった。
 ゆっくりとだが、ルカの真っ赤な血が外に出る。

「ち、血を出すだと?」
「そうだよ。オービエンなら分かるよね?」

 ルカはオービエンの周りに血を滴らせた。
 真っ赤な血がトクトク滴り、オービエンを取り囲むように円を描く。
 見る人が見れば分かる。これは陣だ。

 しかもただの陣じゃない。
 立派な魔法、古来よりこの地とを繋ぐ、特別な陣だ。

「そ、それはまさか」
「強制帰還。帰って貰うよ」
「なっ、逃げるな。この俺はお前を、お前を倒す……こんな炎など、今すぐに消して」
「まさか、そんなことしないよ。だって、もう終わりだからね」

 ルカはナイフで傷付けた腕を治す。
 あっという間に傷が塞がると、血液は失われたままだが、傷は無くなる。

 一方のオービエンは炎の中で踊り狂う。
 炎の悪魔なのにと思うが、まさか炎にやられるとは思わなかったのだろう。

「ああ、消えない消えない消えない!」
「そう、その炎はオービエンの炎を飲み込んでる。だから簡単には消せない」
「クッ、この俺の魔法を利用したのか」
「もちろんだよ。だからこの炎は私のものじゃない。オービエン、お前は自分自身の手で自分を殺すんだ。そう、私は関係ない」

 しかし、オービエンはもはや敵ではない。
 必要もない嘘に踊らされ、勝手にあたふたしていた。
 圧倒的な力はオービエンを炎の中に引きずり込むと、炎の中でオービエンの姿が散った。朧に溶けると、トロリと消失した。
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