1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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チョコレート編

589.もうじき期末です

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 今日も今日とて雪が降る。
 ホワリとした白い粉粒が空から舞う。
 地面に触れると、地表から漏れる熱で溶けてしまうのだが、気温も低く降る雪の量もあるので、早々解けずに積もって行く。

 そんな姿を窓越しに眺めていた。
 ルカは机に肘を付き、頬杖を付いていた。
 ボーッと意識を虚ろにさせるが、耳だけを澄まして授業を聴く。

「それでは今日の授業はここまでです。皆さん、しっかり復習した上で学年末テストに向け精進してくださいね」

 ノーブルは用意して来た教科書を抱え込むと、ルカ達生徒に忠告する。
 確かにもうじき学年末テストがある。
 一年間の総決算だ。留年なんて当然ごめんなので、復習を怠る訳にはいかない。

「みたいだよ」
「そうね。本当に今年はヤバいわ」

 ルカがポツリと呟くと、シルヴィアが死にそうな顔をしていた。
 表情に笑顔の“えの字”も無い。
 心底辛そうで、険しい表情が幾つもの層を浮かべている。

「シルヴィは大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないわ。今年は色々あり過ぎたもの。いくら学園長が配慮してくれているとは言っても、それは実力じゃないわ。ここで成績を落とすわけにはいかないもの」

 官僚を目指すシルヴィアにとって成績は重要視された。
 今年は課外活動と表した修羅場を幾つも潜って来た。
 そのため授業に出る暇が無く、危うく単位を落とし掛けたのは事実。学園長の計らいが無ければ、今頃留年確定だった。

「それはそうと、ブルースターは?」
「ブルースターさんでしたら、一週間ほどお休みですよ」
「お休み?」
「はい。確か従姉の方から、お願いされてマギアラを離れているそうです」
「従姉ってことは、あの教会の」
「はい。ブルースターさんが管理されている教会がありますよね。その教会の本来の管理人である従姉の方が、急用があるとのことでブルースターさんに手伝って貰っているそうです」
「どんな従姉よ、それ。まあ、ブルースターなら大丈夫そうだけど」

 確かにブルースターは優秀だ。成績もよく人当りも良い。
 少しくらい休んでも成績には響かない。
 それだけ教師陣の間で配慮がされている。だからこそ、シルヴィアは負けられなかった。

「ブルースターはいいとして、私は絶対に負けないわ! 今回こそ」
「ふはぁー。なにいってるの~? シルヴィ、私にもテストで勝てないじゃんかー」
「うっ、ライ。貴女余計なこと言わないでよ」
「事実でしょー。勉強なんて、適当にやってればそこそこの点が取れるのにー」

 ライラックはうつ伏せで顔を埋めていた。
 授業中はいつもこれで、態度としてはもの凄く悪い。

 けれど脳の半分は常に覚醒状態にある。
 覚醒と睡眠の両立を不可解にも可能にすると、ライラックは寝ているにもかかわらず、授業内容を的確に聞き取っていた。

 そのおかげか本人の言う通り、いつもテストの結果はいい。
 シルヴィアがいくら時間を削って勉強しても、一切勝てる見込みがない。
 それほどまでに圧倒的で、テストの結果ではいつも辛酸を舐めさせられていた。

「うっ、ライが異常なのよ!」
「そうかなー?」
「私をバカにしてるの? こっちが何時間も掛けて机にしがみついてる間、ライはいつも……」
「寝てるよー。だって、睡眠の方が大事でしょー?」
「ああ、その態度が腹が立つの。なんで私は、テストでライに勝てないのよ!」

 シルヴィアは頭を掻き毟った。
 本当に悔しいのか、何だかルカは笑ってしまう。
 「ふふっ」と小声で笑うと、シルヴィアに睨まれる。
 けれどまるで怖くなく、ルカは適当にあしらう。

「そんなに怒らないで。シルヴィは、他で成績がいいでしょ?」
「そうですよ。シルヴィアさんは素行がいいじゃないですか!」
「うっ、全然褒められている気がしない」

 さも当然のことのように思っている。
 けれどこれも立派な才能で、テストでは測れないものだ。
 だからテストに縛られた姿を憐れむと、ルカは手を合わせてしまった。

「ちょっと、手を合わせないでよ」
「いや、合わせた方がいいかなって」
「いい訳ないでしょ。私が惨めに見える」
「いや……まあね」

 ルカも言葉に詰まらせてしまった。
 シルヴィアは対照的に俯き加減で机に突っ伏せる。
 ボーッと窓の方を見ると、白い雪が降っている。なんだか寒々しくなってしまうが、口から出た言葉は明るかった。

「そう言えばもうすぐバレンタインね」
「バレンタイン?」
「ええ、そうよ。まあ、私には縁が無いけど」
「私もだよ。それにバレンタインなんて……」

 バレンタインなんて縁も無いと、ルカも分かり切っていた。
 だからこそ、特に予定の無い月を過ごすと思った。
 まあ、たまにはそんな時があってもいい。高を括っていると、ダリアが目を輝かせる。

「いいですよね、バレンタイン」
「「はっ?」」

 キラキラと瞳がステンドグラスのように眩しい。
 ルカもシルヴィアも退屈そうな声を上げるも、ダリアだけは違う。
 急に目の色を変え、話の流れを逆転させた。

「ルカさんはチョコレートは好きですか?」
「嫌いじゃないけど、なに?」
「それではバレンタインがチョコを贈り合うことを知っていますか?」
「知ってるけど、別にチョコレートに……ん?」

 話の流れが読めてしまった。
 ルカは瞬きをして「ん?」と首を捻ると、笑みを浮かべてこう言った。

「ルカさん、チョコレート作り手伝って貰えませんか?」
「「えっ?」」

 ルカもシルヴィアも唖然となる。
 ここまでやる気に満ちたダリアは珍しい。
 いつも覇気があるのだが。今回に限っては違う色もあるので、ルカとシルヴィアは互いに顔を合わせ、同じ目をして驚いた。
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