1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

文字の大きさ
595 / 733
チョコレート編

591.物騒な噂

しおりを挟む
 ルカは材料を持って家を出た。
 学校帰りに必要な材料を買い集め、無いものは自力で採りに向かった。
 《テレポート》の魔法は、魔術もそうだが魔力の消費が大きい。
 時空魔法が得意なルカでさえ、感覚も何もかも違うので使いたかったが、長距離移動のために仕方なく、如何しても二回も使っていた。

「ああ、気持ち悪い」

 ここ数日は寒さも相まってか、あまり影響の出ない体質のルカでさえ、頭を抱えていた。
 場所が場所だったこともあり、疲労も蓄積されている。
 体はいつも通り、精神的にも問題は無いのだが、フラッと寝不足がたたった。

「ふはぁー。それにしても、シルヴィの家に行くのは初めてだね」

 この一年を通して、ルカが自宅に招いたのは勝手にやって来たナタリーのみ。
 かと思えば、ルカもまたブルースターの管理する教会以外には行ったことが無い。
 だからシルヴィアの家がどれだけのものか少し楽しみではあった。

「リューネラ家は官僚だからね。きっと立派な家構えなんだろうな」

 ルカは様々な妄想をしてみた。
 けれど全ては妄想で、真実が如何であれ変わることは無い。
 いつもの道から少し逸れ、十字路を曲がる。この先には坂道があり、如何やらこの先に家があるらしい。

「如何にもって感じだね」

 ルカは心が湧き立った。楽しくなる気持ちに突き動かされる。
 疲労した状態に坂道は多少嫌になるが、それよりも嫌な話を耳にする。
 休日と言うこともあり、何人もの住民が整備された街道を歩いていた。

「ねぇ、聞いた。最近強盗が多いらしいわよ」
「えっ、それ本当?」
「そうなの。なんでもね、昼間でも関係無く住宅に侵入するらしいわよ」
「まぁ、命知らずね。魔術師の街でそんな真似」

 確かに自殺行為と言ってもいい所業だ。
 何せマギアラは魔術師の街。その原点に位置する。
 多くの魔術師や魔術師の卵が暮らす街で、強盗なんて真似馬鹿げているとしか言いようがない。

(全く、命知らずな強盗だね)

 ルカも強盗側の肩を持つ。
 心中を察してしまうが、何故ここまで捕まらないのか。
 騎士団の駐屯地もあり、自警団も魔術師も多い。なんと言ってもナタリーの管理する街で、強盗なんて真似早々できる訳が無かった。

(まさか、誰かが裏で糸を引いている?)

 その可能性が無いとは言えない。
 ナタリーのカリスマ性でも従ってくれない人間がいる。
 もちろん誰かを縛り付けるのが人間では無いし、それをひけらかすのも違う。
 己の行動理念を持っているのはいいことだが、強盗なんて真似罪でしかない。

「ナタリーさんがいるのにね」
「全くよ。なんで捕まらないのかしら?」
「それが強盗は一人じゃなくて複数人らしいのよ。しかも全員魔術師って噂」
「魔術師!?」

 如何やら噂の強盗は一人ではなく複数人、つまりは強盗団と言うことだ。
 それなら計画も少し変化する。
 一人では無理難題なことでも、リスクは大きいが複数人で取り掛かれる。
 もちろん罪であることには変わりなく、ルカはやれやれと心底嘆く。

「魔術を犯罪に使うなんてね」
「全く怖いわ。魔術を使えない人だっているのに」
「そうよね。でも例の強盗団、なかなかに豪胆な性格みたいよ」
「そうなの? もしかして、銀行を襲ったりして?」
「ええ、銀行じゃないけれど、お金持ちの家ばかり狙ってるみたい」

 “お金持ちの家”? なるほど、金品が豊富な家を狙っているみたいだ。
 ましてや富豪宅なら優秀な警備が付いている筈。
 それさえ掻い潜ってしまうとなれば相当な手練れで、ルカは面倒な相手だと思った。

(魔術師は近接攻撃に弱いけど、警備を掻い潜るとなれば、相当みたいだね。まあ、私には関係無いんだけどさ)

 ルカの住んでいる家はそこまで大きくはない。
 庭は付いているものの、街の外れにある。
 それのせいもあり認知さえされず、学校からも距離があり、利便性は悪いのでとんでもなく安い。だからだろうか、強盗の様な輩がやって来るなんてほとんどあり得ない。

(しかも金目のものは全部亜空間の中だからね。心配する必要は無いけれど、この辺りはマズいかな?)

 今ルカがいるのは高級住宅街。
 その目の前を歩こうとしていて、非常に怪しい。
 周りを見渡せば大きくて立派な造りの家々が並んでいる。
 正直、“盗んでください”って言ってそうな雰囲気さえ漂っていた。

(マギアラなのに、魔術結界も張っていないなんて。警備が杜撰だな)

 ルカは嘆かわしいというよりも憐れんでしまった。
 ルカの家でさえ、一応超強力な魔術結界を張っている。
 それに引き換え高級住宅街には魔術結界なんて藻の張っている様子も無く、代わりに人間が門の前で立っている。

(一級魔術師じゃない……準でもない。二級程度の魔術師かな? 強盗団の力量が分からないけれど、さてさてどうでるかな?)

 薄っすら遠くの方の家には魔術師の気配があった。
 視線を飛ばして魔術師の度合いを探ってみると、少なくとも二級程度。
 もっと言えば準二級程度の腕前で、ルカは肩を落としてしまった。

「まあ、二級でも準二級でも強い人は強いけどね。私には人のポテンシャルにどうこう言う権利はないか……」

 ルカは首を横に振り、失念していた自分を律した。
 坂道を再び上がり、シルヴィアの家に向かう。
 その最中、話し声はこうも聞こえた。

「しかもね、ただの魔術師じゃないらしいわよ」
「えっ、そうなの?」
「そうなの。魔術師にも全然気付かれない、まるで透明人間らしいわよ」

 透明人間のような魔術師。
 一体どんな奴らなのか、流石にルカは聞いていない。
 今もマギアラに潜む強盗団に怯え、その話題は密かに広まりかけていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

昭和生まれお局様は、異世界転生いたしましたとさ

蒼あかり
ファンタジー
局田舞子(つぼたまいこ)43歳、独身。 とある事故をきっかけに、彼女は異世界へと転生することになった。 どうしてこんなことになったのか、訳もわからぬままに彼女は異世界に一人放り込まれ、辛い日々を過ごしながら苦悩する毎日......。 など送ることもなく、なんとなく順応しながら、それなりの日々を送って行くのでありました。 そんな彼女の異世界生活と、ほんの少しのラブロマンスっぽい何かを織り交ぜながらすすむ、そんな彼女の生活を覗いてみませんか? 毎日投稿はできないと思います。気長に更新をお待ちください。

処理中です...