1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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チョコレート編

605.電撃に打たれて

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「みんな大丈夫かしら?」

 バッサは心配になっていた。
 盗賊団とは言え、家族のような関係だ。
 中々戻って来ないメレオンを始め、自分がその後の指示を出した。
 不安でいっぱいになると、その話を訊いていたライラックが現れる。

「へぇー、貴女が最後の一人ー?」
「ん!?」

 バッサが振り返ろうとすると、それよりも先に糸で絡め取る。
 身体の自由を奪われた挙句、口にまで糸が巻き付く。
 喋ることも許されない。
 突然のことに、バッサの心拍数が上がる。

「はい、動かないのー」
「うっ、な、にゅぃ!?」

 ライラックの声が糸を通じて全身に伝わる。
 ドクンドクンと脈打つと、必死に口を動かす。
 美味く喋れないせいか、言葉が掻き消された。

「はいはい、抵抗しなのー。でさー、貴女が最後の一人でしょー?」
「むぐぅ!?」
「あはは、喋れないよねー」

 ライラックは笑っていた。嬉々とした笑みを浮かべている。
 そのせいか、バッサはゾッとしてしまった。
 体中が一瞬で汗で冷えると、何とかして抜け出そうと足搔く。

「いいよいいよー。指動かすと、もっと締め付けるよー」

 バッサの指先が動いていることを、ライラックは糸を伝って手に取る様に察していた。
 そのせいか、ベルトからナイフを取り出すことができない。
 糸が余計締め付けると、指が鬱血しそうになる。

「ぃたい!」
「痛い? それはそうだよー。だって私が糸で締め付けているんだからさー」

 痛いのは当たり前だった。それもその筈、ライラックの糸は一本じゃない。
 指先から出ているのは合計で五本分。けれど一本一本細くて強靭な糸を編んでいる。
 そのせいか目では五本に見えるけど、実際には何十本もの糸で全身を縛り上げる。
 そうなれば体中が打撲状態になり、ミイラのようになってしまった。

「ううっ、ううっ!?」
「ねぇねぇ、他の仲間はまだいる?」
「ぁかま!?」
「仲間はこれで全員だって、他の人達は言ってるんだけどさー。まだいるのー?」

 ライラックはバッサに訊ねた。
 けれどバッサは口が堅くて答える気は無い。
 そのせいか、ライラックはバッサに見えない方向に声を掛ける。
 誰かと話をしているのか、バッサは「まさか」と危惧する。

「どぅあえが、言うか!」
「まあ教えてくれないよねー。ねぇ、この子がサブリーダーなんでしょ?」
「ましゃか!?」

 そのまさかのことが起きていた。
 バッサは無理やり体を捩じると、目を見開いてしまう。
 大切な仲間達がほとんど捕まってしまい、地面の上に転がっている。

「いんなぁ!」
「あはは、コレが全員だよー。ねっ?」

 強盗団のメンバーは屋敷に潜入したメレオンを除外し、バッサを残して全員捕まっていた。
 糸でグルグル巻きにされ、完全にミイラ状態になっている。
 誰が誰か判別できないが、バッサには体格から全員分かった。

「ねぇねぇ、他に仲間はいるのー?」
「くっ……」
「ほらー、なにか喋ろうよー。退屈なんだよー」

 ライラックは指でバッサの頬を突いた。
 けれどバッサは口を割らない。
 ライラックに対し、極限までの抵抗を見せる。
 せめてメレオンだけでも、少しでも勝機を見出すには、時間を稼ぐしかない。

「もう、つまんないのー」

 ライラックは退屈していた。
 大きな欠伸を掻いてしまい、懐に隙が生まれる。
 今なら反撃できるかもしれない。そう思い体を起こそうとするも、ライラックは糸を引っ張ってバッサを地面に叩き付けた。

「(ドンッ!)ううっ……」
「ダメだよー」

 反撃しようとしたが、バッサの抵抗は空しかった。
 むしろライラックの視線を釘付けにしてしまう。
 このままだと何もできない。冗談じゃないと、バッサはライラックに怒りの視線を向ける。

「そうだー。ちょっと試したいことがあるんだよねー」

 ライラックはポンと手を鳴らした。
 身動きの一つも取れないバッサ達に抵抗する術はない。
 少しでも注意を削ごうと、モゴモゴ口を動かした。

「にゅぁにしゅるきよ!」

 バッサはそれでも強がった。
 少しでも抵抗の意思を見せることが、精一杯の行動になる。

「実はさー、最近飛ぶ練習をしてるんだよねー」
「はむぅ?」
「でさー、電気を使ってるんだよねー。こんな風に」

 けれどライラックには通用しない。
 バッサの強がりな抵抗を完全に見透かすと、笑いながら試した。

「「「むぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」

 縛られた強盗団達は絶叫を上げた。
 しかし糸で絡め取られ、声に出すことさえほとんど許されない。
 唇を糸で封じられ、体の中で悲痛な叫びが上がる。

「にゅぁにゅいしてるのよ!」
「なにしてるのかってー? 決まってるでしょー、“電気”流してるのー」

 バッサはなにが起きているのか分からなかった。
 けれどライラックの指先からは電気が流れている。
 その先には糸が繋がっており、ライラックの口から真実が語られる。

 ライラックは飛びために日々練習している。
 見えない努力という奴で、少しずつだが上手くなっている。
 その方法は電気を使うもの。電気を発生させ、磁場を操るのだ。

 そのためにも電気に慣れる必要があった。
 幸い、ライラックには才能があった。
 そのせいか、多少ではあるが、電気を自在に操れるようになっている。

「あはは、安心して死なないように調整しているからー」

 ライラックは笑っていた。まるで安心できない悪魔の笑みだ。
 バッサは恐怖を感じた。
 次は自分の番なのではと、心臓がけたたましく鳴り出す。

「それじゃあさー」
「ぬぁめて、来ないで!」
「ん? なーにぃ?」

 バッサは恐怖心の余り懇願した。助けて欲しいと願った。
 これまでの罪を全て告白して、騎士団に捕まってもいい。
 こんな最悪な死に方はしたくないと必死に祈る。
 
 しかし不意に見せたライラックの目が怖い。
 完全に殺人鬼の目になっている。
 命はもう無い。そう確信すると同時に、白目になって意識が消えた。

「さーてと、次は―……あれ?」

 何故か誰一人として動かなくなってしまった。
 ライラックは不思議に思う。
 まさか電気流しただけで、動かなくなるなんて無いよね?

「おーい、起きてよー。……まさか死んでないよねー?」

 ライラックは頬をポンポン叩いた。
 けれど誰一人として動かない。
 もしかして死んじゃった? まさかそんな筈ないと、ライラックは思っている。

「うーん、気絶してるのかー。まぁ、いっかー」

 如何やら全員気絶してしまったらしい。
 ライラックは頭を掻き毟った。
 唇を曲げ、仕方が無いと思ってしまうと、黒焦げになった糸を見て笑っていた。
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