1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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チョコレート編

609.チョコレートを貰いました

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「ふぅ。完成ね」

 シルヴィアはケーキの飾り付けを終えた。
 我ながらよくできたと思えるくらいには、見事な飾り付けになった。
 ホイップクリームを満遍なく塗ると、ブッシュ・ド・ノエルが美味しそうに映る。

「シルヴィ、できたのー?」
「ええ、完成したわよ。それでルカ、これをどうするの?」

 ケーキは完成した。
 シルヴィアはルカに訊ねると、ルカは笑みを浮かべる。

「どうするもなにも、みんなで食べるんだよ。チョコレートも冷えて固まった筈だから」

 ルカは淡々と答える。
 これだけ手の込んだケーキを作ったのは時間があったから。
 完成したら後は美味しく食べるだけ。ルカは真っ当なことを言ったつもりだ。

「固まった? そう言えば私達のチョコは何処に行ったのよ!」
「そう言えばそうでしたね。型に流してから……」

 シルヴィアとダリアは思い出した。
 自分達の作り掛けのチョコレートは何処に消えたのか。
 互いに顔を見合わせると、ルカに詰め寄る。

「ルカ、私達のチョコは何処に行ったの?」
「何処って、ちゃんと冷やしてるよ」
「あの、まだ作り掛けだったんですけど」
「そうなの? てっきり完成したと思ったんだけど、悪いことしたかな?」

 チョコレートは型に流していた。
 だから完成済みだとすっかり思い込んでいた。
 けれどダリアはまだ手を加えたかったらしい。
 少しだけ悲しそうな目を浮かべると、ルカは悪いことをしたと悟る。

「ごめんねダリア。ちょっと待ってね」

 ルカは冷やしていたチョコレートを取り出す。
 キッチンに備え付けられた魔道具の中から冷えて固まったチョコレートを取り出す。
 三人分のチョコレートは完全に固まっており、食べられる状態だった。

「やっぱり固まってる」
「おお、完成してるんだー。よかったー」
「よかったじゃないわよ。ダリア、メッセージを書きたかったんでしょ?」
「は、はい」

 ルカとライラックはチョコレートが無事に固まっていることを喜ぶ。
 流石は最新式の魔道具だ。
 冷却温度が高いおかげで、チョコレートが固まるのも早い。

 喜ぶ二人とは対照的で、ダリアは肩を落としてしまう。
 シルヴィアは事情を察すると、ダリアに寄り添う。
 ソッと肩を撫でると、落ち込むダリアを宥めた。

「メッセージ?」

 一体なんのことだろうか?
 ルカはポカンとしてしまうと、にわかが露呈する。
 シルヴィアは膝を落とすと、ルカに耳打ちをした。

「チョコレートの表面にホワイトチョコレートでメッセージを書くのよ。親愛なるとか、いつもありがとうとか、普段伝えられない気持ちを書いて渡す。それもバレンタインの醍醐味なのよ」
「知らなかったよ。そっか、それは悪いことしたね」
「悪いことしたわよ……って、なにしようとしてるの!?」

 ルカはシルヴィアから教えて貰った情報を加味し、自分が悪いと反省した。
 そこでチョコレートに細工を加えようと思う。
 手のひらをかざし、時間を巻き戻してしまおうと考えたのだ。

「あまりやりたくないけど、ちょっとだけチョコレートの時間を戻すよ」
「ちょっと待って、流石にやりすぎよ!」
「でもこれくらいしか私には……ん?」

 手を加えようとするルカをシルヴィアは全力で止める。
 そんな手の込んだ真似をすると、せっかく作ったチョコレートを最初から作り直す羽目になる。
 そう考えるのが自然なことで、悲しんでいるダリア自身も、ルカの服の袖を掴んで止める。

「ごめんね、ダリア。勝手なことしちゃって」
「大丈夫ですよ、ルカさん。代わりになんですけど……」
「代わりに? うおっ!」

 ダリアは特殊な空気を孕んでいた。
 温かい緊張を伴った空気だ。
 ルカはピシッと背筋を伸ばすと、ダリアは突然自分が作ったチョコレートをルカに差し出す。

「あのルカさん、受け取って貰えませんか!」

 突然のことにルカは動揺する。
 瞬きを何度かしてしまうが、ダリアは確実にチョコレートをルカに差し出している。
 何かの気の迷いじゃない。明らかにルカに渡すためにチョコレートを作っていたのだ。

「……ん?」
「普段からルカさんには色々とお世話になっています。ルカさんの騎士として、これからも剣を磨いていきます。ですので、コレは親愛の証です。受け取ってください!」

 ダリアは心の奥底から湧き出る気持ちを吐き出す。
 ルカは真っ向から受け止めると、一瞬理解できなくなる。
 けれどダリアの純粋な気持ちは変わらない。これを無碍にする訳には行かない。

「なるほど。そういうことね」

 ルカは何か勘違いをしていた。
 けれど察しが良いのか悪いのか、差し出されたチョコレートを裸のまま受け取る。

「ありがとう、ダリア」
「ルカさん……はい」
「(パキッ)あっ、美味しい」

 ルカは早速チョコレートを齧った。
 口の中一杯に甘みが溶け出す。
 もちろんチョコレート本来の苦みも渋く残っているのだが、加えた牛乳の量が多かったのか、甘みの方が強い気がする。

「ル、ルカさん?」
「ありがとう、ダリア。でも騎士としては必要無いかな」
「ええっ!?」

 ルカは案の定ダリアを振った。
 別にダリアに騎士になって欲しい訳じゃない。
 むしろもっとフラットな関係でいたいのだ。

「だからさ、ダリアも食べて」

 ルカは自分が作ったケーキをダリアに差し出す。
 一口サイズにいつの間にか切り分けていた。
 結局はロールケーキなので、包丁を入れると手のひらサイズになる。

「いいんですか、ルカさん?」
「もちろん。シルヴィもライも」
「私達も!? この状況で!」

 一体どの状況を指しているのだろうか?
 ルカはピンと来ていないのか、首を捻ってしまう。

「どの状況のことを言ってるのか分からないけど、みんなで食べようよ。友チョコでしょ?」

 ルカなりに答えと言うより、見解に近いものを出した。
 今回のチョコレート作りは、所謂友チョコ作りだ。
 友達同士で贈り合うチョコレート。学生らしいイベントに、ルカは少しだけ嬉しくなる。

「と、友チョコ?」
「友達同士で贈り合うチョコレートのこと。コレはケーキだけど、せっかくなんだから、みんなで食べようよ」

 如何やら違うらしい雰囲気が漂うが、ルカは気にしない。
 気にも留める気が無く、それぞれが作ったものを贈り合う。
 否、食べ合うことにした。

「はっ。ルカは相変らず鈍いわね」
「ん?」
「でもいいわ。貰うわね」
「わーい。ケーキだー」

 ルカは何故かシルヴィアに罵倒される。
 もちろんそんな謂れは何処にも無いのだが、それ以上話は広がらない。
 差し出した皿の上に乗ったロールケーキを全員分行き渡らせると、頬張る準備をする。
 まるで子供の様に手を汚した。

「ううっ、なんだか恥ずかしいです」
「恥ずかしがる必要は無いよ。それじゃあみんなで」
「「「いただきます」」」

 ルカ達はそれぞれが作ったお菓子を渡し合った。
 ほとんどチョコレートだけど、それぞれ味が全然違う。
 口の中一杯に一生分の甘みが膨らみ出すと、ルカ達のチョコレート作りは、友達同士の友情として幕を下ろした。
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