1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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チョコレート編

610.強盗団のその後

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「ねぇグリム、あの後強盗団がどうなったか、知ってる?」

 教室でシルヴィアがそんな会話を始めた。
 ボーッとしていたルカの意識を引き戻す。
 そう言えば気にはしていなかったが、あれから数日が経った。なにか変かがあったのだろう。

「知らないけど、そう言えばどうなったの?」
「それがね、すぐに自供したみたい。今は裁判の準備中らしいわ」
「……ん?」

 ルカはポカンとしてしまった。
 口を噤み、シルヴィアの話に疑問を抱く。

「本当、なんなのかしらね?」
「あまりにも急展開すぎない?」
「えっ、そう? 普通だと思うけど」
「シルヴィがおかしくなり始めた!?」

 この一年間であり得ないような出来事に遭遇しすぎた。
 そのせいか、シルヴィアの感性がおかしな方向に傾いている。
 天秤が片方に寄ってしまうと、シルヴィアは頬杖を付いて溜息を零した。

「ちなみに自供したって言ってたけど、あっさり罪は認めたんだね」
「そうなの。本当、危うかったわ」
「危うかった?」

 ルカは実際問題、強盗団の存在は感知していた。
 けれど今回、直接的に事の顛末を見届けていない。
 そのせいか如何なったのかよく分かっていない。
 聞くところによると、ライラックの無茶苦茶な活躍により、強盗団は呆気なく鎮圧されたらしい。

「ライがなにかしたんだね?」
「そうなのよ。ライがね」

 ルカはすぐさまライラックが原因だと察する。
 シルヴィアもライラックにチラリ視線を飛ばす。
 疎ましそうに睨み付けていた。

「あはは、それでさー。って、シルヴィどうしたの?」
「なんでもないわよ」

 ライラックはブルースターと楽しく話し込んでいた。
 この時間寝ていないのが普通じゃない。
 変にテンションがハイになっていて気味が悪かった。

「ちなみになにしたの?」
「ライが糸でグルグル巻きにした強盗団に電撃を流して心臓を止めたのよ」
「……死なない?」
「死ぬわよ。だから焦ったんじゃない!」

 シルヴィアは拳を握った。
 眉間に怒りマークの皺を寄せた。
 不満が爆発してしまい、声を張り上げる。
 ルカに解って欲しかったのか、同情して欲しかったのか、そんなところだろうか?

「うーん、でも自供したってことはなんとかなったんだよね?」
「ええ、ライは考えてたみたい」
「考えてたって?」
「すぐに心臓を動かせるようにしてたみたい。全く、あの子はそういう所はちゃんとしているんだから」

 ライラックの“凄さ”が露呈した。
 実際、ライラックが今までも凄まじい難題を可能にしてきた。
 とは言え、糸と電気に対してライラックはめっぽう強い。才能のようなものがある。

「でも捕まったみたいでよかったね」
「そうね。おかげで街が平和になったわ」

 果たして本当に平和になったのだろうか?
 今までマギアラでは散々な目に度々遭って来た。
 古くから魔法や魔術の発展に貢献して来たこの街では様々なことは起こる。
 そのせいか、一つや二つ事件を解決したくらいでは、平和にはならないとルカは悟った。

(まあいっか)

 とは言え口にはしない。決してしない。
 一時とはいえ、平和が舞い込んだんだ。
 それを噛み締めることが大事だと、ルカは千年の経験から理解する。

「なにより、シルヴィ達に騎士団からの疑いの目が向かなかったのが、なによりも救いだね」
「それはリューラがなんとかしてくれたわ」
「リューラが?」

 ルカ的に一番の成果は強盗団を捕まえたことじゃない。
 捕まえたことにより、騎士団の疑いの目がシルヴィアに向かなかったこと。
 それが何よりの成果で、その貢献人にはリューラの影があるらしい。

「うちのメイド長はその辺裏工作が上手いのよ。全く、手が込んでるわ」
「これはいいのかな?」
「よくは無いけど、今回は助かったって思ってる。本当、リューラのおかげよ」

 リューラの実力は極めて高い。
 けれどリューラ自身、前職が何だったのか、それが問題だ。
 何やら裏があるのは確定で、ルカが知らなくてもいい話だ。

「よかったね。それにしてもリューラは一体……」
「それに聞いて、ルカ! あの後ね、リューラの態度が変わったのよ」
「態度が? なに、マズい方向に働いた?」
「なんでそうなるのよ。むしろ逆、私のことを応援してくれたのよ」

 シルヴィアは嬉しそうに答えた。
 リューラはルカに釘を刺すほど、シルヴィアのことを大事に想っている。
 そのせいか、危険に巻き込んで欲しくなかった。巻き込まれて欲しくなかった。それがリューラの考えだったのだが、今回強盗団にかかわったことで、その考え方も少しだけ変化したらしい。

「応援してくれたんだね。よかったじゃないか」
「ええ。今までは私を危険に巻き込まないように配慮していたわ。今もそれは変わらないけれど、少しだけ緩くなったみたい」
「緩くなったって、具体的には?」
「よく分からないけど、リューラが付き合ってくれるようになったの。おかげで毎日体が痛いわ」

 シルヴィアは体のあちこちを押さえていた。
 痛そうで辛そう。毎日リューラにしごかれている。
 痣とか痕は残っていないが、筋肉が悲鳴を上げているらしい。

「本当、私の体が先に潰れるかもしれないわ」
「流石にそこまでのことはしないと思うけど?」
「そうね。手を抜いては貰ってるから……リューラって、どれだけ強いのよ」
「さぁね。少なくとも、シルヴィのことを大切に想っている証拠だよ。嫌いにはならないであげて欲しいな」
「はっ、なに言ってるのよ。大切な家族なんだから、嫌いになる訳ないでしょ!」

 リューラは強い。シルヴィアもその事実を痛感した。
 そのせいかリューラの強さの秘密を知りたい。
 あくまでも断片的な意識を持つも、今のままでは辿り着けそうにない。

「いい言葉だね」
「な、なに? ちょっと気持ち悪いわよ」
「あはは、そんなこと言わないでよ。でもよかったね、シルヴィもリューラも」
「ええ、よかったわ。これからが大変だけどね」

 リューラはそう言うと、背中を押さえた。
 背骨が痛いのか、険しい表情を浮かべる。
 全身がボロボロになっても頑張るシルヴィアに密かな応援エールを送ると、ルカは笑みを浮かべ、休日を変に楽しんだことを記憶した。
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