1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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波状編

617.生徒会募集の貼り紙

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 ある朝、生徒会長であるナナミはいつもよりも早く学校に登校していた。
 その手には一枚の紙切れ。かと思いきや、一枚ずつの紙が束になっていて分厚い板のように抱え込まれていた。

 その中の一枚だけを取り出すと、目の前のボードに貼る。
 学内の掲示板で、大抵の行事や報告は学内に幾つも設置された掲示板でやり取りをするのだ。

 もちろん生徒会も度々利用する。その頻度は普通の学生のおよそ三倍だ。
 いつもは副会長か他の生徒会役員にお願いしている。
 けれど今日の作業は来年度に関わるらしいので、ナナミはハバトに強く言われて、こうして作業を行っていた。

「これでよし。えっと、後は……こっちかな」

 ナナミは掲示板に貼り紙を貼り付ける。
 性格に反してピチッと丁寧に貼られており、可愛らしいイラストも描かれている。
 肝心の内容はと言うと、そこにはこう書かれていた。


[急募!!!!]
来たれ、生徒会役員!
この度、来年度生徒会役員を募集します。腕に自信のある魔術師の卵達、この学校を変えたいと思う野心ある有望魔術師の皆さん、私達と一緒にこの学校を支えて行きませんか?
 期日は再来週の水曜日。ドシドシ応募、待ってるよ!
※って、私達がサボってたからこんな目に遭ってるんだけど……まあいいよね? 役員って言っても大したことはないから、メンバーに加わってくれるなら大歓迎だよ。副会長のお眼鏡に叶えばだけどさ……あはは。
—生徒会長、ニイジマ・ナナミ(※追伸:みんな~気楽に待ってるよ~……と言うか、誰か入って、お願い!!)



 アルカード魔術学校は今日も平和だった。
 いつも通りと言うべきか、魔術に触れる日常を謳歌する。

 ルカは毎月のように繰り広げられていた騒然とした毎日から解放され清々しい気持ちだった。
 全く以って、千年前のような惨事は懲り懲り。目覚めてからと言うもの、忙しない日々を送っていた。正直に言って、心身共に疲労は残る。
 そう思ってしまうのは無理も無く、故に普段の日常生活が唯一無二であり、有意義に送りたいものだった。

「ふはぁー」

 ルカは大きめの欠伸を掻いた。
 眠たいわけではないのだが、少し疲れの色が見えたのだ。
 何処まで行ってもルカも人間。疲れ知らずな訳はない。

「最近体を酷使しすぎていたかもしれないね。連日忙しかったから……ん?」

 ルカは階段を上っていると不意に足を止めた。
 もちろんこれと言った騒乱がある訳ではない。
 至って普通の階段で、踊り場には鏡と掲示板。
 特に目立ったものは無く、ルカがわざわざ足を止める必要性は皆無だった。

「これは……」

 けれど視線は止まっていた。ある一点を見つめている。
 それは緑色の掲示板だった。深い黒みがかった緑のボードのおかげか、真っ白な紙が良く目立つ。その中でも昨日までは無かった新しい貼り紙が貼りだされていた。
 目を凝らして確認を取ると、如何やら生徒会かららしい。
 内容はなかなか珍しく、生徒会役員の募集だそうだ。

「生徒会役員の募集なんて珍しいね。興味はないけど」

 ルカは真っ向から興味を切り捨てた。
 正直面倒なことになるのは目に見えているので無視していい案件。
 多分生徒会に入れば単位は貰えるのだろう。けれどルカを始め、いつもの面々に限って言えば、そんな必要は無く、卒業に必要な最低単位は貰えている。
 欲しいのはシルヴィアくらいで、ルカとして見れば存外に扱っても構わないのだ。

「それにしてもどうしてこの時期? しかも急募ってことは急ぎってことだよね? 期間も短い。なにかあったのかな?」

 まるで最近になって思い出したみたいな貼りだしだった。
 ルカは生徒会のことを良く知らないが、どんな活動をしているのだろうか?
 ナタリーからの相談事で忙しく各地を回っていたせいで、この一年はろくに学校生活を満喫できなかった。
 その弊害で、本当ならとっくに分かり切っているはずのこともよく分からず、なんやかんやで一年を通していた。ルカは思い返してしまい、額を指で摘まんだ。

「いや、考えすぎだよね。流石にそんな怠慢を働くわけはない」

 勘違いも甚だしかった。ルカは一体どんな目線でこの学校を見ていたのか。
 自分自身で性根を恥じると、首をブンブン振り回した。
 正直、ルカが知らなすぎるだけで、この学校が世界四大魔術学校の一つなのは変わらない事実なのだ。

 それは即ち優秀な魔術師を世の中に多く輩出することになる。
 その中でも生徒会はエリートの集まり。
 頭一つ抜けているとまでは言わないが、それでも学校側からの強い援助があるはず。
 そうなれば自然と優秀な魔術師の集まりになる。それが怠慢を働くとは思いたくなかった。

 とは言え、ルカは気掛かりがあった。
 貼りだされた紙。そこには魔力が込められている。
 人間、いや生物には大抵魔力が通っている。ルカのように抑えこめば、極端に放出することはなく、今となってはほぼ〇の状態で生活できる。

 けれどこの貼り紙には強い魔力を感じられた。
 それに加えてとても禍々しい闇を感じる。
 まるで闇の魔法使いのようだと思いつつ、それでいてまだ染まり切ってはいない。
 感情を押し殺しているようで、残った魔力の断片を読み解くだけで、優秀を通り越して最優だと直感した。

「一体誰がこの貼り紙を……もしかして、生徒会長の、えっと、ニイジマ・ナナミ……って確か」

 ルカはその名前に見覚えは当然あるとして、聞き覚えもあった。
 確かあれは魔術大運動会の時だった。
 ほんの少ししか顔も合わせず、ろくに話すこともない間柄。
 だけど深く心の何処かに闇を抱いていたので、自然と思い起こせた。
 そんな時だった。ルカは記憶を付加ぼっていると、突然声がした。

「後輩ちゃん、呼んだ?」

 背後から声を掛けられた。ルカは気が付いていたのだが、まさか直接本人に会えるとは思ってもみなかった。やっぱり言霊はあるようで、ルカは踵を返す。
 体を軸から捻ると、階段の下に少女が一人上がって来ていた。
 その顔を見るとやはりハッとなる。如何やら予想は当たっていたらしく、少女は髪を掻き揚げた。
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