1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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波状編

634.本来の決闘

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「ヴァル、ヴァルバルト先輩、どうしてここに?」
「どうしてって言われてもね」
「もう帰ったんじゃないんですか?」

 何故こんな時間までヴァルバルトが校内に残っているのか。
 もしかすると、卒業生として最後の日を噛み締めているのかもしれない。
 それなら邪魔をするのは悪いと思い、ナナミはペコリと頭を下げた。

「ヴァルバルト先輩、学生生活最後の日をゆっくり過ごしてください。それでは」
「待ってくれるかな?」

 この場をそそくさと立ち去ろうとする。
 しかしヴァルバルトはナナミの腕を掴んだ。
 立ち去らせないように引き止めると、ナナミはクルンと振り返る。

「先輩?」
「ふぅ。俺は君を待っていたんだ、ナナミ君」
「私をですか? えっ、もしかして告白かなにかですか。そのごめんなさい。私は恋愛には興味が無くて、その……およ?」

 ナナミは冗談半分で答えた。
 もちろん、恋愛案件ならNOサンキュー。
 まるで興味が無いので絶対に受けないが、如何にもそんな軟な話じゃなくなった。

「なんですか、その目? 私、なにかしましたか?」

 ヴァルバルトの目が怖い。本気の目をしている。
 眼圧がナナミに振り掛かると、ゴクリと喉を鳴らす。
 息を飲んでしまうと、ヴァルバルトは答えた。

「いいや、君はなにもしていないよ。まずは謝辞を贈らせて貰うよ、ブリッツと戦ってくれてありがとう」

 いきなり感謝されてしまった。
 確かに本来はヴァルバルトが戦う予定だった。
 それを突然ブリッツに変えるなら、段取りもあったものでは無い。
 それさえ了承してくれたナナミに対して、ヴァルバルトは感謝以外の何物でも無い。

「えっ、ああ、代表ですから」
「良い決闘だったよ。ブリッツが強いことは知っていたけれど、あれだけの本気を見せてくれるなんて思わなかった」
「ですよね。ブリッツ先輩、強いですよね!」

 ブリッツはとてつもない魔術師になった。
 アレだけ雷属性の魔術に適しているなんてそう無い。
 何せ上級の魔力属性だ。戦ってみたナナミが言うに、本当に強者であったと目をキラキラさせて答える。

「でもそれを引き出すことができたナナミ君、君の実力の高さが窺えるよ」
「そんな、たまたまですよ。えへへ」
「たまたまね。偶然にしてでき過ぎていると思うけどね?」
「あはは、冗談が上手いですね、ヴァルバルト先輩」

 ヴァルバルトはナナミの実力を疑っていた。
 ブリッツを本気にさせたのはナナミの実力があってのこと。
 しかしナナミはそんなことは無いと、ただの偶然だと断固として譲らない。
 そのせいか、ヴァルバルトはナナミのことを嗜めた。

「冗談じゃないよ、ナナミ君」
「ヴァルバルト先輩……私のことを、買い被り過ぎですよ?」

 ナナミの目の色が変わった。
 ヴァルバルトが何を考えているのかは分からない。
 少なくとも高く買っているのは分かるが、それだけの価値はナナミには無いと自覚する。

「俺は買い被ってなんかいないよ。事実を言っているだけ」
「事実じゃないですよ」
「事実だよ。だから俺は今ここにいる。君と本気で戦うために」

 ・・・はい?
 ナナミはポカンとしてしまう。
 今、ヴァルバルトが提示した言葉。一回復唱してみよう。

「た、戦うってどういうことですか?」

 パサッ……白い手袋が放り投げられた。
 ナナミの目の前に落ちると、ナナミは視線をヴァルバルトと手袋に交互に向けた。
 これはまさかのアレだ。げんなりとした顔をしてしまいそうになるが、ここは踏み止まる。

「やっぱり勘違いしているんですね。私はヴァルバルト先輩の思うよな生徒じゃないですよ」
「そんなことは無いよ。生徒会会長である立場、充分に利用して誇るといい」
「私はいいですよ、そんなの~。それに、私なんかがヴァルバルト先輩に……!?」

 ナナミは何処までも決闘を拒否する。
 自分なんかでは届きもしない。そんな無益な争いに興じない。
 賢明な判断だったが、ヴァルバルトは不意打ちを繰り出す。

「危ないですよ、ヴァルバルト先輩」
「今のを躱すとなると、相当な腕と見受けられるよ」
「あはは、まぐれですよ。たまたまです。偶然って奴です」
「偶然を掴む力は運命力だよ。君にはそれがある。俺はそんな君と戦いたい、だからここにいる」

 空気が切り裂かれた。
 一体何が起きたのか、ヴァルバルトの腰に携えられた剣が抜かれた様子は無い。
 恐らくは魔術。けれどここまで正確に狙って来るとは思わなかった。

 確実にわざとやっていた。
 何とか躱したものの、冷汗ものだ。
 けれどそれが見たかったのか、ナナミがいくら包み隠そうとしても、ヴァルバルトは逃がしてくれない。

「ヴァルバルト先輩……」

 これはもはや言い逃れはできない。
 適当にやり過ごすことも叶わない。
 それならばいっそのこと。ナナミは面倒に思う。

「はぁ。分かりました、ヴァルバルト先輩」

 溜息を付いたナナミ。
 言っても聞いてくれそうにない。
 仕方が無いので、廊下に落ちた手袋を拾う。

「その手袋を取ったと言うことは……」
「はい。最初から本気で、殺す気で行きますね」

 ナナミの目が変わった。
 本気の殺意の目を剥き出しにすると、ヴァルバルトも委縮しそうになる。
 恐怖が目の前に現れると、言葉を選んだ。

「怖いね、その目は。初めて見る、いやずっと見えていたのかもしれないね」
「無駄口ですか? それなら帰って……」
「いや、これ以上の無駄口は要らないよ。さぁやろうか、本当の代表決闘を」

 ナナミとヴァルバルトは中庭に出た。
 他に生徒は誰も居ない。ましてや簡易的だが結界は張っている。
 多少校舎に傷が付いたとしても修復は可能。
 その余裕があってこそか、対面した二人は礼をした。

「ヴァルバルト・B・ブレイザー」
「ニイジマ・ナナミ」

 本当の代表決闘が今始まる。
 学年主席同士の戦いだ。
 タダでは済まないと判ってはいるが、そんなものは関係ない。
 お互いの号令が神へと届けられる。

「「神聖なる魔術の祖よ、我らの決闘を見定めよ!」」
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