1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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幻島編

648.久々の実家

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 ルカは木々を飛び越え先に進んだ。
 目指す実家まではもう少し。
 マフードベアンを薙ぎ倒してからは魔獣の姿を見かけることもなく、険しい歩みを続けていた。

「マダタドリツカナイノカ?」
「もう少しだよ」

 バルトラから急かされてしまった。
 けれどルカは容易くあしらうと、顔を覗かせる。
 ここまで鬱蒼としていた森だったが、突然開けたのだ。

「見えた」

 ルカはようやく森を抜けた。
 それから開けた場所に立つと、陽の光が眩しい。
 露出した地面を温かく照らし、柔らかい緑を仄かに見せる。

「クウキガカワッタナ」
「うん。この辺りには結界が施されているからね」

 ルカが足を踏み入れた場所は結界が施されていた。
 ただでさえ危険な幻島だ。
 自宅の周りには結界を施し、魔獣の侵入を妨げている。
 その証拠に周囲には結界が施された跡があり、魔法の形跡が残されていた。

「地面を見てよ、バルトラ。私が施した古い結界の名残が残ってるよ」
「タシカニナ。コレダケノイリョクトセイド、イマデハカンガエラレナイ」
「それはどうも。それにしても、魔獣が立ち入った形跡はぜろか」

 結界が張ってあるおかげか、魔獣が立ち入った形跡はない。
 下手に地形が変化し、住めない環境になっていないのはありがたい。
 そう思うのが普通なのだろうが、ルカは少しだけ残念に思う。

「正直、期待外れだよ」

 ルカはポツリと吐露してしまった。
 魔獣の一匹や二匹、この一年間で結界を突き破ってくれていると思った。
 けれど実際は魔獣が近付いた形跡すらない。

 もちろんな話だが、正直突破されるような軟な結界は張っていない。
 だからだろうか。期待なんてするだけ無駄だった。
 バルトラも同意見なのか、溜息を付かれてしまうが、ルカは気にしないことにする。

「なんて言えればいいんだけどね」

 ルカは自分の言葉を否定した。
 正直な話、そこまで考えてはいない。
 今はただ懐かしさに浸ると、頭上を何かが飛んだ。

 バサバサバサバサ!

「カァーカァー」
「カラスカ?」
「ただのカラスじゃないよ」

 黒い羽根が落ちて来た。
 ルカはふと立ち止まると、頭上の木の枝に鳥が止まっている。
 明らかにカラスなのだが、それにしては様子がおかしい。

 何を隠そう木の枝に止まっているカラスには脚が三本もある。
 おまけにそのうちの一本には小さいが足輪がしてある。
 昔、ルカが貰ったカラスであり、そのまま放し飼いしていた。

「アレはヤタガラスだよ。おーい、八咫」
「八咫?」
「そう。ヤタガラスの八咫」

 ルカはヤタガラスに声を掛けた。
 すると赤い瞳がルカのことを見つめる。
 首を傾げているのか、それとも思い出そうとしているのか、ジッと見つめていた。

「なんだか帰って来たって感じが一層強くなったよ」
「フン、ワケガワカラナイナ」

 ルカは腕を差し出した。
 すると木の枝に止まっていたヤタガラスがルカの腕に止まる。
 流石にルカの顔と魔力を忘れることはできないらしく、腕を枝代わりに止まって顔を摺り寄せる。

「カァー」
「普通に喋ってくれていいんだよ?」
「カァー……ワガアルジ、ヒサシイナ」
「うん。久しぶり、元気にしてた?」
「ムロンダ。ココニハエサガホウフニアルカラナ」

 ルカはヤタガラスに平然と話し掛けた。
 するとヤタガラスの八咫もルカに許しを貰い、普通に人間の言葉を発する。
 バルトラと同じで、人間の言葉を魔素を介して発することができるよう、脳と発声器官が発達している証拠だ。

「八咫、私が留守にしていた間、なにか変わったことはあった?」
「トウゼンダアルジ、ヘンカノナイセカイナドソンザイシナイ。タトエコノシマデアッタトシテモ、セカイノレイガイデハナイ。アクマデモレイガイハ、アルジトコノシマヲナイホウシタセカイだけだ」

 八咫はルカの質問に対して、まごうこと無き事実を並べる。
 それを聞いてバルトラはポカンとした。
 ルカは一方で安心すると、ホッと胸を撫でる。

「そっか。変わりないんだね、よかったよ」
「ヨカッタノカ?」
「一応は安心しただけだよ。それよりバルトラ、この子は八咫、仲良くしてね」

 ルカはバルトラに八咫を紹介する。
 仲良くするように促しかけたが、バルトラは威圧的だ。
 同じように八咫も警戒するが、ルカに言われて渋々礼儀を守った。

「アナタハ、アルジノジュウシャカ?」
「オレガジュウシャダト?」
「アルジニツカエルモノトシテ、トモニアルジヲササエヨウデハナイカ」
「フン、ソノヒツヨウハナイダロウ」
「ムロンダ」

 二匹とも大概だった。
 ルカのことを分かっているようで完全に強さに心酔している。
 そんな二匹に手を焼きつつ、ルカはバルトラに声を掛けた。

「バルトラ見て、あれが私の家だよ」
「……マギアラトカワラナイナ」
「あはは。そうだね。まぁ、だから選んだんだけど……」

 住む場所が変われば生き方も変わる。
 ルカは合わせることもできるのだが、幻島でもマギアラでも同じような家を選んだ。
 自分が住み慣れた過ごしやすい空間を求めること、別に悪い話じゃない。

「ふぅ……《アンロック》」

 ルカは家の前まで立った。
 鍵は用意していないが、ドアノブに触れると、組み込んだ魔法が作動。
 鍵穴のマークが青白く出現するが、鍵が締まったままになっていた。

 ルカは手のひらをかざした。
 その状態で魔法を唱えると、ルカの魔力と照合。
 合致したのか、閉っていた鍵がガチャリと開いた。

「マギアラデハツカワナカッタシヨウダナ」
「マギアラは比較的安全だからね。さてと、入ろうか」

 ルカは扉を開けようとする。
 ドアノブを引き、薄暗い自宅に足を踏み入れようとする。
 そんな爪先を踏み止まらせると、ルカは立ち尽くした。

「おっと、その前に」
「ナンダ?」
「ただいま」

 ルカは家に入る前に忘れないよう声を掛ける。
 今は誰も住んでいない、ルカだけの自宅。
 寂しいほどに静かな実家に帰って来ると、ルカは静かに家の中に入った。
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