1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう

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幻島編

649.変わらない魔導書

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「カァーカァー。アイモカワラズオモシロクナイヘヤダナ、アルジ」
「そんなこと言わないでよ」

 八咫はルカにそう言った。
 表情を歪め、事実とばかりにルカは受け止める。
 それだけルカの実家は面白くはない。あくまでも普通の家だった。

「ソレニシテハマリョクガコイナ」
「当然だよ。なんたって、当時のままだからね」

 ルカの実家は千年前と変わっていない。
 当時の外観、当時の内装をそのままに維持している。
 それでも千年前から比べ物にならない程、ルカの周りは恵まれていた。
 おかげか、千年前の建物とはいえ、今とさほど大差ない。

「センネンマエカライマノアイダ、シンポシナカッタトイウコトカ?」
「そんなことはないよ。ただ、私の周りが特殊だっただけ。恵まれていたんだよ」

 こう見えてルカは千年前から名前が知れている。
 なんたって、三魔女の一人だ。
 それだけ歴史に大きくかかわっているのだから、身の回りにも変化は大きい。

「ルカ、オマエハココデナニヲシテイタンダ?」
「研究かな」
「研究?」
「うん。魔導書を書いたり、卸したり。それが私の収入源だったよ」

 ルカは家の中に入ると、玄関で靴を脱いだ。
 物珍しいことをするが、西ではまずあり得ない。
 土足からスリッパに履き替えると、ルカはリビングの灯りを点けた。

「《フラッシュライト》」

 ルカは手のひらをかざした。
 ほんの少し魔力を使うと、部屋の中が明るくなる。
 丸い球体が天井付近に辿り着くと、備え付けらえている魔道具に吸収された。

 ピッカーン!

 魔道具に光が吸収される。
 すると傘の部分に光が反射し、部屋の中を明るく照らす。
 温度調整も完璧で、仄かに温かい。暖炉を点けなくても、この時期でも耐えられそうだ。

「温かい」
「コノシマハソレホドサムクハナイダロウ」
「確かにね。でも寒いよりも温かい方が人間は元気になるんだよ」

 あくまでもルカの持論だった。
 決して学術的な根拠がある訳ではない。
 それでもこの一年、様々な所に向かったが、寒い所が比較的多かった。
 そのせいか多少の寒気には体が慣れてしまっているおかげで、この程度の温もりでも充分暖かく感じられる。

「それはさておき、私の成果を見せようか?」
「セイカダト?」
「そうだよ。八咫、私の書いた本を持って来てくれるかな?」
「オヤスイゴヨウダ。カァー!」

 ルカは八咫にお願いをした。
 本を取りに言って貰うと、器用にルカの腕から飛び立つ。
 空気抵抗も一切無く、部屋の奥の廊下を渡ると、ガシッ! と軋む音がした。

 それからほどなくしてか、八咫は一冊の本を持って戻って来た。
 起用に三本の脚を使っている。
 爪でガッシリとホールドすると、傷付けないように配慮してくれていた。

「コレデイイカ、アルジ」
「うん、ご苦労様。おっ! これは懐かしいね」

 ルカの手の中には丁寧に装丁が施された魔導書。
 直に感じ取れるのは凄まじい魔力。
 ルカの書き下ろした原本のせいか、バルトラも八咫も感化される。

「コレハスサマジイナ」
「サスガハワガアルジダ」
「はいはい、煽てないの。別にこれは大した力を持っていない魔導書だから」

 ルカは煽てられて少し笑ってしまう。
 嬉しいのかはにかんでいるのか、どちらかと言えば後者だろうか?
 少なくとも笑ってしまうくらいには、手にしている魔導書に印象が無い。
 そのせいか、適当な発言をしてしまった。

「ウソヲツケ」
「嘘じゃないよ。だって私が覚えてないんだよ?」

 バルトラはすぐさま嘘だと決めつけた。
 ルカの生み出した魔導書が、大した力を持たない訳が無い。

 ルカの実力を知っている者ならば、誰だってルカの書いた魔導書の内容に興味を持つ。
 けれどルカはこの瞬間は否定的だった。
 何を隠そう、ルカは内容を覚えていないのだ。

 ここは弁護を図るが、バルトラは信じてくれない。
 そのせいか、バルトラは魔導書の内容をルカに訊ねる。
 あまりにも大それたことだったが、ルカは思い出せない。

「チナミニナニガカカレテイルンダ?」
「えっと、かなり古いものだからね。なんだったかな?」

 ルカも全てを記憶している訳じゃない。
 珍しく魔導書をパラパラ捲って。
 迸る魔力の圧に、バルトラと八咫は存在が消されそうになる。

「ウウッ、スサマジイマリョクダ」
「イッタイナニガカカレテイルノデスカ?」
「二人共、少し喰らい過ぎだよ。あっ、そうだ思い出した!」

 ルカは苦しむ二匹を見て思い出した。
 この魔導書は開いてはいけないものだ。
 急いでパタンと本を閉じると、バルトラと八咫は息を荒げる。

「ハァハァハァハァ……イマノハ」
「ワガアルジ、コノマドウショハ」
「これは消滅の魔導書だよ。魔力ある者を何人たりとも消滅させてしまう。昔友達と書いたものだったけど、すっかり忘れてたよ」

 ルカは笑ってしまった。
 まさかこんな強力な魔導書をそのままにしていたなんて。
 裸のまま放置していたことに自分のバカさ加減を疑うと、バルトラと八咫は言葉を飲む。

「「……」」
「どうしたの、二匹共?」

 様子のおかしな二匹に声を掛けた。
 するとバルトラは恐ろしくなってしまい、言葉を噛みそうになる。

「ヤハリ、オマエハオカシナヤツダ」
「おかしな奴って、酷い言い分だね」
「ジジツダロウ。ソレニナゼオマエハクラワナインダ」

 ルカはバルトラから散々な扱いを受けた。
 けれど事実は事実。言い返すルカの言葉は響かない。
 むしろバルトラは魔導書の影響を一切受け付けないルカに違和感を覚える。

「私が影響を受けない理由ってこと? そんなの決まってるよ。魔導書を書いた本人が、魔導書の影響を受ける訳ないでしょ?」
「……ヤハリオマエハオカシナヤツダ」
「うーん、普通だと思うんだけどね」

 ルカの思う常識は、一般の魔術師には通じない。
 それは三魔女が何に対しても規格外のせいだ。
 ルカはその事実に疎く、首を捻ってしまうと、あまりにも危険な魔導書を小脇に抱え込み、部屋のリビングでくつろぐことにした。あまりにも無造作な扱いにバルトラと八咫はヒヤヒヤした。
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