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第3部
第8章:休息ー001ー
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見慣れた光景だった。
夕焼けを背に群れ為すはヒトの形に近い黒い人影。中にはツノ、もしくは羽根を生やしているモノもある。
他所では見られない、逢魔街の逢魔ヶ刻だけに発生する黒き怪物だ。
ここに住み生きていこうとするならば、知って置かなければならない事象であった。
今夕もまたあちこちに出現していれば、駆除の依頼に駆けずり回る。
「そういえば、あいつ。これ、操っていたよな」
能力糸を放ちながら夬斗は、ふと思い出す。
一ヶ月前だった。
円眞から閻魔になったという人物は、黒き怪物を配下のごとく従えていた。
夬斗は差し向けられた当人であるから、見間違いではない。
だが誰にも話していない。
夬斗自身、自信がなくなる。あれは夢だったかもしれない、などと思うこともある。
共にその場にあった二人がいれば、また全然違っただろうが……。
「どうしたんっすか、社長」
モヒカンが眼前を横切れば、夬斗は我に還った。
「悪いな、藤平。危ないところ、助けてもらったみたいで」
「いえ、ぜんぜん危ないように見えなかったすけど、なんだか社長。心あらず、てな感じだったもんすから」
無駄のない軌道を描く槍の切れ味は能力によって強化されている。通常なら二、三体のところを藤平は十体単位で貫き通す。いかに黒き怪物が多数発生しようとも、能力糸の夬斗と二人だけで処理は可能だ。
ただ今日は少しばかり時間がかかりそうである。
「黛莉がいないから、大変だよ、まったく」
両手に重火器を抱える『逢魔街の最凶』の妹がいないせいで、毎日のように現場へ出る羽目となった兄はごちる。仕事の面だけでなく、日常生活においても喪失感を覚えるこの頃であれば、意志に関係なく声が洩れるようだ。
だが言っていた。帰ってくる、と。
現在は妹と共に行った紅い眼のあいつの言葉を信じるだけだ。
「そうだな、俺は親友だった」
気を取り直して夬斗は再び自分の能力を駆使する。
負けはしないが、数は多い。かなり手間取りそうだ。
「ずいぶん手こずっているじゃない」
実にタイミングが良かった。
おかげで夬斗は、「黛莉か!」と振り返る。隣りに紅い眼の焔眞がいると確信してであった。
確かに二人いた。だが夬斗のがっかり感は半端ない。
「なんだ、おまえたちかよ」
忘れたいといった風情で、黒き怪物たちの微塵切りへ専念することにした。
当然ながら、おもしろくないといった声が揃って上がった。
「カイにぃー、それはないんじゃない」「カイ兄ちゃん、ひどいよー」
声だけでなく唇を尖らすのも一緒な由梨亜と唯茉里であった。
夬斗にすれば気持ちも表情も渋面といった態である。
この二人の妹たちと対決から始まった、あの一日だった。
円眞は閻魔となり、雪南と再会となった。逢魔七人衆とされるメンバーにも会った。
紅い眼をした親友は焔眞だと名乗って、黛莉を連れてラグナロクの際に出現するらしい光柱へ向かい、消えた。
本当に色々あった一日だ。有りすぎて、たった一日で全て起きた事だと未だ信じられない。
発端となった妹たちがのこのことやって来ても歓待する気分になれない。
帰ってこない焔眞と黛莉について、どう説明していいか、解らない。
なので、人付き合いが上手な社員が連れで良かった。
「あれー、社長の妹さんたちじゃないっすか。どうしたんです?」
槍を振るう気さくな藤平であった。
「なんか人手不足っぽいから、お手伝いに来てやったの」
メイド服を着た由梨亜の偉そうな言い回しだから、夬斗は冷たくだ。
「おまえたちじゃ、万が一があるから、帰れ。これは遊びじゃないんだ」
「でも、カイ兄ちゃん。まだまだいっぱいいるみたいじゃん」
スポーティーな格好をした唯茉里の指摘通り、黒き怪物はかなり多い。屍体が量産される出来事が行われたか。それとも影で操っている者がいるのか。
夬斗は頭を小さく、けれども鋭く横へ振った。
もし閻魔だったら、こそこそ隠れたりしない。堂々と姿を見せて命じてくる。願望かもしれないが『円眞』続きの人物なれば確信めいた想いが過ぎるのである。
さぁ、やるわよ、と由梨亜のやる気に、威勢よく唯茉里の同意する声が挙がった。
兄の言う事を聞かない妹たちには、夬斗の頭は痛い。
「おもちゃの鉄砲に、先が飛び出るだけのちゃちいナイフのおまえたちじゃ、危ないって言っているだろ」
由梨亜と唯茉里が発現する能力を付与すれば危険な武器になることは承知している。しかしながら、戦闘に対する訓練や経験があるわけではない。それらを補うだけの強力な能力とは思えない。
身内だからこそ厳しくなった査定だと夬斗は解っていながら、足手まといの評価を下した。いい加減にしろ、と怒鳴かけたくらいである。
「あれ、社長のところの双子ちゃん、どうしたんっすか?」
藤平が一旦下がっては、和須如兄妹の下へやって来る。
「危ないっすよ、あいつら。思考がないようだから組みやすいっすけど、その代わり手心は期待できないっすからね~」
連れてきた社員もまた妹たちの参戦には反対みたいで、夬斗としては有り難い。
けれども由梨亜と唯茉里は、手を焼かせる妹たちだった。一筋縄ではいかない。
「誰が、双子よ、双子っ」
「そうそう、ちょっとその結論、たんじゅーん」
さすがにイラッとさせる返答に、夬斗は藤平の心証を気にかけつつだ。
まさか、と妹たちの背後へ視線を走らせる。
ぬぼーっと現れた。
おまえ? と夬斗が声を挙げずにはいられない登場人物であった。
夕焼けを背に群れ為すはヒトの形に近い黒い人影。中にはツノ、もしくは羽根を生やしているモノもある。
他所では見られない、逢魔街の逢魔ヶ刻だけに発生する黒き怪物だ。
ここに住み生きていこうとするならば、知って置かなければならない事象であった。
今夕もまたあちこちに出現していれば、駆除の依頼に駆けずり回る。
「そういえば、あいつ。これ、操っていたよな」
能力糸を放ちながら夬斗は、ふと思い出す。
一ヶ月前だった。
円眞から閻魔になったという人物は、黒き怪物を配下のごとく従えていた。
夬斗は差し向けられた当人であるから、見間違いではない。
だが誰にも話していない。
夬斗自身、自信がなくなる。あれは夢だったかもしれない、などと思うこともある。
共にその場にあった二人がいれば、また全然違っただろうが……。
「どうしたんっすか、社長」
モヒカンが眼前を横切れば、夬斗は我に還った。
「悪いな、藤平。危ないところ、助けてもらったみたいで」
「いえ、ぜんぜん危ないように見えなかったすけど、なんだか社長。心あらず、てな感じだったもんすから」
無駄のない軌道を描く槍の切れ味は能力によって強化されている。通常なら二、三体のところを藤平は十体単位で貫き通す。いかに黒き怪物が多数発生しようとも、能力糸の夬斗と二人だけで処理は可能だ。
ただ今日は少しばかり時間がかかりそうである。
「黛莉がいないから、大変だよ、まったく」
両手に重火器を抱える『逢魔街の最凶』の妹がいないせいで、毎日のように現場へ出る羽目となった兄はごちる。仕事の面だけでなく、日常生活においても喪失感を覚えるこの頃であれば、意志に関係なく声が洩れるようだ。
だが言っていた。帰ってくる、と。
現在は妹と共に行った紅い眼のあいつの言葉を信じるだけだ。
「そうだな、俺は親友だった」
気を取り直して夬斗は再び自分の能力を駆使する。
負けはしないが、数は多い。かなり手間取りそうだ。
「ずいぶん手こずっているじゃない」
実にタイミングが良かった。
おかげで夬斗は、「黛莉か!」と振り返る。隣りに紅い眼の焔眞がいると確信してであった。
確かに二人いた。だが夬斗のがっかり感は半端ない。
「なんだ、おまえたちかよ」
忘れたいといった風情で、黒き怪物たちの微塵切りへ専念することにした。
当然ながら、おもしろくないといった声が揃って上がった。
「カイにぃー、それはないんじゃない」「カイ兄ちゃん、ひどいよー」
声だけでなく唇を尖らすのも一緒な由梨亜と唯茉里であった。
夬斗にすれば気持ちも表情も渋面といった態である。
この二人の妹たちと対決から始まった、あの一日だった。
円眞は閻魔となり、雪南と再会となった。逢魔七人衆とされるメンバーにも会った。
紅い眼をした親友は焔眞だと名乗って、黛莉を連れてラグナロクの際に出現するらしい光柱へ向かい、消えた。
本当に色々あった一日だ。有りすぎて、たった一日で全て起きた事だと未だ信じられない。
発端となった妹たちがのこのことやって来ても歓待する気分になれない。
帰ってこない焔眞と黛莉について、どう説明していいか、解らない。
なので、人付き合いが上手な社員が連れで良かった。
「あれー、社長の妹さんたちじゃないっすか。どうしたんです?」
槍を振るう気さくな藤平であった。
「なんか人手不足っぽいから、お手伝いに来てやったの」
メイド服を着た由梨亜の偉そうな言い回しだから、夬斗は冷たくだ。
「おまえたちじゃ、万が一があるから、帰れ。これは遊びじゃないんだ」
「でも、カイ兄ちゃん。まだまだいっぱいいるみたいじゃん」
スポーティーな格好をした唯茉里の指摘通り、黒き怪物はかなり多い。屍体が量産される出来事が行われたか。それとも影で操っている者がいるのか。
夬斗は頭を小さく、けれども鋭く横へ振った。
もし閻魔だったら、こそこそ隠れたりしない。堂々と姿を見せて命じてくる。願望かもしれないが『円眞』続きの人物なれば確信めいた想いが過ぎるのである。
さぁ、やるわよ、と由梨亜のやる気に、威勢よく唯茉里の同意する声が挙がった。
兄の言う事を聞かない妹たちには、夬斗の頭は痛い。
「おもちゃの鉄砲に、先が飛び出るだけのちゃちいナイフのおまえたちじゃ、危ないって言っているだろ」
由梨亜と唯茉里が発現する能力を付与すれば危険な武器になることは承知している。しかしながら、戦闘に対する訓練や経験があるわけではない。それらを補うだけの強力な能力とは思えない。
身内だからこそ厳しくなった査定だと夬斗は解っていながら、足手まといの評価を下した。いい加減にしろ、と怒鳴かけたくらいである。
「あれ、社長のところの双子ちゃん、どうしたんっすか?」
藤平が一旦下がっては、和須如兄妹の下へやって来る。
「危ないっすよ、あいつら。思考がないようだから組みやすいっすけど、その代わり手心は期待できないっすからね~」
連れてきた社員もまた妹たちの参戦には反対みたいで、夬斗としては有り難い。
けれども由梨亜と唯茉里は、手を焼かせる妹たちだった。一筋縄ではいかない。
「誰が、双子よ、双子っ」
「そうそう、ちょっとその結論、たんじゅーん」
さすがにイラッとさせる返答に、夬斗は藤平の心証を気にかけつつだ。
まさか、と妹たちの背後へ視線を走らせる。
ぬぼーっと現れた。
おまえ? と夬斗が声を挙げずにはいられない登場人物であった。
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