160 / 165
第3部
第9章:対抗する者ー004ー
しおりを挟む
血煙が立つ地獄絵図だった。
容赦なく損壊されていく肉体が四方へ撒き散らす。
とても二人分ではすまない量が飛び散っている。
大量の人数を必要としなければ描けない赤く彩られた死の光景だった。
「な、なぜ、なぜだ、お前たち」
シールドを挙げた憬汰汰とする人物だ。被った血によって視界が遮られたせいだろう。
それだけ相手側が圧倒していた。
しかも殺戮の手は止む気配がない。
首を斬り飛ばす日本刀。顔面を粉砕する拳。頭を叩き割る六角棒と八角棒。
廃屋内にある黒き者たちが纏うアンチスキルの装備など関係なしだ。一人も残さずとした意志のこもる攻撃が行われていた。
ついに生存者が憬汰とする人物だけとなったところで、一人が質問に答えた。
「なにって、救助に決まっているじゃない。私たちが前途を期待するエンマという若者をね」
髪の長いビジネススーツで決めた女性が手にした日本刀に付いた血を振り払う。
「あ、彩香さん」
雪南を腕にする閻魔というより円眞の声が、名前を呼ばれた女性に笑顔を浮かばせる。
「あら、えんちゃんなのね。地獄の閻魔のために来たつもりだったけれど、やっぱりクロガネ堂の姿を見せてくれると嬉しくなっちゃう」
ううん、と慌てて喉の調子を整えて「そ、そうだ、余は……」と閻魔は威厳を出そうとしたが、笑いを誘うだけだ。
彩香だけではない。ワイシャツ姿の靖大も、大柄な体格とする庵鯢に鶤霓も相好を崩している。
もし血の海と化していなければ、和やかな空間となっていただろう。
「なにを考えているんだ。お前たちは逢魔七人衆ではなかったのか」
憬汰とする人物の叫びに、彩香が嘲笑で応えた。
「今の行動を見ていて、どうして私たちがあんたたちの味方だと考えられるのよ。でもまぁーね」
一旦の間を取る彩香は、ちらり閻魔を見遣ってからだ。
「逢魔七人衆は続けるつもり。けれどそれはトップの交代がきちんと叶えられたら、という条件ね」
意味を飲み込むまで多少の時間を要した憬汰とする人物だ。彩香が話した意味を了解できれば、形相が変わった。
「なにを考えているんだ。逢魔七人衆は私がいてこそだ、黎銕憬汰が指揮してこそ存在する集団だ」
「それじゃ、訊くけど、逢魔七人衆と銘打って活動する目的は、なに? 言ってごらんなさい」
「逢魔街の支配だ、つまらないことを聞くな」
すっかり言葉が乱暴になった憬汰とする人物だ。だが断言した直後に、動揺も露わに問い質すことになる。
「なにが可笑しい。オマエら、変だぞ」
「変なのは、そっちじゃない。気づいてないの、あんたの喋り方といい、すっかり化けの皮が剥がれているじゃない」
「なにがだ、黎銕憬汰に向かって、オマエら何を言っている!」
そう叫ぶ憬汰とする人物の目は血走っている。
尋常を失いつつある相手に、彩香は大きく肩を竦めて見せた。
靖大も庵鯢に鶤霓といった面々も、何とも言えないといった風情だ。
閻魔もまた敵同様に事態が全く掴めていない。訊きたいとする声に、つい円眞が出た。
「彩香さん、どういうこと?」
彩香は円眞でこられると喜んでしまうようで返す声は機嫌がいい。
「逢魔七人衆が集う表向きの目的は逢魔街の支配ってなっているんだけど、私たちへ語っていた真実は別にあるの。まぁー、それも嘘だったんだけどね」
「そんなわけ、あるものか」
もはや悲鳴に近い憬汰とする人物に、初めて彩香が憐れむ目を送った。
「いいように頭の中や身体を弄られてしまったのよ、あんたは。所詮は何人目かの『黎銕憬汰』にすぎない。認めたくないでしょうけどね」
しばしの静寂から、小さく湧き上がってくる。
嘘だ、嘘だ、嘘だ……。
ぶつぶつ繰り返す、憬汰とされた人物だった。
「諦めなさい、あんたは黎銕家女当主の夫ではないし、況してや円眞の父でもない。本当の自分を知らないまま傀儡として終わるしかないのよ」
淡々と彩香が無情の宣告をした。
ウソだ! まさに絶叫をほとばらせた憬汰とされた人物が手にした大太刀を振りかざした。
降りてきたのは、刀身ではなかった。
頭だった。
彩香が太刀を振って刃に付いた血を飛ばす。
終わったとばかり、腰元の鞘へ日本刀を収めた。
「さあ、片付けといくわよ」
そう言って振り向いた彩香の視線上には、雪南を抱える閻魔がいた。
容赦なく損壊されていく肉体が四方へ撒き散らす。
とても二人分ではすまない量が飛び散っている。
大量の人数を必要としなければ描けない赤く彩られた死の光景だった。
「な、なぜ、なぜだ、お前たち」
シールドを挙げた憬汰汰とする人物だ。被った血によって視界が遮られたせいだろう。
それだけ相手側が圧倒していた。
しかも殺戮の手は止む気配がない。
首を斬り飛ばす日本刀。顔面を粉砕する拳。頭を叩き割る六角棒と八角棒。
廃屋内にある黒き者たちが纏うアンチスキルの装備など関係なしだ。一人も残さずとした意志のこもる攻撃が行われていた。
ついに生存者が憬汰とする人物だけとなったところで、一人が質問に答えた。
「なにって、救助に決まっているじゃない。私たちが前途を期待するエンマという若者をね」
髪の長いビジネススーツで決めた女性が手にした日本刀に付いた血を振り払う。
「あ、彩香さん」
雪南を腕にする閻魔というより円眞の声が、名前を呼ばれた女性に笑顔を浮かばせる。
「あら、えんちゃんなのね。地獄の閻魔のために来たつもりだったけれど、やっぱりクロガネ堂の姿を見せてくれると嬉しくなっちゃう」
ううん、と慌てて喉の調子を整えて「そ、そうだ、余は……」と閻魔は威厳を出そうとしたが、笑いを誘うだけだ。
彩香だけではない。ワイシャツ姿の靖大も、大柄な体格とする庵鯢に鶤霓も相好を崩している。
もし血の海と化していなければ、和やかな空間となっていただろう。
「なにを考えているんだ。お前たちは逢魔七人衆ではなかったのか」
憬汰とする人物の叫びに、彩香が嘲笑で応えた。
「今の行動を見ていて、どうして私たちがあんたたちの味方だと考えられるのよ。でもまぁーね」
一旦の間を取る彩香は、ちらり閻魔を見遣ってからだ。
「逢魔七人衆は続けるつもり。けれどそれはトップの交代がきちんと叶えられたら、という条件ね」
意味を飲み込むまで多少の時間を要した憬汰とする人物だ。彩香が話した意味を了解できれば、形相が変わった。
「なにを考えているんだ。逢魔七人衆は私がいてこそだ、黎銕憬汰が指揮してこそ存在する集団だ」
「それじゃ、訊くけど、逢魔七人衆と銘打って活動する目的は、なに? 言ってごらんなさい」
「逢魔街の支配だ、つまらないことを聞くな」
すっかり言葉が乱暴になった憬汰とする人物だ。だが断言した直後に、動揺も露わに問い質すことになる。
「なにが可笑しい。オマエら、変だぞ」
「変なのは、そっちじゃない。気づいてないの、あんたの喋り方といい、すっかり化けの皮が剥がれているじゃない」
「なにがだ、黎銕憬汰に向かって、オマエら何を言っている!」
そう叫ぶ憬汰とする人物の目は血走っている。
尋常を失いつつある相手に、彩香は大きく肩を竦めて見せた。
靖大も庵鯢に鶤霓といった面々も、何とも言えないといった風情だ。
閻魔もまた敵同様に事態が全く掴めていない。訊きたいとする声に、つい円眞が出た。
「彩香さん、どういうこと?」
彩香は円眞でこられると喜んでしまうようで返す声は機嫌がいい。
「逢魔七人衆が集う表向きの目的は逢魔街の支配ってなっているんだけど、私たちへ語っていた真実は別にあるの。まぁー、それも嘘だったんだけどね」
「そんなわけ、あるものか」
もはや悲鳴に近い憬汰とする人物に、初めて彩香が憐れむ目を送った。
「いいように頭の中や身体を弄られてしまったのよ、あんたは。所詮は何人目かの『黎銕憬汰』にすぎない。認めたくないでしょうけどね」
しばしの静寂から、小さく湧き上がってくる。
嘘だ、嘘だ、嘘だ……。
ぶつぶつ繰り返す、憬汰とされた人物だった。
「諦めなさい、あんたは黎銕家女当主の夫ではないし、況してや円眞の父でもない。本当の自分を知らないまま傀儡として終わるしかないのよ」
淡々と彩香が無情の宣告をした。
ウソだ! まさに絶叫をほとばらせた憬汰とされた人物が手にした大太刀を振りかざした。
降りてきたのは、刀身ではなかった。
頭だった。
彩香が太刀を振って刃に付いた血を飛ばす。
終わったとばかり、腰元の鞘へ日本刀を収めた。
「さあ、片付けといくわよ」
そう言って振り向いた彩香の視線上には、雪南を抱える閻魔がいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜
犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。
この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。
これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる