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第34章
武略縦横
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さくは拍子抜けした。決意を固めたからには威勢よく城攻めを命じて欲しかったからだ。まだ、決意が固まらぬのかと白い目で弥三郎を見た。だが、弥三郎の答えは意外なものだった。
「長浜城なら、力攻めしなくても簡単に落とせる。」
弥三郎はさくに自信を持ってそう断言した。
「はっ・・・・・?・・・それは、どういう事でしょうか。」
さくは困惑した。敵方の最前線基地を簡単に落とせるとは一体、どういう事なのか。言っている意味が分からない。そんなさくの顔色を察し、弥三郎は恐るべき武略の一端を披露する。
「調略で簡単に落ちる筈だ。」
「・・・・・・。調略?一体どの様な調略でしょうか。」
さくと左月は固唾を飲んで、弥三郎の言葉を待った。
「福富右馬丞と云うものを見知っておるか?」
「はっ?福富右馬丞?」
さくの知らない名前であった。左月も怪訝な顔である。
「その者がどうしました?」
「右馬丞は我が家の元・家臣だ。咎めを受けて牢に入れられた。」
それを聞いて、さくも左月も思い出した。
「あっ!思い出しました。たしか大工上手の福富右馬丞殿ですね。」
「そうだ。知っておったか。」
「会った事は御座いませんが、話には聞いていました。牢入り後に行方知れずと伺っておりますが。」
「右馬丞は今、長浜城におる。」
「えっ!本当ですか。」
さくは驚いた。弥三郎の情報網にである。引き籠っていた弥三郎は恐らく右馬丞に会った事は無い筈、咎を受けた事すら知らないのではないかと思われたからだ。
「今は長浜に隠れ住んで、城主の大窪美作守の扶持人になっている。大工の腕を見込まれて、城門から櫓まで幅広く手掛けているそうだ。」
「・・・・・・。よくご存じで。して、その右馬丞が如何しました。
「右馬丞に内側から内応させる。城を知り尽くした男がこちらに付けば、大事にならず、城を落とせる。」
簡単に言い放つ弥三郎に、さくは異を唱えた。
「確かに右馬丞を内応させられれば、城の攻略は容易いかと。しかし、右馬丞は咎を受け、投獄された者に御座います。怨みを抱いた者がそうも容易く、こちらに寝返るとはとても思えませんが・・・・・。」
さくの考えは尤もだった。含むところがあるので敵方に仕えていると見るのが妥当だ。だが、弥三郎の考えは違った。
「確かに含むところはあるだろうが、内応と引き換えに咎を許し、帰参を叶え、領地も与えようと条件を出すのだ。」
さくと左月は顔を見合わす。二人は面白い考えだと思った。大殿は次々と周辺の城を平らげ、武威を示している。誰しも勝ち馬に乗りたいと考えるものだ。過去の遺恨よりも、自らの安寧を考える筈である。
「面白い策に御座います。試す価値は十分にあるかと。」
「そうであろう。力攻めは最後の策。調略で敵方を下せるのであれば、それに越した事は無い。」
「感服仕りました。では、早速、右馬丞に密使を送りましょう。」
「いや、それについては、父上に書状を書いて貰うように言ってくれ。」
「????」
弥三郎は自ら考えた策を、大殿に委ねると言う。折角の功を譲る事になってしまう。
「弥三郎様が調略を成功させれば、大きな功績になります。自ら書状をしたためるべきなのでは・・・・・。」
「私が調略を働きかけても、右馬丞は応じては来ないであろう。」
「・・・・・・。」
さくは全てを察した。この策は武威のある大殿が内応を働きかける事で初めて成功するのだ。何故なら弥三郎は内外に甲斐性無しの馬鹿殿で通っている。その様な者の言う事など誰も信用しないし、乗って来ないのだ。
「父上の元へ行き、この策を話してみてくれ。頼んだぞ。」
弥三郎は後事をさくに託すと、はるの枕元に顔を落とした。
「分かりました。早速、大殿にお話致します。ですが、その前に一つお聞きしとう事が御座います。」
「長浜城なら、力攻めしなくても簡単に落とせる。」
弥三郎はさくに自信を持ってそう断言した。
「はっ・・・・・?・・・それは、どういう事でしょうか。」
さくは困惑した。敵方の最前線基地を簡単に落とせるとは一体、どういう事なのか。言っている意味が分からない。そんなさくの顔色を察し、弥三郎は恐るべき武略の一端を披露する。
「調略で簡単に落ちる筈だ。」
「・・・・・・。調略?一体どの様な調略でしょうか。」
さくと左月は固唾を飲んで、弥三郎の言葉を待った。
「福富右馬丞と云うものを見知っておるか?」
「はっ?福富右馬丞?」
さくの知らない名前であった。左月も怪訝な顔である。
「その者がどうしました?」
「右馬丞は我が家の元・家臣だ。咎めを受けて牢に入れられた。」
それを聞いて、さくも左月も思い出した。
「あっ!思い出しました。たしか大工上手の福富右馬丞殿ですね。」
「そうだ。知っておったか。」
「会った事は御座いませんが、話には聞いていました。牢入り後に行方知れずと伺っておりますが。」
「右馬丞は今、長浜城におる。」
「えっ!本当ですか。」
さくは驚いた。弥三郎の情報網にである。引き籠っていた弥三郎は恐らく右馬丞に会った事は無い筈、咎を受けた事すら知らないのではないかと思われたからだ。
「今は長浜に隠れ住んで、城主の大窪美作守の扶持人になっている。大工の腕を見込まれて、城門から櫓まで幅広く手掛けているそうだ。」
「・・・・・・。よくご存じで。して、その右馬丞が如何しました。
「右馬丞に内側から内応させる。城を知り尽くした男がこちらに付けば、大事にならず、城を落とせる。」
簡単に言い放つ弥三郎に、さくは異を唱えた。
「確かに右馬丞を内応させられれば、城の攻略は容易いかと。しかし、右馬丞は咎を受け、投獄された者に御座います。怨みを抱いた者がそうも容易く、こちらに寝返るとはとても思えませんが・・・・・。」
さくの考えは尤もだった。含むところがあるので敵方に仕えていると見るのが妥当だ。だが、弥三郎の考えは違った。
「確かに含むところはあるだろうが、内応と引き換えに咎を許し、帰参を叶え、領地も与えようと条件を出すのだ。」
さくと左月は顔を見合わす。二人は面白い考えだと思った。大殿は次々と周辺の城を平らげ、武威を示している。誰しも勝ち馬に乗りたいと考えるものだ。過去の遺恨よりも、自らの安寧を考える筈である。
「面白い策に御座います。試す価値は十分にあるかと。」
「そうであろう。力攻めは最後の策。調略で敵方を下せるのであれば、それに越した事は無い。」
「感服仕りました。では、早速、右馬丞に密使を送りましょう。」
「いや、それについては、父上に書状を書いて貰うように言ってくれ。」
「????」
弥三郎は自ら考えた策を、大殿に委ねると言う。折角の功を譲る事になってしまう。
「弥三郎様が調略を成功させれば、大きな功績になります。自ら書状をしたためるべきなのでは・・・・・。」
「私が調略を働きかけても、右馬丞は応じては来ないであろう。」
「・・・・・・。」
さくは全てを察した。この策は武威のある大殿が内応を働きかける事で初めて成功するのだ。何故なら弥三郎は内外に甲斐性無しの馬鹿殿で通っている。その様な者の言う事など誰も信用しないし、乗って来ないのだ。
「父上の元へ行き、この策を話してみてくれ。頼んだぞ。」
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