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第113章
苦渋の選択
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ライターに炙られた手紙に火が付く。メラメラと燃え上がる手紙にひとみは飛び付いた。火の付いた手紙は畳の上に落ちた。
「イヤッ!ヤダ!止めて。」
ひとみは慌てて手紙を手で叩いて消火しようとする。初めは手で叩き、最後は座布団で叩いて何とか火を消し止めた。
「・・・・・。良かった。」
手紙は2割程度が欠損したものの、大まかな部分は無事残った様だった。ひとみは手紙に手を伸ばす。だが、その手を美月は足で踏みつける。
「い、痛い。美月ちゃん、何するの?止めて頂戴。」
「手紙は要らないんじゃなかったですか?勝手に読んだら駄目ですよ。」
「・・・・・。」
美月はひとみの掌をグリグリと踏みにじりながら、手紙を奪い取る。再度、ジッポーに火を点けた。美月は本気だ。本気で手紙を焼き捨てようとしている。
「や、止めて。分かった。約束する。もう、北を糾弾しない。だから、手紙を頂戴・・・・・・・。」
ひとみはがっくりと頭を垂れた。頭では北朝鮮の様な国への圧力を止めてはならない事は分かっていた。だが、Ⅰ4年間音信不通の母が何と言っているのかをどうしても知りたかった。道義よりも家族の情が上回ってしまったのである。ひとみを屈服させた美月は勝ち誇った様にひとみに言い放った。
「良いでしょう。約束ですよ。約束を違える様な事があったら、こちらにも考えがありますので。」
美月は踏んでいた足をひとみの掌からどけると、手紙を投げてよこした。ひとみはゴキブリの様に這って、手紙に飛び付く。涙を流しながら焼けた封筒から手紙を引き出すと、むしゃぶり付くように手紙の文面を目で追った。
「・・・・・・・。」
美月は無言で煎餅を齧りながら、ひとみの様子を窺う。ひとみの表情は段々と困惑の表情に変わっていった。美月は無言だ。
「・・・・・あ、あの、美月ちゃん?」
「なんですか、ひとみさん。お母さんは何と手紙に?」
「・・・・・手紙には元気だと。日本に帰るよりかは、こちらで余生を送りたいから心配しないで。ひとみは将軍様への感謝を忘れずに、静かに日本で暮らしなさいと書いてあるわ。」
「そうですか。なら、きっと、それがお母さんの気持ちなんでしょうね。」
「・・・・・・・嘘よ、こんなの。出鱈目よ。お母さんがこんな事言う訳無いわ。」
「・・・・・何故。そう思うんですか?」
「だってそうでしょ。お母さんだって絶対、あんな所から逃げたいと思ってる筈、こんな事言う訳無いわ!」
「イヤッ!ヤダ!止めて。」
ひとみは慌てて手紙を手で叩いて消火しようとする。初めは手で叩き、最後は座布団で叩いて何とか火を消し止めた。
「・・・・・。良かった。」
手紙は2割程度が欠損したものの、大まかな部分は無事残った様だった。ひとみは手紙に手を伸ばす。だが、その手を美月は足で踏みつける。
「い、痛い。美月ちゃん、何するの?止めて頂戴。」
「手紙は要らないんじゃなかったですか?勝手に読んだら駄目ですよ。」
「・・・・・。」
美月はひとみの掌をグリグリと踏みにじりながら、手紙を奪い取る。再度、ジッポーに火を点けた。美月は本気だ。本気で手紙を焼き捨てようとしている。
「や、止めて。分かった。約束する。もう、北を糾弾しない。だから、手紙を頂戴・・・・・・・。」
ひとみはがっくりと頭を垂れた。頭では北朝鮮の様な国への圧力を止めてはならない事は分かっていた。だが、Ⅰ4年間音信不通の母が何と言っているのかをどうしても知りたかった。道義よりも家族の情が上回ってしまったのである。ひとみを屈服させた美月は勝ち誇った様にひとみに言い放った。
「良いでしょう。約束ですよ。約束を違える様な事があったら、こちらにも考えがありますので。」
美月は踏んでいた足をひとみの掌からどけると、手紙を投げてよこした。ひとみはゴキブリの様に這って、手紙に飛び付く。涙を流しながら焼けた封筒から手紙を引き出すと、むしゃぶり付くように手紙の文面を目で追った。
「・・・・・・・。」
美月は無言で煎餅を齧りながら、ひとみの様子を窺う。ひとみの表情は段々と困惑の表情に変わっていった。美月は無言だ。
「・・・・・あ、あの、美月ちゃん?」
「なんですか、ひとみさん。お母さんは何と手紙に?」
「・・・・・手紙には元気だと。日本に帰るよりかは、こちらで余生を送りたいから心配しないで。ひとみは将軍様への感謝を忘れずに、静かに日本で暮らしなさいと書いてあるわ。」
「そうですか。なら、きっと、それがお母さんの気持ちなんでしょうね。」
「・・・・・・・嘘よ、こんなの。出鱈目よ。お母さんがこんな事言う訳無いわ。」
「・・・・・何故。そう思うんですか?」
「だってそうでしょ。お母さんだって絶対、あんな所から逃げたいと思ってる筈、こんな事言う訳無いわ!」
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