約束の時

igavic

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出会い

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知人に誘われるまま、
とあるクリスマスパーティーに参加した。
今思えばその日が人生のターニングポイントになった気がする。

27歳で嫁をもらった私は僅か3年で離婚。
子供はできなかった。
離婚後の私は特に目的もなく
何となく生きているような日々が続いていた。
今でこそIT関係と言えば聞こえはいいが、
まだ情報処理業と言われる職種だった。
年齢にしてはそこそこの収入を得ていた私は
いわゆる独身貴族に戻っていた。
そして30歳になって初めて
クリスマスパーティーというものに参加することになる。
子供の頃の集まりは除外しての話だが、
まあそれくらい華やかな場所にはまったく
縁がない人生を過ごしてきた人間、
それが私ということになる。

30歳の誕生日に赤いGTOを買い、
週末はアクセル全開の生活を送っていたある日、
レーシングチームをモチーフにした
高価な服が並ぶ地元のブティックに立ち寄った。
パーティーに誘ってくれたのはその店のオーナー夫妻だった。

アイリッシュパブ風のお店を貸し切りにした
パーティーはブティックの常連客で大盛況、
自分の居場所を確保するのに苦労していた時、
彼女は現れた。

オーナー夫婦からは事前に紹介したい人がいると
言われていた私は既に動揺していた。

「初めまして、聖子です。」

その声は自分が知り得る限り聞いたことがないような
甘い心地よい響きだった。

「ど、どうも五十嵐です。」

緊張していた。
その後のことはよく覚えていない。

パーティーで連絡先を交換していた私たちは
その後、何度目かの電話でまた会うことになった。
まだ携帯が普及していない時代だから
連絡はもっぱら固定電話だ。

そして年明け、地元ではなく職場近くの
何度か行ったことがある台湾料理店にした。

バーカウンターで待つ私に

「ごめーん、待たせちゃった」

「だ、大丈夫、大丈夫」 

動揺していた。
まるで付き合いの長い恋人同士のようで、
なんとも心地よい響きがさらに畳みかける。

「何飲む?私はビールかな」

「じゃぁ僕も」

パーティーの時とは少し違う印象で
主導権を握られたまま、

「五十嵐くんは彼女いるの?」

いきなりの右ストレート。

「実は離婚したばかりなんだ」

「私もなの、実はあのオーナー夫婦から
 聞いていたの五十嵐くんの離婚のこと、
 私のほうは成田離婚に近いかな」

驚いていた。離婚のことではなく
こんな素敵な人と結婚しておきながら
簡単に別れてしまう男の気が知れないと
心の声が叫んでいた。

「五十嵐くん正直だね、だと思った
 パーティーで話してみて誠実だなって」

そんな男でないことは
自分が一番よく解っていた。
一人の女を幸せに出来なかったくせに、と。
正直だったのはしばらくは
恋愛も出来ないだろうなと思っていたからに過ぎない。

でも、彼女の言葉は
ひねくれた心をほぐすには充分だった。
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