青を翔ける

青葉

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春、出会いの季節(いい出会いとは言ってない)

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平凡でのんびりとしたスクールライフを夢見る高校生、俺の名前は花咲つぼみ。


目の前に金髪ドリルツインテ女子が仁王立ちしている光景を横目に、黒板に貼られていた座席表を確認して一番後ろの席に腰をおろした。


ここまで座る機会が無かったので、ようやく一息つけそうだ。


まだ顔も名前も知らない人達は、どこか皆よそよそしく周りの様子を伺っている感じだ。なんだか俺もそわそわしてきた。これが新しい環境の緊張というやつか。甘んじて受けよう。


「ちょっとそこのアナタ。わたくしの席でその泥にまみれたスパァイクをお手入れするの、やめてくださるぅ?」


「あーめんごめんご...って、なんだ鶴崎サンかぁ...なら問題ないか。」


「いや問題ありましてよ!入学初日!穏やかな春の日差しに包まれた綺麗な教室に用意されたわたくしの特等席が!なんで他の生徒のスパァイクの泥で汚されなければなりませんの⁉︎」


「硬いこというなってー。これから3年間おんなじチームで頑張っていくんだからさぁ!」


「こんな子が一緒のチーム、しかも同じクラスだなんて...ホンッット最悪ですわ!」


「いやぁ、照れる照れる。」


「なんでそうなるのよ!」


清々しい風に吹かれ、少し緊張も解けてきた俺は周りに話が出来そうな男子がいないか探してみることにした。だが残念ながらまだ登校はしてきていないようだ。


「とにかく!早く片付けなさい、わたくしが座れないでしょ。」


「へーい」


「いや、ちゃんと机も拭きなさいよ!」


.....さぁて、トイレにでも行くかぁ



















いや、なんなんあいつら。どう考えても今日から始まる高校生活の一番最初に見るイベントちゃうやん?


え、なにあの髪型。金髪でドリル?わたくしって..ほんまに実在したんか。しかも高1だろ?どこの令嬢やねん。


で、なんなん。入学式前に教室でスパイク磨いて丁寧にブラッシングする女子とか知らんて!大丈夫か⁉︎ドリルの机、土でめっちゃ汚れてたで?


間違いなく今年のやばいクラス引いたやろぉ...


一体これからどうなってしまうんだ...











冷静に頭を整理して教室に戻ると、クラス内は先程よりもだいぶ活気付いていた。こうなると改めて周囲の席にどんな子が来るか、期待に胸を膨らませ自分の席に着いた。


とりあえずあの金髪ドリルは近くの席ではなさそうだ。あとは...


「お隣失礼しまーす。」


そう言って右隣の席に座った女子は、先程ドリルと仲良くしていたスパイク女子であった。やっぱこうなりますよねぇ。


「これから一年よろしくねぇ~」


なんとも気が抜けるような、ほんわかした雰囲気の子だ。両肩辺りの毛先をゴムで結んだ黒髪ボブ、顔立ちは少しまだ幼く感じるが、斉藤と似たような体格に豊かな胸、これを上位互換と言うのだろうか。斉藤やドリルと比べると正直見た目はストライクゾーンの女子といえるかもしれない。スパイクの件さえ知らなければ。


「わたし、白水渚(しろうずなぎさ)っていいます。まだ女子ばっかりの学校に入学するなんて、君もなかなか思い切ったことしたねぇ。」


なかなかどうして今考えると確かにそうだ。もしかして男の本能が出てしまったか?いや、多分違うと思いたい。


「俺は花咲つぼみ。白水さんもよろしく。」


一旦いろいろなことは忘れて、冷静に流す俺、グッジョブ。


「うん、花咲くんか。よろしくね。あ、さっきはなんかお見苦しいところを見せちゃいましたね。あのドリルみたいな髪の毛の子、ちょっと知り合いなんだぁ。」


お前もドリル呼びなんかい。ほんとに知り合いか?


「それは...野球ってことね。」


「お!せいかーい。中学で何回か対戦したことあるから、ちょっと覚えてたんだよねぇ。ほら、女子の選手ってやっぱ珍しいじゃん?まぁ私達のチームが毎回勝ってたから、そのせいで絡まれてるのかもねぇ。」


「さいですか...」


それはあのドリルの見た目と性格からするとそうだろうなと思うわ。どう見ても負けず嫌いっぽそうだもんな。


「一応、私春休みから少し練習にも参加してたから、あとあのドリルも一緒にね~。
まさかクラスも一緒とは思わなかったよ。」


高校って春休みから練習出ていいんだっけか。その辺はよく分からんが、強豪ともなると新入生も気合入っているのだろう。あれ?斉藤はそんな話してなかったような...


「白水さんは特待生なの?」


純粋に興味を持った質問だった。よく見たらこの余裕、まさか大物なのではなかろうか。俺の感がそう言っている。


「えへへ、じゃあそういう事にしておいてもらおうかな。」


どうやら俺の人を見る目は無いらしい。


「そういう花咲くんこそ、もしかして野球やってたんじゃない?」


「ほえっ⁉︎」


つい変な声が出てしまった。この子一体何者?


「ま..まぁ..中学までは野球やってたよ?よく分かったね。」


「ん~、なんというか、こうオーラってやつ?なんかスポーツやってる人とかって、それぞれ独特な雰囲気みたいなのが滲み出たりする時あるじゃん?なんかそういうのが花咲くんからも一瞬出てたっていうか~。」


「なんかすごい特技だね。俺にはわかんね。



独特のオーラがあったとしても、俺は大したことはないんだろう。実力も大したことないし。


「ふぅん..高校では野球しなくてよかったの?」


「あぁ、高校は平凡なスクールライフを送らせてもらおっかなーって思ってるよ。」


「そう、ならお互い様だねー。私も平凡に過ごしたいよぉ。まぁ野球部入った時点でそれは無いんだろうけど..」


「あはは..頑張ってね。」


「花咲くんも、ね」


そう笑顔で話す白水。しかしその目の奥はどこかこちらを見透かしているような、なんだか気持ち悪い感じがする。あまりこの話に深く突っ込んでいくのはやめておこう。


丁度その時、朝のホームルームを告げる予鈴が流れた。話込んでいた生徒達は皆それぞれの教室や席に戻り、静かな雰囲気が出来上がっていた。この辺りは新入生なので真面目にやっておこうといったところか。


廊下を先生達が歩いていく姿が教室から窓越しにも分かる。最初の担任ってどんな人なんだろう。こういう時間はやっぱワクワクドキドキするよね。




バァン!!




勢いよく空けられた教室のドアの音が大きくこの階に響き渡った。クラス全員が驚きのあまり一同に視線を送る。うるさすぎてまじでびびったわ。



その視線の先には一人の女性



力強く一歩一歩踏み出す姿はなんとも美しい。黒髪の短髪にソフトなウェーブがなびく。背丈もここから分かるくらい、175cmくらいはあるのではないかと思うくらい高く、しかし全体的にはスラっとした、どちらかというとかっこいい女性の印象。そしていかにも元気有り余ってますと言わんばかりの輝く目、笑顔。そして星翔の文字が書かれたジャージ。...ん?入学式でジャージですか?


「げっ...」


となりで白水さんが声をもらす。顔が少し焦っているような...


「...知ってる人?」


「知ってるもなにも...」


その女性は、黒板を目一杯広く使い力強く名前を書き始めた。


「えー今回!このクラスの担任になりました!馬渕香凛、あ、漢字はこうね。まぶちかりんっていいます!みんなよろしくね!」


一言一言がしっかりと教室に響き渡る。今まであってきた女性の中では郡を抜いて声が通る。なんなら教室では少しうるさいくらいだ。


「まずは入学おめでとう!みんなに出会えるのをホントに楽しみにしてました!」


パワーがとにかくすごい。こちらが完全に押されてしまうほどの陽のオーラをバンバンに出してくる。女性でこんなにもオーラって出るの⁉︎と言いたくなるくらいの圧倒的な存在感。最初の印象はまさにこれに尽きる。


香凛って名前から漂うお淑やかさのようなものとは全くの正反対の性格と言っていいだろう。


「女性ではありますが、専門は保健体育科、一応この星翔学園女子野球部の監督をやっています!モットーは人生後悔のない挑戦をし続けること!みんなにも、私が担任になったからには元気に笑顔で一年過ごしてもらうよ!」


あーなるほど。白水さんの反応がよく分かったわ。部活の顧問が担任とか授業担当だと下手できないもんなぁ。しかも監督かよ。


「私の経歴を少し話しておくと...この星翔学園のOGでもあります。あの時はまだ女子校だったかなぁ。今は男子も入ってきてくれて、学校もどんどん変わっていってるんだなぁって感じてます。
一応ここの女子野球部出身で、内野手として全国大会優勝、日本代表にも選ばれて世界一!その後は女子プロ野球選手としても活動、そこでも日本代表として世界一になりました!」


いや、経歴大化け物やんけ。人のオーラを見る目はやっぱあるみたいだわ。


「5年前に引退して、この星翔に戻ってこないかって誘われたのがきっかけでこの学校で指導をしています。私の経験を君たち一人ひとりに向き合って伝えていくから、これからよろしくね!」


なんとも熱い先生だ。熱男ならぬ熱女と叫びたくなる。


「花咲くん...ほんとに一年間頑張ろうねぇ...」


どうやら白水さんの平凡なスクールライフは崩れ去ったらしい。南無三。


「じゃ、この後入学式あるから!テキトーに並んで、ワイワイ体育館に入場するよ!楽しんでいこう!以上!」


...この人ほんとに先生か?立ち振る舞いに疑問を持ちつつも、周りに流され体育館へ向かうのだった。


ちなみに白水さんとあのドリルは非常に静かに、素早い行動をしていたのは言うまでも無い。








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