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29.個人では

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「ルーファさんのランクってどれくらいなの?」

 なんて聞いてみたのはちょっとした好奇心であり、ルーファさん達のランクを知っておきたいという確認からくる質問だった。

「私のランクは個人ではBでパーティーならAだよ」

 おぉっ!

 思っていた以上に高ランクだったことに驚きつつ、Cランクくらいかな~、と低く見積もっていたことを内心で謝る。

「個人でもパーティーでもここのギルドの中では上位に位置する冒険者ね」

 イヤイヤといった様子でイサナミさんがそう言うと、どうだと言わんばかりに胸を張るルーファさん。

「こんなバカじゃなかったら個人でもAランクになってるはずなのだけどね」

 そんな姿が気に食わなかったのか、イサナミさんは最後に1言付け加えた。

「私はバカじゃないぞ!」

 ルーファさんが大声で否定する。

「いえ、リーダーはバカですね」

 大盾を持つ女性がイサナミさんの言葉を肯定した。

「アイス!」
「バカだな」

 続くように短剣2本を装備した女性も頷く。

「シファ!」
「大バカだね」

 マントを羽織った女性は「大」まで付けて肯定した。

「ヒシア!?」
「救いようのない大バカですね」

 ヒシアさんの言葉にさらに「救いようのない」という言葉を付け足して肯定する杖を持った女性。

「ニーフ!」

 今まで静かだったパーティーメンバーからの思わぬ罵倒にルーファさんはそれぞれの名前を叫んだ。

「そんなことないだろ!」

 ルーファさんの言葉にアイスさん達は首を振った。後ろの冒険者達からも笑い声があがったので、バカというのは嘘ではないのだろう。

 笑われたルーファさんは後ろを歩く冒険者達を睨みつけた。

 睨まれた冒険者達はすぐに笑うことをやめたが、あいにくと笑ったということは変えれないので、あとでルーファさんから色々と言われたりするだろう。

 内心では一応ご愁傷さまと言っておこう。

「そんなことあるから言ってるのよ」

 深々とため息を吐いたシファさんは首を振った。

「ルーファのことを知ってる人なら絶対バカと言うでしょうね」
「言わない人を探す方がムリだね」
「まぁ、ルーファのバカは一生治らないでしょう」

 アイスさん達は笑いながらそんなことを言った。

「ボロカス言われてるな」か。

 思ってることを素直に言いあえるなんていいパーティーじゃないか。

 まぁ、ボロカスではあるね。

 そう思うと、なんだか面白くなってきたので僕も笑えてきた。

「ぷっ」

 それでも、ルーファさんに向かって気にすることなくパーティーメンバーがバカと言いきったので、笑ってはいけないと思っていたがつい笑ってしまった。

 その笑い声を聞いたルーファさんは僕の方へと近づいてくると首をホールドされた。

「笑った?」

 ずいっと顔を近づけてきたルーファさんの笑顔の圧は強く、1歩下がろうとしたが首をホールドされているので下がれない。

 なので、笑顔を返す。

「笑いましたね」

 素直に言うと首を絞められた。

 そういう返しがくるのはわかっていたが、それでも笑ってしまったことは事実なのでこれ以外の答えは言えなかった。

「素直にいうことがいいわけじゃないぞ」

 確かにその通りなのだけど、なぜだろうか、言い返さずにはいられなかった。

「バカなことがいいことでもないと思いますよ」
「なっ!」

 まさか言い返されると思っていなかったルーファさんは驚き、みんな大爆笑し始めた。

 そんな状況に僕も一緒になって笑っていると、ルーファさんはさらに僕の首を絞めながらみんなを順番に睨みつけた。

「どうやら模擬戦で死にたいみたいだな」

 その前に今死にそうになっているのでルーファさんの腕をタップする。

「く、苦しい………」
「あ?苦しくしてるんだから当たり前だろ」

 一応少しは力を緩めてくれたけど、それでも離してくれるなんてことはなかった。

「ルーファ。ホントのことを言われたからってそんなに怒るなって」

 近づいてきたアイスさんがルーファさんの肩を叩くと、ルーファさんはアイスさんを睨んだ。

「アイス!」

 アイスさんの言葉で怒りの先がアイスさんに向いたことで僕は解放され、ルーファさんはアイスさんに向かっていった。

 ホッとしながら後ろを見ると、ルーファさんとアイスさんが取っ組み合っていた。

 そうしながらも歩いていると、1つの部屋へやって来た。

「ほら、着いたからやめなさい」

 イサナミさんが諫める声でルーファさんは渋々取っ組み合いをやめた。それを確認したイサナミさんは僕達の方を向いた。

「ここが待合スペースよ」

 待合スペースと言われた場所は、真ん中に小さな台がある以外はホントに何もない空間だった。

「それでは皆さんここにギルドカードを置いてください」

 フィーナさんが台を示しながらそう言ってきたので、僕はギルドカードを台に置いた。
 後に続いてションゴン達やルーファさん達もギルドカードを台に置いたのを確認したフィーナさんが台を操作すると、足元が光った。
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