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51.貴族のボンボン

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「んっ。ん?」

 目が覚めたのだけど、なぜか両腕が動かない。

 なので、目を開けて顔を左右に振ってみると、両腕になぜかイヴィリアとオルスニードが抱きついて寝ていた。

 って、どういうこと?あれ?

 いや。ちゃんと昨日のことは覚えているよ。

 2人が騎士とはいえ周りに知らない大人だらけの中で起きたら混乱するだろうから僕達も騎士団の駐屯所で寝るって言ったことは。

 だけど、なんで2人と同じベッドで寝てるの?

「おっ。起きたか。おはよう」って。

 うん。おはよう。

 じゃなくて、これってどういう状況なの?

「お前、俺が説明出来ないことをわかって聞いてきてるだろ?」だよね。

 いや、そうだとは思っていたけど、もしかしたらって考えも少しはあったし、やっぱり聞いておいたほうがいいと、思った、から?

「その疑問系はなんだ!?おちょくってるのか!?」って。

 ごめんごめん。

 おちょくってるわけじゃないんだ。ちょっと寝起きで頭が働いてなかったから聞いてしまっただけだから。そんなに怒らないでよ。

「そこまで目覚めが悪いわけじゃねーだろが」って。

 まぁそうなんだけど、混乱しているから余計に頭が働かなくなってしまったって感じかな。

「それはわからなくもないけどな」だろ。

 しかし、ホントにどうすればこんな状況になるのだろうか?

 再度イヴィリアとオルスニードを見ると、2人は気持ちよさそうに寝ていた。

 こんな気持ちよさそうな寝顔を見ていると、助けられることが出来てホントに良かったとは思うけど、やっぱりどうすればこんな状況になるのかが理解出来ない。

「そんなのはカリスナかションゴン辺りに聞け!」だよね。

 そのションゴン達はどこだろう。

 と、顔だけを動かしてションゴン達の姿を探していると、タイミングよく扉が開いてカレンが入ってきた。

 カレンは僕達の姿を見てにっこりと微笑むとイヴィリアとオルスニードを起こさないように静かに近づいてきてベッドの横に立つと、僕の頭を撫でてきた。

「ションゴン達は?」

 2人を起こさないように気をつけながら小声で問いかける。

「みんななら隣の部屋で休んでいますよ」

 なるほどね。だからションゴン達の姿が見えなかったのか。

 と納得する反面、

 それでも普段なら僕が起きそうな気配を察知して、僕が起きる前に誰か1人でも側で控えてるはずなのにな。

 と疑問に思ったりもする。

「いや。起きそうな気配を察知して控えてるってどういうことだ?」って。

 それはもちろん僕が起きたら着替えや寝起きの飲み物を渡してくれるために決まってるだろ。

「だろ。じゃなくて。いや、そうか。忘れそうになるけどお前って貴族のボンボンでションゴン達は使用人だったな」か。

 そうそう。忘れないでよね。

 しかし、使用人としての仕事に慣れ始めてから今日まで1度も欠かさずにしてくれていた、僕にとってもルーティンになっていたことなので多少の違和感があったりする。

「うぅん」

 僕達の声に反応したのか、イヴィリアが僕の腕をさらに強く掴んできた。

 そんなイヴィリアを見てなるほどと思った。

 イヴィリアやオルスニードに配慮してのことか。だから控えることをしなかったわけだね。

「これはどういう状況なの?」

 カレン達が控えていなかった理由は理解したけど、その理由となった今の状況は理解出来ないのでカレンに聞いた。

「元々はこの部屋の別々のベッドへ寝かせていたのですが、途中で起きた時に心細くなってルイの元に来て寝直したのでしょう」

 カレンの説明に左右を見てみると、確かに2つベッドがあり、ベッドの乱れ具合からしてそこで寝ていたのだなってことが見てとれた。

「なるほど」

 元々起きた時に安心させるために僕達も騎士団の駐屯所で休むと言ったわけだし、その役目を果たせたのなら駐屯所で休むと言ってよかったと思えた。

「今ってどれくらいの時間なの?」
「ちょっと前に4の鐘が鳴ったばかりですね」

 ということはもうすぐお昼ってことか。

 熟睡出来たおかげもあってもう眠くもないし起きたいのだけど、イヴィリアとオルスニードが腕を掴んでいるので起き上がれないし、気持ちよさそうに寝ている2人を起こしてまで起き上がるつもりはない。なので、2人が起きるまで寝転んでおこう。

 そんな僕の考えを理解したのだろう。カレンは優しい笑顔を僕に向けながら頭を撫で続けてきた。
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