桜の下の約束

アオト★★

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第二十話 「父の想い」

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―桜の下の約束―

第二十話 「父の想い」

暫く千草はぼんやりと桜を見上げていた

渉やみちる、千草のお父さんも桜を見ていた

千草の用意した手料理もいつの間か、空っぽになっていた・・。

千草がトイレに行ってくると言い立ち上がって席をたった

千草がトイレに行っている間に千草のお父さんがみちると渉に言った

「今日は娘の為に花見を計画してくれて有難う、みちるちゃん、渉君

千草は昔から何をするにもわがまま一つ言わないで我慢して、うちは父子家庭だから

娘には幼い頃から苦労させてしまいました。

母親が事故死したとき、千草はまだ三歳でした。妻は交通事故でした。

青信号を渡ろうとしたとき、トラックがつっこんできて一瞬の出来事でした。

母親が死んだという事実は、当時三歳の娘には理解できるはずもありませんでした。

その時、「ママはどこに行ったの?」その問いにただ何も言えないまま、毎日自問自答の

日々でした。妻はもういないんだという事と母親の存在の大きさを痛感させられました。

千草が小学校へあがるまで母親の死という事実は告げませんでした。

初めて母親の死を告げた時こう言いました。

「これからは、お母さんはいないけどお父さん頑張るから。

千草が大人になって成長していくまでずっと一緒にいるからな」って。

それからの私の日々は子育てと仕事の両立でした。

正直父親と母親の両方を務めるのは辛かったでしたが、それよりも

心配だったのが千草に母親がいない事で色々寂しい想いや辛い想いを

させてしまっていないかということでした。

学校生活も学校高学年から中学生にあがるまでうまくいっているのか

どうなのか心配でしたが千草はそんな私の心配をよそにいつも笑顔で

優しい子供に育ってくれました。みちるちゃんや渉君のような幼馴染にも

出会えて学校生活も楽しく送れているようで安心しました。

本当に君たちには感謝しています。これからもずっとあの子が

転校しても千草の支えになってあげてください」

そう千草のお父さんはみちると渉に頭を下げた。



つづく







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