50 / 102
番外編
願い(8-6・7幕間)
しおりを挟む
――今夜は朝まで一緒にいたい。
夏祭りの花火が終わる頃、抱き寄せられて耳元にささやかれた。心の底でまったく同じことを考えていたので、男の腕の中でるいは黙って頷いた。普段あまり自らの望みや希望を口にしない雅勝の望みが、今の自分の願いと完全に重なっていることを、とても幸せだと感じていた。
るいがこの出合い茶屋にやって来るのは、今回が二回目のことだ。
それでも前回は一応、傷の手当てをするという建前があったのだけど、今回はそんな建前などまるでない。ただ一緒にいる為だけに男とこのような場所にやってくる日が来るとは、明野領に来る前には考えてもみなかった。
そうしてひとしきり夢中で時を過ごして――彼は今、るいのすぐ隣で眠っている。
これまでにも何度か寝顔を見たことはある。この人の伏せた睫が思いの他長いことも知っている。だけど今まで見た寝顔は毒虫の熱で死にかけていたり、ものすごく辛くて苦しそうだったりしたので、完全に無防備で安らかな寝顔をじっくり眺めたのはこれが初めてかもしれない。うっすら開いた唇から規則正しい寝息が零れていて、どうやら完全に熟睡しているらしい。
――今ならまだ番屋に突き出しはしない。素直に取ったものを出せ。
不意に雅勝とはじめて出会った時のことを思い出して、るいは忍び笑いをした。
はじめて出会った時はただ驚いただけだった。二度目に会った時は、何とまあ頭が固くて融通の利かない頑固者だと反発した。――まさかその人をこれほどまでに好きになってしまうなんて。
るいが雅勝と二人だけで共に過ごした時間は、まだそれほど長くはない。仮祝言の夜から明野領に帰ってくるまでの間こそずっと一緒にいられたけれど、戻ってきた後は顔を合わせて話をすることさえも限られた時間の中で、慌ただしく過ぎ去って行った。
だから今、こんな風に誰よりも近くで一緒にいられる時間はものすごく貴重だ。同じ夜具の中で喜びをかみしめながら男の寝顔を眺めていると、肩の辺りに回されていた腕がびくりと震えて、男の目が開いた。
「……あれ、俺、寝てたか?」
「はい。とてもよく」
どうやらまだ少し寝ぼけているらしい。障子から零れる薄い月灯りの下で、眠そうに目を瞬いている。そういえば二人きりで明野領に帰ってくる道中、どちらかといえば夜更かしより早起きの方が得意だと言っていた。幸い、夏祭りの夜は外出が許されているので、明日の朝まで陣屋に戻らなくても咎められることはない。侍女仲間に多少の言い訳は必要かもしれないが、るいはもう朝まで帰りたくなかった。
「眠たいなら寝てていいですよ」
「いや、時間がもったいない。ただ昨夜、考えすぎてあまり寝られなかったんだ」
「え?」
「……最悪、来ない可能性もあるかと考えてたからな。その場合どうするか、いくら考えても思いつかなかった」
この前会った時の別れ方がよくなかったので、本気でそんなことを考えていたらしい。しかしいくらなんでもそれは、最悪の想定過ぎるのではないかとるいは思う。今度会った時に何をどう話そうかと悩んではいたけれど、もう会わないなんてことは、るいはまったく考えてもみなかった。
第一、故郷では祝言を挙げており、るいは既にこの男の妻だ。今更離れるというのなら、きちんと去り状を書いてもらわないと困る。
はっきりそう言ってやると、薄闇の中で雅勝は本気で嫌そうな顔をした。
「いや、それは……、本気で舅殿に殺されそうな気がするんだが」
「はい。だからそんなことはしないで下さいね」
長くて筋のある指が髪に絡んだ。この部屋に入った時、その手で解いて乱したるいの髪を梳きながら、耳元に問うてくる。
「お方様に話してしまったら、もう後には引けないぞ。お前、本当にいいのか?」
この人はこの期に及んでどうして未だに、そんなことを聞くのだろうか。
仮祝言の夜、本気どころか正気を疑われたことは今もはっきり覚えている。正直あの時点で、るいは雅勝がこちらの気持ちにはとっくに気づいていると思っていた。後で話した時には、気づいてはいてもまさかあの場で即答されると思わなかったのだと言っていたが、自分を好いていると承知の女に求婚して、同意されて正気を疑うという思考回路が未だに理解できない。
いつもいつも問われてばかりでは癪に障る。一度こちらからきちんと聞いておこうと思って、るいはここはあえて質問に質問で返すことにした。
「雅勝殿。わたしも一つ聞いていいですか?」
「ああ、何だ?」
「ややこが出来たらどうしますか?」
優しく髪を撫でていた手の動きが停止する。
どうやら本気で想定外の質問だったらしい。るいとしては、今夜るいが来ない可能性よりも、そちらの可能性を想定しておいてもらいたかった。
あまりに沈黙が長く続いたので、さすがに少し不安になってしまった。高貴な姫君ならばともかく、今時、市井の娘であれば男と夜を共にすることの意味くらいは知っている。特にるいの故郷には夜這いの風習があるので、それがどういうことなのか、意に添わない場合は断ることなどを年長の女性達から教わって、経験はなくとも知識はあった。
――この人は本当に、子どもを授かる可能性があることを考えてもみなかったのだろうか。
想定外の質問にしばらく思考停止に陥った後、雅勝は目を見開いて、それからとても嬉しそうに――笑った。
「……それ、楽しみだな」
「え?」
「そうか、そうだよな。お前と俺の子か。……そういうこともあるんだよな」
そういえばものすごく子ども好きで、赤子の扱いも上手い人だったと思いだした。しかしまったく想定していなかったのもどうかと思うのだが、そこまで無邪気に喜ぶのもどうなのだろうか。
「その時は、産んでいいんですか?」
「他に何があるんだ?その時は一緒に育てよう。――とても楽しみだ」
前に本人の口から、妹が生まれた時に懐に抱いてもらい乳して回ったという話は聞いたことがあった。それだけではなく襁褓を変え、寝かしつけ、湯に入れたこともあれば離乳食の重湯を作って食べさせたこともあるという。夫が子育てを苦にしない――というより得意としているのは、るいにとっては有難いことかもしれないが、今あらためて聞くと、それはもう兄や父のすることではなく母親なのではないかとさえ思う。
それほど愛おしんだ相手に、生きていることさえ認識されていなかったということは、多分、今も彼の心に大きな影を落としているのだろう。だけどこの先、生まれてくる子どもが彼を知らないなどということは起こりえない。その時は二人で一緒に、目いっぱい慈しんで育てよう。
「わたしも楽しみになってきた……かも」
「かも?」
「色々大変だって話は聞いたことがあるので。こればっかりは実際に経験してみないと何とも」
「……確かに。産むまではお前にしかできないからな」
くすくす笑い合いながら、男の胸に頬を寄せると、腕を伸ばして引き寄せてくれた。閉ざした瞼に口づけられて身体に重みがかかる。広い背に腕を回して温かな重みを受け止めた時、耳元で波の音を聞いたような気がした。
太陽の陽射しを弾いて光り輝く波。波打ち際の浜辺の白。あれは多分、前に雅勝に連れて行ってもらった海だ。明野領に来るまで海を見たことのなかったるいは、あれほど綺麗で光輝く景色を他に知らない。どこまでも続く白浜に足跡が見える。大きな足跡の後ろに小さな足跡が続いていて、ずっと見ていると、先を歩んでいた武家の男が振り返って、足元の幼子を抱き上げた。
これが夢であることはわかっている。その証拠に、逆光でもないのに彼らの顔かたちは定かではない。だけど二人がこちらを向いて笑っているのはわかる。彼らがこれほどるいの近くにいるということは――きっと、そういうことなのだろう。
振り返った砂浜の足跡は三人分あった。大きな足跡とそれより少し小さな足跡と、そしてとても小さな足跡と。ここまで三人で歩いてきたのだと気付いて、全身が幸福感に押し包まれた。
どこかで見たようなありふれた幸せで構わない。悲しい未来は欲しくない。打ち寄せる波の音に身を任せながら、いつかこの幸福が現実となることを、るいは心の底から強く願った。
夏祭りの花火が終わる頃、抱き寄せられて耳元にささやかれた。心の底でまったく同じことを考えていたので、男の腕の中でるいは黙って頷いた。普段あまり自らの望みや希望を口にしない雅勝の望みが、今の自分の願いと完全に重なっていることを、とても幸せだと感じていた。
るいがこの出合い茶屋にやって来るのは、今回が二回目のことだ。
それでも前回は一応、傷の手当てをするという建前があったのだけど、今回はそんな建前などまるでない。ただ一緒にいる為だけに男とこのような場所にやってくる日が来るとは、明野領に来る前には考えてもみなかった。
そうしてひとしきり夢中で時を過ごして――彼は今、るいのすぐ隣で眠っている。
これまでにも何度か寝顔を見たことはある。この人の伏せた睫が思いの他長いことも知っている。だけど今まで見た寝顔は毒虫の熱で死にかけていたり、ものすごく辛くて苦しそうだったりしたので、完全に無防備で安らかな寝顔をじっくり眺めたのはこれが初めてかもしれない。うっすら開いた唇から規則正しい寝息が零れていて、どうやら完全に熟睡しているらしい。
――今ならまだ番屋に突き出しはしない。素直に取ったものを出せ。
不意に雅勝とはじめて出会った時のことを思い出して、るいは忍び笑いをした。
はじめて出会った時はただ驚いただけだった。二度目に会った時は、何とまあ頭が固くて融通の利かない頑固者だと反発した。――まさかその人をこれほどまでに好きになってしまうなんて。
るいが雅勝と二人だけで共に過ごした時間は、まだそれほど長くはない。仮祝言の夜から明野領に帰ってくるまでの間こそずっと一緒にいられたけれど、戻ってきた後は顔を合わせて話をすることさえも限られた時間の中で、慌ただしく過ぎ去って行った。
だから今、こんな風に誰よりも近くで一緒にいられる時間はものすごく貴重だ。同じ夜具の中で喜びをかみしめながら男の寝顔を眺めていると、肩の辺りに回されていた腕がびくりと震えて、男の目が開いた。
「……あれ、俺、寝てたか?」
「はい。とてもよく」
どうやらまだ少し寝ぼけているらしい。障子から零れる薄い月灯りの下で、眠そうに目を瞬いている。そういえば二人きりで明野領に帰ってくる道中、どちらかといえば夜更かしより早起きの方が得意だと言っていた。幸い、夏祭りの夜は外出が許されているので、明日の朝まで陣屋に戻らなくても咎められることはない。侍女仲間に多少の言い訳は必要かもしれないが、るいはもう朝まで帰りたくなかった。
「眠たいなら寝てていいですよ」
「いや、時間がもったいない。ただ昨夜、考えすぎてあまり寝られなかったんだ」
「え?」
「……最悪、来ない可能性もあるかと考えてたからな。その場合どうするか、いくら考えても思いつかなかった」
この前会った時の別れ方がよくなかったので、本気でそんなことを考えていたらしい。しかしいくらなんでもそれは、最悪の想定過ぎるのではないかとるいは思う。今度会った時に何をどう話そうかと悩んではいたけれど、もう会わないなんてことは、るいはまったく考えてもみなかった。
第一、故郷では祝言を挙げており、るいは既にこの男の妻だ。今更離れるというのなら、きちんと去り状を書いてもらわないと困る。
はっきりそう言ってやると、薄闇の中で雅勝は本気で嫌そうな顔をした。
「いや、それは……、本気で舅殿に殺されそうな気がするんだが」
「はい。だからそんなことはしないで下さいね」
長くて筋のある指が髪に絡んだ。この部屋に入った時、その手で解いて乱したるいの髪を梳きながら、耳元に問うてくる。
「お方様に話してしまったら、もう後には引けないぞ。お前、本当にいいのか?」
この人はこの期に及んでどうして未だに、そんなことを聞くのだろうか。
仮祝言の夜、本気どころか正気を疑われたことは今もはっきり覚えている。正直あの時点で、るいは雅勝がこちらの気持ちにはとっくに気づいていると思っていた。後で話した時には、気づいてはいてもまさかあの場で即答されると思わなかったのだと言っていたが、自分を好いていると承知の女に求婚して、同意されて正気を疑うという思考回路が未だに理解できない。
いつもいつも問われてばかりでは癪に障る。一度こちらからきちんと聞いておこうと思って、るいはここはあえて質問に質問で返すことにした。
「雅勝殿。わたしも一つ聞いていいですか?」
「ああ、何だ?」
「ややこが出来たらどうしますか?」
優しく髪を撫でていた手の動きが停止する。
どうやら本気で想定外の質問だったらしい。るいとしては、今夜るいが来ない可能性よりも、そちらの可能性を想定しておいてもらいたかった。
あまりに沈黙が長く続いたので、さすがに少し不安になってしまった。高貴な姫君ならばともかく、今時、市井の娘であれば男と夜を共にすることの意味くらいは知っている。特にるいの故郷には夜這いの風習があるので、それがどういうことなのか、意に添わない場合は断ることなどを年長の女性達から教わって、経験はなくとも知識はあった。
――この人は本当に、子どもを授かる可能性があることを考えてもみなかったのだろうか。
想定外の質問にしばらく思考停止に陥った後、雅勝は目を見開いて、それからとても嬉しそうに――笑った。
「……それ、楽しみだな」
「え?」
「そうか、そうだよな。お前と俺の子か。……そういうこともあるんだよな」
そういえばものすごく子ども好きで、赤子の扱いも上手い人だったと思いだした。しかしまったく想定していなかったのもどうかと思うのだが、そこまで無邪気に喜ぶのもどうなのだろうか。
「その時は、産んでいいんですか?」
「他に何があるんだ?その時は一緒に育てよう。――とても楽しみだ」
前に本人の口から、妹が生まれた時に懐に抱いてもらい乳して回ったという話は聞いたことがあった。それだけではなく襁褓を変え、寝かしつけ、湯に入れたこともあれば離乳食の重湯を作って食べさせたこともあるという。夫が子育てを苦にしない――というより得意としているのは、るいにとっては有難いことかもしれないが、今あらためて聞くと、それはもう兄や父のすることではなく母親なのではないかとさえ思う。
それほど愛おしんだ相手に、生きていることさえ認識されていなかったということは、多分、今も彼の心に大きな影を落としているのだろう。だけどこの先、生まれてくる子どもが彼を知らないなどということは起こりえない。その時は二人で一緒に、目いっぱい慈しんで育てよう。
「わたしも楽しみになってきた……かも」
「かも?」
「色々大変だって話は聞いたことがあるので。こればっかりは実際に経験してみないと何とも」
「……確かに。産むまではお前にしかできないからな」
くすくす笑い合いながら、男の胸に頬を寄せると、腕を伸ばして引き寄せてくれた。閉ざした瞼に口づけられて身体に重みがかかる。広い背に腕を回して温かな重みを受け止めた時、耳元で波の音を聞いたような気がした。
太陽の陽射しを弾いて光り輝く波。波打ち際の浜辺の白。あれは多分、前に雅勝に連れて行ってもらった海だ。明野領に来るまで海を見たことのなかったるいは、あれほど綺麗で光輝く景色を他に知らない。どこまでも続く白浜に足跡が見える。大きな足跡の後ろに小さな足跡が続いていて、ずっと見ていると、先を歩んでいた武家の男が振り返って、足元の幼子を抱き上げた。
これが夢であることはわかっている。その証拠に、逆光でもないのに彼らの顔かたちは定かではない。だけど二人がこちらを向いて笑っているのはわかる。彼らがこれほどるいの近くにいるということは――きっと、そういうことなのだろう。
振り返った砂浜の足跡は三人分あった。大きな足跡とそれより少し小さな足跡と、そしてとても小さな足跡と。ここまで三人で歩いてきたのだと気付いて、全身が幸福感に押し包まれた。
どこかで見たようなありふれた幸せで構わない。悲しい未来は欲しくない。打ち寄せる波の音に身を任せながら、いつかこの幸福が現実となることを、るいは心の底から強く願った。
0
あなたにおすすめの小説
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
仇討浪人と座頭梅一
克全
歴史・時代
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。
旗本の大道寺長十郎直賢は主君の仇を討つために、役目を辞して犯人につながる情報を集めていた。盗賊桜小僧こと梅一は、目が見えるのに盗みの技の為に盲人といして育てられたが、悪人が許せずに暗殺者との二足の草鞋を履いていた。そんな二人が出会う事で将軍家の陰謀が暴かれることになる。
罪悪と愛情
暦海
恋愛
地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。
だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる