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第二部4
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「――それでは、おるいさんは、その方は雅勝様ではないとおっしゃったのですか?」
飯野の邸から家臣を名乗る男がやって来て、ぐったりとした男を抱えて連れて帰った。正直、動かさない方がよいのではないかと思ったし、医者が必要ならこちらで呼ぶから養生するようにとも言ったのだが、半ば強引に連れて行かれた。三十代後半くらいの恰幅のよい人物で、身体つきや醸し出す雰囲気が尋常でなかった。相当な遣い手――もしかすると葉隠衆かもしれない。それもあって、ほとんど意識のない病人を連れて帰るという無体を止められなかった。
明野領にやって来て以来、おるいとおゆいの母子は保月庵で生活している。今日はおるいが清水の邸に行っている間、菊松尼におゆいを預かってもらっていた。おるいを送って保月庵にやってきた忠雅に、菊乃は茶を立ててくれた。相変わらず、見事な御点前だ。普段ならこれで静心が保てるのだが、今日ばかりは勝手が違った。
「ああ、うん。……そうなんだよな」
――清水様、違います。あの方は雅勝殿ではありません。
体調を崩した客人が帰った後、悲愴感すら感じさせる眼差しで、おるいは忠雅にそう告げた。
おゆいはすっかり菊松尼に懐いており、茶の湯や縫物を習いにきた女の子達に「おゆいちゃん、おゆいちゃん」と頭を撫でられて機嫌よく過ごしていたそうだ。それでも慣れない場所で母親と離れていたのは不安だったのだろう。帰って来たおるいの顔を見るなり、しがみついて離れなくなった。おるいがおゆいを抱き締めて隣室に引き上げたので、今、茶室には忠雅と菊乃しかいない。
「……でも、俺にはとてもそんな風には見えなかった」
あの一瞬で確信した。生きていたのだと。三年前のあの状況で、何をどうして生き延びたのかさっぱりわからないけれど、雅勝は生きていた。そして、記憶を失っている。自分が明野領の影衆であったことも、忠雅の友であったことも、おるいと恋仲であったこともすべて忘れた上で、今、忠雅の敵方にいる。
女心と秋の空とはよく言ったものだが、おるいの考えが忠雅にはまったく読めなかった。生きていたのであれば、忠雅としては何としても奴をおるいの許に帰してやりたい。雅勝は三年前に既に死んだことになっているので、今さら影衆を抜ける抜けないの話もない。親子三人仲良く、山里で畑でも耕して暮らせばいい。自分は雅勝一人の妻だとはっきり言っていたのに、何故今、別人であると偽りを述べるのか。
「……では、おるいさんは里にお戻りになると?」
「ああ。畑を人に頼んで来てるから、あんまり長くは空けてられないそうなんだ。ちょうど収穫期だし。おるい自身の生活もあるしな。数日中には起ちたいって言ってた」
「では、おゆいちゃんも行ってしまうのですね……」
短い間ではあったが、菊乃はおゆいをとても可愛がっていた。しかも忠雅が驚くほど子どもの扱いが上手い。何でも兄夫婦の折り合いが悪く、義姉がしょっちゅう子どもを置いて実家に戻っていたので、その間はいつも菊乃が兄の娘――姪の面倒を見ていたのだという。忠雅はまったく知りもしなかった、佐竹家の家庭の事情である。
菊乃の兄であった佐竹実雅は三年前、領主の本領入りの際に襲撃に巻き込まれて亡くなった。残された妻は娘を連れて実家に戻り、佐竹家は縁戚にあたる人物が後を継いでいる。よほど夫婦仲がうまく行ってなかったのか、兄嫁は佐竹家の繋がりを完全に切ってしまったので、菊乃と可愛がっていた姪との縁も切れてしまった。
「菊乃殿、その……」
そんなに子どもが好きなら、還俗して、俺の子を産んではくれないだろうか。
――と今ここで言うのは、あまりに直截的過ぎるだろうか。
ここ数日、おゆいと菊乃の微笑ましい姿を見ていて、心の底から本気でそう思った。邸に帰って、毎日あんな姿を見ることができたなら、嫌な思い出しかない清水の邸を自分の家だと思えそうな気がする。
偽らざる本心であり、心の奥底からの願いなのだが、何をどうしてどのように告げたらよいのかわからない。本気で思案しながら茶を口に含んだ忠雅と相対し、菊乃は驚くようなことを平然と言ってのけた。
「そうですよね。おるいさんにだって暮らしがありますし。……でしたら、忠雅様とおるいさんが、夫婦になればよいのではありませんか?」
飲みかけの茶が気道に入った。
途端、激しくむせ返った忠雅の背を菊乃がさすってくれた。かなりの量の茶がおかしなところに入った所為で、息ができない。生理的に溢れた涙で視界が揺らぐ。まさかここで抹茶に殺されるのかと本気で覚悟しかけた時、何とか空気が肺までたどり着いてくれた。
「な……なにをいって……」
窒息死は免れたものの上手く声が出ない忠雅に向かって、菊乃はあくまで大真面目だ。
「おるいさんの実の父上は川口様なのでしょう?やりようによってはできるのでは?そうすればおるいさんはこの先も明野領にいられますし、おゆいちゃんも武家の子として育てられます」
武家の婚姻は家同士が決めるものだ。祝言まで顔も知らないという話も珍しくはない。
確かにおるいが川口忠道の実子であることを考えれば不可能ではないだろうが、忠雅自身の感情として絶対に嫌だった。おるいをどう思うかの問題ではなく、自分以外の男に惚れている女を妻にはしたくない。
――できるなら、妻となる人とは情で繋がりたい。
ずっと、そう思ってきた。
忠雅も男だ。人並みに欲もある。いつまで経っても妻帯しない忠雅にじれた親戚連中は随分と前から、清水の邸に行儀見習いの名目で若い女を送り込むようになっていた。正室でなくとも手が付けば側女として、男児を生ませようという魂胆である。縁者の老人が娘を連れてきて、あからさまに、好きなように扱って構わないと言われたこともあったが、まったくそんな気になれなかった。男の存在とは女を不幸にして踏み躙る――自分自身の来し方と母の人生を思い起こして、どうしてもそのような気がしてならなかった。
だが最近、おるいや菊乃を見ていると、それも男の傲慢なのかもしれないと思うようになった。男がいなくとも、おるいも菊乃もしっかりと根を張り、たくましく生きている。おるいに育てられているおゆいもまた、同じようにしなやかで強い女に育つのだろう。そう思うと記憶にある楚々として儚げであった母すら、芯の通った強かな存在に思えてくるのだから不思議なものだ。
女は子を孕む為の道具ではない。無論、男の慰みものでもない。共に並び立ち、世知辛い世を生き抜く為の伴侶なのだと、二十二年生きてきて初めて悟った気がする。
――あたなだって、俺の気持ちには気づいているんだろう……?
婚約を解消してからも、こうして何度も顔を合わせている。正直、最初の頃は――いや、今でも菊乃からいつ「もう来ないでくれ」と言われるかと怯えている。菊松尼の保月庵での生活に、忠雅は一切関与していない。忠雅がいなくとも、菊乃は問題なく生きていける。菊乃と過ごす時間がなければ生きていられないのは忠雅の方だ。
共に生きる存在として、他は考えられない。――端的に言うなら、この女が欲しい。
無意識に伸ばしかけていた指を、密かに握りしめる。
――なあ、お前はどうだったんだ?
この女でなければ駄目だ。悟った瞬間、身が竦むほどの恐怖を感じはしなかったか。せっかく巡り合えたかけがえのない存在を、闇の底でのたうち回るような人生に引きずり込むことに、躊躇いはなかったのか。
親しき仲にも礼儀はあると思ったので、その辺りの事を具体的に聞いてみたことはない。だが御見の方に許嫁と認められ、祝言の場所や新居を探して幸せいっぱいだったあの頃ならば、水を向ければ惚気半分に話してくれたような気がする。
好いた女に、どうやって自分の気持ちを伝えていいのかわからない。俺のものになって欲しいと伝えて断られるのが怖いんだ――なんて他の奴には絶対できない相談も、あいつになら出来ただろうに。
今、この場にいない友と、切実に語り合ってみたかった。
飯野の邸から家臣を名乗る男がやって来て、ぐったりとした男を抱えて連れて帰った。正直、動かさない方がよいのではないかと思ったし、医者が必要ならこちらで呼ぶから養生するようにとも言ったのだが、半ば強引に連れて行かれた。三十代後半くらいの恰幅のよい人物で、身体つきや醸し出す雰囲気が尋常でなかった。相当な遣い手――もしかすると葉隠衆かもしれない。それもあって、ほとんど意識のない病人を連れて帰るという無体を止められなかった。
明野領にやって来て以来、おるいとおゆいの母子は保月庵で生活している。今日はおるいが清水の邸に行っている間、菊松尼におゆいを預かってもらっていた。おるいを送って保月庵にやってきた忠雅に、菊乃は茶を立ててくれた。相変わらず、見事な御点前だ。普段ならこれで静心が保てるのだが、今日ばかりは勝手が違った。
「ああ、うん。……そうなんだよな」
――清水様、違います。あの方は雅勝殿ではありません。
体調を崩した客人が帰った後、悲愴感すら感じさせる眼差しで、おるいは忠雅にそう告げた。
おゆいはすっかり菊松尼に懐いており、茶の湯や縫物を習いにきた女の子達に「おゆいちゃん、おゆいちゃん」と頭を撫でられて機嫌よく過ごしていたそうだ。それでも慣れない場所で母親と離れていたのは不安だったのだろう。帰って来たおるいの顔を見るなり、しがみついて離れなくなった。おるいがおゆいを抱き締めて隣室に引き上げたので、今、茶室には忠雅と菊乃しかいない。
「……でも、俺にはとてもそんな風には見えなかった」
あの一瞬で確信した。生きていたのだと。三年前のあの状況で、何をどうして生き延びたのかさっぱりわからないけれど、雅勝は生きていた。そして、記憶を失っている。自分が明野領の影衆であったことも、忠雅の友であったことも、おるいと恋仲であったこともすべて忘れた上で、今、忠雅の敵方にいる。
女心と秋の空とはよく言ったものだが、おるいの考えが忠雅にはまったく読めなかった。生きていたのであれば、忠雅としては何としても奴をおるいの許に帰してやりたい。雅勝は三年前に既に死んだことになっているので、今さら影衆を抜ける抜けないの話もない。親子三人仲良く、山里で畑でも耕して暮らせばいい。自分は雅勝一人の妻だとはっきり言っていたのに、何故今、別人であると偽りを述べるのか。
「……では、おるいさんは里にお戻りになると?」
「ああ。畑を人に頼んで来てるから、あんまり長くは空けてられないそうなんだ。ちょうど収穫期だし。おるい自身の生活もあるしな。数日中には起ちたいって言ってた」
「では、おゆいちゃんも行ってしまうのですね……」
短い間ではあったが、菊乃はおゆいをとても可愛がっていた。しかも忠雅が驚くほど子どもの扱いが上手い。何でも兄夫婦の折り合いが悪く、義姉がしょっちゅう子どもを置いて実家に戻っていたので、その間はいつも菊乃が兄の娘――姪の面倒を見ていたのだという。忠雅はまったく知りもしなかった、佐竹家の家庭の事情である。
菊乃の兄であった佐竹実雅は三年前、領主の本領入りの際に襲撃に巻き込まれて亡くなった。残された妻は娘を連れて実家に戻り、佐竹家は縁戚にあたる人物が後を継いでいる。よほど夫婦仲がうまく行ってなかったのか、兄嫁は佐竹家の繋がりを完全に切ってしまったので、菊乃と可愛がっていた姪との縁も切れてしまった。
「菊乃殿、その……」
そんなに子どもが好きなら、還俗して、俺の子を産んではくれないだろうか。
――と今ここで言うのは、あまりに直截的過ぎるだろうか。
ここ数日、おゆいと菊乃の微笑ましい姿を見ていて、心の底から本気でそう思った。邸に帰って、毎日あんな姿を見ることができたなら、嫌な思い出しかない清水の邸を自分の家だと思えそうな気がする。
偽らざる本心であり、心の奥底からの願いなのだが、何をどうしてどのように告げたらよいのかわからない。本気で思案しながら茶を口に含んだ忠雅と相対し、菊乃は驚くようなことを平然と言ってのけた。
「そうですよね。おるいさんにだって暮らしがありますし。……でしたら、忠雅様とおるいさんが、夫婦になればよいのではありませんか?」
飲みかけの茶が気道に入った。
途端、激しくむせ返った忠雅の背を菊乃がさすってくれた。かなりの量の茶がおかしなところに入った所為で、息ができない。生理的に溢れた涙で視界が揺らぐ。まさかここで抹茶に殺されるのかと本気で覚悟しかけた時、何とか空気が肺までたどり着いてくれた。
「な……なにをいって……」
窒息死は免れたものの上手く声が出ない忠雅に向かって、菊乃はあくまで大真面目だ。
「おるいさんの実の父上は川口様なのでしょう?やりようによってはできるのでは?そうすればおるいさんはこの先も明野領にいられますし、おゆいちゃんも武家の子として育てられます」
武家の婚姻は家同士が決めるものだ。祝言まで顔も知らないという話も珍しくはない。
確かにおるいが川口忠道の実子であることを考えれば不可能ではないだろうが、忠雅自身の感情として絶対に嫌だった。おるいをどう思うかの問題ではなく、自分以外の男に惚れている女を妻にはしたくない。
――できるなら、妻となる人とは情で繋がりたい。
ずっと、そう思ってきた。
忠雅も男だ。人並みに欲もある。いつまで経っても妻帯しない忠雅にじれた親戚連中は随分と前から、清水の邸に行儀見習いの名目で若い女を送り込むようになっていた。正室でなくとも手が付けば側女として、男児を生ませようという魂胆である。縁者の老人が娘を連れてきて、あからさまに、好きなように扱って構わないと言われたこともあったが、まったくそんな気になれなかった。男の存在とは女を不幸にして踏み躙る――自分自身の来し方と母の人生を思い起こして、どうしてもそのような気がしてならなかった。
だが最近、おるいや菊乃を見ていると、それも男の傲慢なのかもしれないと思うようになった。男がいなくとも、おるいも菊乃もしっかりと根を張り、たくましく生きている。おるいに育てられているおゆいもまた、同じようにしなやかで強い女に育つのだろう。そう思うと記憶にある楚々として儚げであった母すら、芯の通った強かな存在に思えてくるのだから不思議なものだ。
女は子を孕む為の道具ではない。無論、男の慰みものでもない。共に並び立ち、世知辛い世を生き抜く為の伴侶なのだと、二十二年生きてきて初めて悟った気がする。
――あたなだって、俺の気持ちには気づいているんだろう……?
婚約を解消してからも、こうして何度も顔を合わせている。正直、最初の頃は――いや、今でも菊乃からいつ「もう来ないでくれ」と言われるかと怯えている。菊松尼の保月庵での生活に、忠雅は一切関与していない。忠雅がいなくとも、菊乃は問題なく生きていける。菊乃と過ごす時間がなければ生きていられないのは忠雅の方だ。
共に生きる存在として、他は考えられない。――端的に言うなら、この女が欲しい。
無意識に伸ばしかけていた指を、密かに握りしめる。
――なあ、お前はどうだったんだ?
この女でなければ駄目だ。悟った瞬間、身が竦むほどの恐怖を感じはしなかったか。せっかく巡り合えたかけがえのない存在を、闇の底でのたうち回るような人生に引きずり込むことに、躊躇いはなかったのか。
親しき仲にも礼儀はあると思ったので、その辺りの事を具体的に聞いてみたことはない。だが御見の方に許嫁と認められ、祝言の場所や新居を探して幸せいっぱいだったあの頃ならば、水を向ければ惚気半分に話してくれたような気がする。
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