俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬

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第四話

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⋯そういえば俺まだ昼ご飯食べてなかったな。あれ一時半って、まだご飯頼めたりするっけ?
ロイが来る前に確認しとくか。今日の日替わりメニューも気になるし。

そう席を立ち大好きな日替わりクレープの有無を確認するため、レイは足音が響く食堂内を歩き、入口付近に並ぶ食券売り場へと向かった。

「えーっと、⋯⋯お、良かった、まだ頼める!あっ、これロイ好きそうだな―――うおっ!?」

食券機のメニューを確認していると、後ろから背の高い何かがレイの全身を覆いかぶさった。

――あれ、この匂い、もしかして⋯⋯

「ロ、ロイ⋯!?」

「正解。久しぶり、兄さん!」

覚えのある匂い、自分よりも一回り大きい身長、そして優しく自身を包み込むようなハグ。
聞き馴染んだ大好きな声を聞く前に答えは分かったも同然だった。
頬を緩ませ、ガシリと俺を包んだロイは、先程までの険相とは打って変わって、まるで久しぶりに主人に会った子犬のような無邪気な顔を見せた。そんな彼の両手は、レイの腹部にまで伸び、包みこんだレイを逃がすまいと固く握りしめている。そして少し前のめりにったロイは自身の手の中にすっぽりと納まる兄の、頬にそっと自身の顔を近づけた。
そして兄のレイもまた、自身の右手を上げて彼の頭を優しく撫でた。

「うわっ、前より背高くなってないか!」

「あはっ、兄さんが小さくなったんじゃない?」

「なんだと~」

そうして、これでもかと密着し、二人だけの世界に入り浸っていると、またもやレイの聞き慣れた声が背後から驚嘆の声を上げていた。

「レレ、レイ!そそ、その子って!」

ロイの頭をポンと優しく叩き、ロイの両手を解除したレイは、くるりと後ろに振り向くと、再びロイの両手を手繰り寄せ、自身の腹部にキープした。

「にっ、兄さん⋯!」

そう言って更に強く抱きしめてくる感触をじんわりと感じつつ、俺はウィーリアへの説明を続けた。

「俺の弟のロイ。かわいいだろ?」

「ぼ、僕は可愛くないよ」

「何言ってんだ。俺の弟は世界一かわいい。違うか?」

確かに昔と違って体格だって俺よりデカくなったし、力だって俺よりも強い。
けどやっぱりロイは、昔と変わらず俺のたった一人の、世界一かわいい弟なんだよなぁ⋯

「ち、違わない⋯かも⋯」

そう返しながらも、耳を赤くするロイ。ロイは昔から照れたり恥ずかしがったりすると、耳を赤くするんだよなぁ。はぁ~やっぱ変わらないなぁ。
“俺の可愛い弟よ~久しぶりに会えて嬉しいぞ~”と、今度はワシャワシャとロイの頭を撫で回した。


すると突然、ウィーリアの顔色が青ざめていくのを感じた。なにかに怯えるように後退りするウィーリアの視線の先は弟の方へ向いているようだった。

「な、なぁレイ。本当にその子が君の弟なのか⋯⋯?」

「あぁ!やっと紹介できるな!」

そうしてレイは自身の肩に顔を預けていたロイの方へ視線を落とした。俺の視線に気づいたロイは、こちらを向いてにこりと笑った。うん、いつものかわいい弟だ!
にしても、なんでウィーリアはロイを見てあんな怖いものでも見たような顔をしてたんだ?

「⋯「あぁ!」って、君はなにも感じないのか!」

「ん?なにがだ?」

なにかを言いたげに自分を見つめるウィーリアにそう尋ねるも、なかなか言い出さない彼を不思議に思いつつ、レイはロイに包まれた現状を堪能していた。決して一人では味わうことのできない人肌の素晴らしさを感じつつ、久しぶりの“ロイ摂取”に集中しているようだ。

「あ、ロイ。お前また眉間にしわ寄ってるぞ。ほら、リラックスリラックス。」

「え、⋯あ、うん。そうだね」

そんな中、気まぐれにレイの放った一言が、周囲に張り巡らせたロイの警戒心を緩和させた。
周囲の人間が安堵のため息を漏らしていることも知らず、レイの頭の中はロイでいっぱいだった。

ったく、他の人の前だとすぐ人見知りモードに入るんだよなぁ。あ、もしかしてウィーリアが怖がってたのってロイの人見知りモードだったのか。
根はすごくかわいくて優しい子なのに~まぁそんな不器用な所もチャームポイントのひとつなんだけど。

「紹介するよ、こいつは俺の親友ウィーリア。寮の部屋が一緒でさ」

「親友⋯⋯」

「初めてできた親友なんだ!いつかロイにも紹介したくて!」

「兄さん⋯!」

一瞬“親友”という言葉を出した時、ロイに眉間が寄った気がしたが、気のせいだったみたいだ。

「⋯ん?あれ、どうしたウィーリア。全然元気ないけど――」

先程から全く動かないウィーリアに気がついたレイが心配そうに声を掛けると、彼ははっと、正気を取り戻した後、恐る恐るレイに言葉を投げた。

――彼の隣りにいる猛獣が再び牙を剥くことがないように。

「そ、その、レイ。隣りにいる彼のことで、話したいことがあるんだ。」

いつも首からぶら下げている情報収集用のカメラをお守りのように握ったウィーリアは、少し引きつった顔でそう言った。
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