4 / 44
入学編
第四話 : 再会
しおりを挟む⋯そういえば俺まだ昼ご飯食べてなかったな。あれ一時半って、まだご飯頼めたりするっけ?
ロイが来る前に確認しとくか。今日の日替わりメニューも気になるし。
そう席を立ち大好きな日替わりクレープの有無を確認するため、レイは足音が響く食堂内を歩き、入口付近に並ぶ食券売り場へと向かった。
「えーっと、⋯⋯お、良かった、まだ頼める!あっ、これロイ好きそうだな―――うおっ!?」
食券機のメニューを確認していると、後ろから背の高い何かがレイの全身を覆いかぶさった。
――あれ、この匂い、もしかして⋯⋯
「ロ、ロイ⋯!?」
「正解。久しぶり、兄さん!」
覚えのある匂い、自分よりも一回り大きい身長、そして優しく自身を包み込むようなハグ。
聞き馴染んだ大好きな声を聞く前に答えは分かったも同然だった。
頬を緩ませ、ガシリと俺を包んだロイは、先程までの険相とは打って変わって、まるで久しぶりに主人に会った子犬のような無邪気な顔を見せた。そんな彼の両手は、レイの腹部にまで伸び、包みこんだレイを逃がすまいと固く握りしめている。そして少し前のめりにったロイは自身の手の中にすっぽりと納まる兄の、頬にそっと自身の顔を近づけた。
そして兄のレイもまた、自身の右手を上げて彼の頭を優しく撫でた。
「うわっ、前より背高くなってないか!」
「あはっ、兄さんが小さくなったんじゃない?」
「なんだと~」
そうして、これでもかと密着し、二人だけの世界に入り浸っていると、またもやレイの聞き慣れた声が背後から驚嘆の声を上げていた。
「レレ、レイ!そそ、その子って!」
ロイの頭をポンと優しく叩き、ロイの両手を解除したレイは、くるりと後ろに振り向くと、再びロイの両手を手繰り寄せ、自身の腹部にキープした。
「にっ、兄さん⋯!」
そう言って更に強く抱きしめてくる感触をじんわりと感じつつ、俺はウィーリアへの説明を続けた。
「俺の弟のロイ。かわいいだろ?」
「ぼ、僕は可愛くないよ」
「何言ってんだ。俺の弟は世界一かわいい。違うか?」
確かに昔と違って体格だって俺よりデカくなったし、力だって俺よりも強い。
けどやっぱりロイは、昔と変わらず俺のたった一人の、世界一かわいい弟なんだよなぁ⋯
「ち、違わない⋯かも⋯」
そう返しながらも、耳を赤くするロイ。ロイは昔から照れたり恥ずかしがったりすると、耳を赤くするんだよなぁ。はぁ~やっぱ変わらないなぁ。
“俺の可愛い弟よ~久しぶりに会えて嬉しいぞ~”と、今度はワシャワシャとロイの頭を撫で回した。
すると突然、ウィーリアの顔色が青ざめていくのを感じた。なにかに怯えるように後退りするウィーリアの視線の先は弟の方へ向いているようだった。
「な、なぁレイ。本当にその子が君の弟なのか⋯⋯?」
「あぁ!やっと紹介できるな!」
そうしてレイは自身の肩に顔を預けていたロイの方へ視線を落とした。俺の視線に気づいたロイは、こちらを向いてにこりと笑った。うん、いつものかわいい弟だ!
にしても、なんでウィーリアはロイを見てあんな怖いものでも見たような顔をしてたんだ?
「⋯「あぁ!」って、君はなにも感じないのか!」
「ん?なにがだ?」
なにかを言いたげに自分を見つめるウィーリアにそう尋ねるも、なかなか言い出さない彼を不思議に思いつつ、レイはロイに包まれた現状を堪能していた。決して一人では味わうことのできない人肌の素晴らしさを感じつつ、久しぶりの“ロイ摂取”に集中しているようだ。
「あ、ロイ。お前また眉間にしわ寄ってるぞ。ほら、リラックスリラックス。」
「え、⋯あ、うん。そうだね」
そんな中、気まぐれにレイの放った一言が、周囲に張り巡らせたロイの警戒心を緩和させた。
周囲の人間が安堵のため息を漏らしていることも知らず、レイの頭の中はロイでいっぱいだった。
ったく、他の人の前だとすぐ人見知りモードに入るんだよなぁ。あ、もしかしてウィーリアが怖がってたのってロイの人見知りモードだったのか。
根はすごくかわいくて優しい子なのに~まぁそんな不器用な所もチャームポイントのひとつなんだけど。
「紹介するよ、こいつは俺の親友ウィーリア。寮の部屋が一緒でさ」
「親友⋯⋯」
「初めてできた親友なんだ!いつかロイにも紹介したくて!」
「兄さん⋯!」
一瞬“親友”という言葉を出した時、ロイに眉間が寄った気がしたが、気のせいだったみたいだ。
「⋯ん?あれ、どうしたウィーリア。全然元気ないけど――」
先程から全く動かないウィーリアに気がついたレイが心配そうに声を掛けると、彼ははっと、正気を取り戻した後、恐る恐るレイに言葉を投げた。
――彼の隣りにいる猛獣が再び牙を剥くことがないように。
「そ、その、レイ。隣りにいる彼のことで、話したいことがあるんだ。」
いつも首からぶら下げている情報収集用のカメラをお守りのように握ったウィーリアは、少し引きつった顔でそう言った。
385
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。
牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。
牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。
そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。
ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー
母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。
そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー
「え?僕のお乳が飲みたいの?」
「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」
「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」
そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー
昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!
「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」
*
総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。
いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><)
誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。
婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。
春雨
BL
前世を思い出した俺。
外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。
愛が重すぎて俺どうすればいい??
もう不良になっちゃおうか!
少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。
初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。
※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫です。
※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。
もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。
なるべく全ての感想に返信させていただいてます。
感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます!
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
正義の味方にストーカーされてます。〜俺はただの雑魚モブです〜
ゆず
BL
俺は、敵組織ディヴァイアンに所属する、ただの雑魚モブ。
毎回出撃しては正義の戦隊ゼットレンジャーに吹き飛ばされる、ただのバイト戦闘員。
……の、はずだった。
「こんにちは。今日もお元気そうで安心しました」
「そのマスク、新しくされましたね。とてもお似合いです」
……なぜか、ヒーロー側の“グリーン”だけが、俺のことを毎回即座に識別してくる。
どんなマスクをかぶっても。
どんな戦場でも。
俺がいると、あいつは絶対に見つけ出して、にこやかに近づいてくる。
――なんでわかんの?
バイト辞めたい。え、なんで辞めさせてもらえないの?
――――――――――――――――――
執着溺愛系ヒーロー × モブ
ただのバイトでゆるーく働くつもりだったモブがヒーローに執着され敵幹部にも何故か愛されてるお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる