俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬

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魔法対抗試合編

第十七話 : トラウマ

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「それではこれより選手の転移を開始します。チームごとにまとまってください」




ーーーーーーーーーーーー




「火の妖精よ、力を与え給え――小炎火球!」

「地の妖精よ、大地を揺るがす力を我に――ひび割れ!!」

「⋯⋯よし、二人とも魔法石を取りに行こう」

微かに頬を通る風、木々が触れ合い葉が擦れ、歩くたび鳴る砂利の音――本当に森にいるかのような感覚に改めて教師の凄さを体感する。
そんな世界に来て二十分。早くも僕達は魔法石を手に入れていた。

「ロイ、これで何個だ?」

「三つだ。だがまだ足りないだろう、第三試験に進むには」

制限時間は二時間。今のところ調子は良いが、ずっとこのペースで取れるとは限らない。今までの敵も全員弱かったしな。
にしても、この二人。意外と戦えるな⋯⋯

マティニアは火魔法、ステンは土魔法。二人ともまだ低級の魔法しか使えないものの、今までろくに魔法を扱ってこなかったにしては、乱れのない魔法を作っていた。
これなら僕が魔法を使うこともなさそうだ。体力を温存しときたいのもあるが、何よりここは学校じゃない。周りの目もあるんだ。必要以上に目立つ必要はない。

僕は剣で、ステンとマティニアは少し離れて魔法を使う。この連携は、僕達のチームに凄く合っていた。近距離で戦うと思っていたステンに、遠くから援護するように言ったのはマティニアだったか。おかげでステンが全体を見て魔法を使えている。

「なぁ、結構いいペースだし、休憩しないか?」

リーダーである僕を先頭に森を進んでいると、後ろで、後頭部で手を組んでいるステンがそう言った。
二人ともあまり疲れている様子はないものの、後半になるにつれ魔法石を巡る戦いが本格化すると考えた僕は、ステンの意見を受け入れた。休めるうちに休んだほうが良い。作戦会議もまだ途中だったし。

僕達は少し進んだ先にあった、木々の生えていない場所で休憩をとった。近くにあった大きめの石を椅子にし、三人で円を描くように座る。

「なぁロイ、お前魔法は使わないのか?」

「あぁ、変に消耗したくない」

「いいよなぁ、剣が使えるやつは⋯⋯って、あぁ、そういやロイは騎士団長の家の子だったな。今日来てたじゃねぇか、良かったな!」

「⋯⋯あぁ、」

ステンの純粋な言葉に対して、 僕は苦虫を噛み潰したような顔で答える。
父さんはいい、父さんはまだいいのだが、僕の問題は副団長のアレクにあった。
僕の剣の先生にして、僕の唯一のトラウマ。騎士団と混ざって練習をしていた頃、あの澄ました顔で散々僕を煽り散らしては、向かってきた僕を徹底的に打ちのめし、起き上がれなくなるまで延々と繰り返す。それがあいつのやり方だ。おかげで何度、医務室送りにされたことか。
うっ、あいつの悪魔のような顔が、また蘇ってきた⋯⋯⋯

「⋯あ、マティニア、もう体調は大丈夫なのか?」

転移してすぐの時、何もない所を見ては不安げな顔をしていた彼女に尋ねる。

「えっ、えぇ、もう大丈夫です。」

拳を強く握りしめた彼女は、覚悟を決めた目をしていた。
あまり戦闘経験が無いと言っていたが、ここまででだいぶ慣れたのだろうか。

そうして、三人で腰を休ませながら、今後の動きについて話し合っている時だった。
二メートルほど離れた所から、何者かが木の枝を踏む音が聞こえた。
僕はとっさに立ち上がり、音のした方角を向いては剣を構えた。二人もまた、立ち上がっては僕の後ろに行き、詠唱の準備を始めた。

音の主は、意外にもすぐに姿を見せてくれた。

「おいおい、平民風情がなに俺らに向かって剣構えてんだ?」

「⋯お前は⋯⋯」

間違いない、こんな不快感を感じる顔なんて、忘れるはずもない。
徐々に接近してくる三人の影。それは入学式の日、僕をひどく罵倒してきたあの三人組のものだった。

「ロイ、知り合いか?」

距離を詰め、真正面に対峙するよう配置についた彼らを見て、ステンが眉根を寄せる。
どう説明しようか考えていると、中央にいた男が僕に近づいては、声を荒げた。

「俺はなぁ、ずっとお前に復讐する機会を待ってたんだ!」

そう言って腰の鞘から剣を取り出し、僕と同じように構える男に一瞬だけフリーズした。
僕に対して剣で戦おうとするのか、入学当初、剣すらも持ってなかったやつがか?

他の二人が戸惑うことなく詠唱魔法に取り掛かるところから見るに、こいつが魔法を使わないのは理解済みか。となると、何か策があるのか。それとも、何も考えず剣を持ってきたやつなのか。

「お前を絶望させるには、お前が得意な剣で打ち負かせばいいって気づいてな。金は結構使ったが、本物の騎士を呼んで練習したもんよ」

後者だったか。確かに最近こいつを見ていないと思ってはいたが、まさか密かに剣の練習をしていたとは思わなかった。魔法の練習だけしてればいいものを、僕に執着して剣の方に焦点をあてるとは呆れるな。けれど、ちゃんと練習してきたのは少し感心だな。

「あの日から俺等はクラスで浮いた存在になった。全員が冷ややかな目で俺等を見る。それも全部、あの日お前が俺等に恥をかかせたせいだ!」

そうして降り掛かってくる剣をただ避けるだけの僕を見て、男はさらに声を張り上げた。

「なんでお前が、力も、親もないお前が!なんで俺よりも王子様と仲良くなってんだよ!!」

王子?少し聞き捨てならないな。僕は一刻も早くあいつと距離を置きたいのだが。
そう言いたい気持ちを抑えて、目の前の剣に集中する。
止まることなくぶっきらぼうに、感情のなすままに振りかざされた剣は、動きを読むのに苦労しない。
淡々と避け続けるだけの僕に、男の腰巾着の二人が攻撃を仕掛けようとするも、マティニアとステンがそれを防いでくれているようだ。

このままこいつが疲れるのを待つのも良いが、あいにく試験開始から半分も経ってないこの状態で、それをするのは無駄すぎる。変に体力と時間を使うだけだ。

一度しまった剣を取り出し、男の剣めがけ振りかざす―――寸前、急に軌道を変えた男の剣が、僕の脇腹を軽く切り裂いた。

「っ⋯⋯」

急いで距離を取り、切られた所に手を当てる。幸い出血量は少ないものの、この男に隙をつかれたというのは、少し堪えるな。
こちらに目を向けるマティニアとステンに、構わずあの二人に攻撃を続けるよう言った僕は、再び男の間合いへと足を運んだ。

それにしても、急に軌道が変わったが、あれは無意識だったのか?いや、あの動きは無意識にできるものではない。となると、教わったという騎士が教えたものなのか。少しの違和感を覚えた僕は、男に問いかけた。

「⋯なぁ、さっき剣を教わったと聞いたが、誰から教わったんだ」

僕に一撃入れる事ができ、満足げに鼻を鳴らした男が答える。

「えっと、確かアレクってやつが教えてくれたな」

男が吐いた言葉に、僕の時間が止まるも束の間、すぐに頭を稼働させる。
いやいや、そんな事あるはずない。あいつは金をいくら積んだとしても、先程の動きを素直に教えるほど優しいやつじゃない。
そう結論づけた僕は再度、男に質問する。

「百歩譲ってあいつを金で呼んだとしても、ちゃんと教えてはくれなかっただろ」

そんな僕に対し、男は嘲笑うように答えた。

「あぁ、最初はな。でもお前の名前を出したら、急に真面目に指導してくれるようになってなぁ。お前、騎士団のやつにも嫌われてるとか、笑えるな」

なるほど、完全に理解した。
昔から今まで、ずっとあいつは僕のことが嫌いだ。それはもう、目に見えるくらいに。
他の兵士に比べ、些細な事でもすぐ怒鳴り、戦う時も手加減しないのは当たり前。生意気だと言っては喧嘩という名の試合をふっかけコテンパンにする。外部の人間を使ってまで、僕を痛めつけたかったか。性格の悪いあいつらしいやり口だ。

「けど甘い――」

八年間、あいつの元で死に物狂いで練習したんだ。一ヶ月、たった一ヶ月しか教わってないやつに負ける訳無いだろう。
この男への恨みなのか、はたまたあいつ、アレクへの積もりに積もった恨みなのか。
僕は静かに歩み寄り、思い切り剣を振るった。
いきなりの動きに、焦った男は再び変則的な軌道の斬撃を繰り出した。
所詮あいつの見真似にすぎない。こうして冷静に見てみると、あいつと違って動きも拙く、隙も多い。

「そこだ」

軌道が切り変わる瞬間を捕らえ、最小限の動きで避けると同時に、がら空きになった男の胴へ刃を走らせた。
瞬間、先程までの余裕な顔とは一変、膝を崩し倒れた男は、血を流す腹部を必死に抑えていた。

「なっ、なんで⋯⋯」

先程と同じく、軌道を変えたはずなのに――
そう言いたげな顔でこちらを見る男は、未だにこの状況を飲み込もうとはしなかった。

「⋯⋯あいつの考えそうな軌道だった、それだけだ。それに、僕に剣で勝とうと考えた時点で、お前の負けは決まってたんだ」

そうして剣を鞘に入れ、男の持っていた鞄から魔法石を探していると、男の両端にいた二人もまた、地面に倒れ込んでは意識を失った。
後ろを振り向くと、そこには、腕をぶつけ合い、勝利を分かち合う二人の姿があった。その光景を前に、僕もまた兄さんを当てはめては、目一杯褒められる、そんな妄想を頭の中で繰り広げた。

それから僕達は、倒れた三人を一箇所にまとめた後、この場を去ることにした。
休息を取りたいのは山々だが、戦ってるのを感知した第三者に、続けざまで戦うのは避けたい。いわゆる、漁夫の利というやつだ。

軽く各々で手当した僕達は、すぐに移動に取り掛かった。
そしてまた森の中へと入り込む、ところだった。

「あれ、ロイじゃん」

背後からの声に、一気に疲労が溜まる。
草をかき分け出てきたそいつは、薄暗い森の中で一層濃い影を含んだ目で、僕を見つめていた。

そうして後ずさろうとする僕を前に、そいつはパッと、こぼれんばかりの笑顔に切り替えこちらに
駆け寄ってきた。

「まさか会えるとは、わざわざ遠くまで来た甲斐があったよ!」

逃げようとする僕の腕をガシリと掴む。 そこには歓喜に顔を歪ませ、僕に会えた喜びを抑えきれていない――カインがいた。
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