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魔法対抗試合編
第二十四話 : 懐かしい記憶
しおりを挟む生まれた時から俺の側に居たのは母だけだった。父は俺が生まれる少し前に何処かへふらりといなくなったらしい。それでも母は一人手で大切に育ててくれた。
傷だらけのその手でご飯を食べさせてくれた、一生懸命貯めたお金を俺の好きな本に使ってくれた。夜、窓から差し込む暗闇に何処かへ攫われてしまうかもしれないと泣いた時には俺が寝るまでお腹を優しく叩いてくれた。
安心できるように、泣かないように。
五歳の時、母が死んだ。仕事先で倒れたらしい。原因は過労だった。
程なくして俺は裕福だという母方の妹の家に引き取られた。
この頃から、同い年の子ども達が魔法を使い始めた。少ない魔力で拙い魔法を。詠唱魔法はまだ早い、と地面に魔法式を描いては唱えた。初めて触れるカッコいい“魔法”に俺は興味を持った。皆が笑顔で作る“魔法”を自分もやってみたいと思った。
隣の子どもが描いていた魔法をそっくり真似て、頑張って、初めてだけど成功しますように、と願いながら魔力が体を、腕を、巡っていくのを感じた。
その瞬間、地面から激しく炎が吹き上がった。それは皆よりも大きく、鮮明で、なにより美しかった。
でもそれと同時に俺は知った。
――この力は異常なのだと。
周りの子ども達は先程までと違ってバケモノでも見るような顔をした。その子らの親もまたヒソヒソと耳打ち立てている。後ろから見守っていた叔母さんや叔父さんは血相変えて俺に尋ねてきた。
今のはたまたまだよな、今のは他の子の魔法と混ざっただけだよね。そんな二人に再度魔法を見せると、暗く青ざめた顔をした。
今になって思うと、二人は認めたくなかったんだろう。俺が、どちらかが他所でできた子供だということを。正真正銘、二人の子供だというのに。
結局そこも居心地が悪くなって、最終的に俺は母方の姉の家に転がり込んだ。俺が異常だと知った上での養子だった。二人は俺を温かく、本当の子供のように育ててくれた。
そして二人同様俺を本当として接してくれたのが、兄さんだった。
兄さんはこの頃から魔法が好きだった。魔力が少ないにも関わらずどうにかして魔法を覚えよう、使おうと家にあった一冊の使い込まれた、ボロボロの魔導書をいつも持ち歩いていた。いつか俺にも教えてあげる、そう言われたけど、俺は異常だと思っていたから、いつも「うん」と言えなかった。
俺を恐怖の対象で見て、石を投げたり水をかけたり、覚えたての魔法で俺を追い払おうとした。“呪われた子”と口ずさみながら。そこには怪物から家族を守ろう、村を守ろうと、彼らなりの正義があったのかもしれない。
そんな中、俺の事情を教えられなかった兄さんは、石を投げられるたびに俺を助けてくれた。そして助けられるたびに俺は誓った。自分の力は隠すべきだ、でないと兄さんもこいつらと一緒に俺をいじめる時が来る、と。
今振り返ると兄さんは、俺の力を知ってもいじめるどころか凄く褒めてくれたと思うけど、まぁこの時はそう思っていたんだよ。
「⋯⋯考えられないな、僕の家だとすぐに神童ともてはやされるけど」
「俺の村⋯いや、他の村でも変わらないと思うぞ。なんてたって俺は平民で、黒髪なんだからな。そりゃ生まれたときから魔力が多いと思われがちな貴族だったらチヤホヤされてたかもしれないが、魔力が少ない平民から見ると俺は“得体のしれないバケモノ”だったんだよ。」
「⋯そうなのか⋯⋯あれ、でもじゃあなんで君たちは騎士団長の家にいるんだ?君へのいじめがエスカレートして引っ越すのなら分かる。けどなぜ君たちは団長の養子になったんだ」
『お前のせいだ、お前のせいで――は、――は死んだのよ!!!』
『やめて母さんロイは悪くない!!!父さんが死んだのは全部ーーで、ーーーから』
『黙りなさいレイ!そこをどくの!!その子をーーないと私、私は⋯!!!』
『ーーーさん、母さんっ!!!』
「―――い、おい、大丈夫か?」
急にうずくまったかと思えば、体を小刻みに震わせた俺を、横からひょいと顔を出したカインが心配そうな顔をして見つめていた。目の前には小さく紙の上で灯る炎があり、この空間を優しく照らしていた。
「あぁ、大丈夫だ」
「⋯変なこと聞いてすまない。今の質問は忘れてくれ」
「気にするな、ていうかお前、謝れたんだな、王子のくせに―――って、なに火付けてんだ!!今でも十分息苦しいのに⋯って⋯⋯」
⋯⋯息苦しくない。咄嗟に隣りにいる男の顔を見る。するとカインは得意げに言い放った。
「そういえば、って途中で思い出したんだ」
そう言ってポケットの中から一つの紙を取り出した。そこには魔法式が描かれており、カインの魔力が少しだけ残っていた。
「何かあった時用にって父さんがね。王宮の実験室で作ったものらしくて、一応持っとけって言われてさ、途中で思い出したんだ。能力は“魔法の無効化”。いやぁ、まだ魔力が残ってて助かったよ。これでバレないように隙間作っといたからさ、後は剣刺して壊しちゃってよ」
こいつ、簡単に壊せとかいいやがる。ていうか、魔法の無効化だって⋯?
「⋯⋯おい、それ反則じゃないのか」
ほれ、と手を差し伸べ、俺の体を起こしたカインは口元に人差し指を当てた。
「見られなかったら、セーフでしょ」
そうして俺の腰に掛けてある剣を指さし、壁を壊す動作を取る。言いたいことは山程あるけれど、今回こいつが居なかったらどうなってたか。
カインを離れさせ、剣を振るう。少し休んだおかげか体力もある程度回復しており、剣の威力は通常通りだった。
破壊した音が耳元で大きく鳴り響いたと同時に、外に出て新鮮な空気を二人して目一杯吸い込んだ俺達は慌てて飛んできたマティニアを殺さないように気絶させ近くにあったツル植物で縛りあげた。
「⋯じゃあ無事外に出られたわけだけど、レイさん、助けに行く?」
座りっぱなしで固くなった体を伸ばしながらカインが聞いてくる。
「当たり前だ」
「でも、どうやって?」
「ステンを捕まえたらいい。あいつには、俺を殺すか殺さないかの指示を得るための連絡手段があるはずだ。それを使って兄さんを狙う変態と接近する」
集中力がいるが、ステンの魔力を辿っていけば見つかるだろう。
「でも、外の世界に出るには教師陣の介入が必要不可欠だよ。パスワードみたいなのが必要だと聞いたことがある」
「そんなん、今ここでくよくよ考えてても、どうしようもないだろ。とりあえずステンを捕まえるのが先だ」
今は行動あるのみだ。それに、少しでも兄さんの所へ行ける可能性があるなら、俺はそれに賭ける。何もしないよりマシだ。
「いや、そうなんだけど、なんか君って出会った時よりも脳筋になってない⋯?」
「は?俺は俺だろ。ほら、休憩終わったなら行くぞ」
はーい、と形容しがたい顔をしつつ地面に置いていた鞄を肩に掛けたカインと共に、俺はステンを探しに薄暗い森の中を歩き始めた。
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