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夏休み編
第三十話 : 昔と今
しおりを挟む俺の足に巻き付くよう動く足に、少しばかりくすぐったさを覚える。
ふともも、ふくらはぎ、つま先――ロイの触れた箇所全てがじんと熱くなる。まるでダウンケットに身をくるむかのように、全身がロイの熱に包まれていった。
「ロイ、俺薬取りに行ってくるからさ。ほら、すぐに戻って来るから」
側にいたいけど、薬を飲まず苦しそうにするロイは見たくない。そう思い、ロイをなだめるも、俺を抱く両腕は力を強めるばかりで離すつもりは毛頭ないらしい。こうなったロイに説得は効かない。昔からそうだと、抵抗するのをやめた俺は大人しくロイの手中に身を預けた。
歳を重ねるに連れ触れる事がなくなったロイのベッドに、久しぶりに全体重をのせた俺は、昔、まだ父さんの養子になったばかりの頃を思い出していた。
こんな広いベッドは初めてだ、と一緒に寝転がって両手を広げたり、足元のフレームに精一杯伸ばしたつま先を、ちょこんと当ててみたり。あ、そういやその後、こんな体勢でそのまま一緒に寝たんだっけ。
それでも今では、存分にあった余白は両手を伸ばせば一瞬でなくなるし、無理して伸ばさずともフレームくらい簡単に触れられるようになった。まったく同じ構図にも関わらずこんなにも違うとは、十年って恐ろしい。
徐々に暗くなっていく視界と共に、背中からじんわりと全身に広がっていく体温がやけに心地良く感じる。互いに穏やかな心音を奏でながら、俺達はそっと眠りについた。
どれくらい経ったんだろう、外から聞こえてきた馬の鳴き声で一気に目が覚めた俺は、未だに固定されている上半身を、ロイが起きないよう少し傾け窓の外を見た。
光が差し込んでいた窓は、真っ暗な空を映し出している。
すると、何やら言い争いをしている、変に聞き馴染みの深い声が徐々に近づいてくるのを感じた。
⋯⋯あれ、この状況ってマズくないか。普段ならまだしも、誰もいない部屋。一つのベッドの元密着している兄弟⋯てのは、見られたらヤバいものなのでは⋯?でも俺とロイって昔からこう、結構くっついてたよな?いやでも、いつまでも昔基準っておかしくないか⋯?あれ、普通の兄弟って十年くらい経ってもこんな感じだよな⋯!?
寝起きで働く気のない脳を少しずつ稼働するも、いつの間にか部屋の前にまで来ていた声の主達によって、稼働中止は余儀なくされた。
「こっ、こら!あまり強くドア開けないでよ、修理代代高いんだよ⋯⋯」
「うるさいですね。あなたなら、そんなのポンと払えるでしょう。それよりロイ、明日からの訓練だが―――」
いっそ寝ているふりでもしてみようかとも思ったが、時既に遅かった。俺は、ドアを開けた主犯格とその後ろでこちらを見つめる二人と目が合った。
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