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夏休み編
第三十三話 : 連続殺人
しおりを挟む「⋯え、っと、それって⋯⋯」
⋯⋯嘘だろ?この街で連続殺人?いやいや、こんな平和な街で殺人って。ていうか微塵もそんな空気は感じられないんだが。
左右に視線を動かし、ダレンの背中越しに道を行き交う人々を見渡す。手を繋いで歩く親子や、出店のものを食べ歩きしている人。燦々と照る太陽に照らされた彼らは、ちっとも事件の事を知らないように思えた。
「⋯ていうか、そんな重大な話しすんならもうちょっと周りに配慮したら?」
指をパチンと鳴らし、ちょうど二人分ほどの範囲で遮音魔法をかけた俺は、ダレンに若干呆れた声で言う。それにしても、まさか遮音魔法が指を鳴らすだけで発動できるとは。夏休み前に興味本位で既存の魔法式をいろいろ組み替えて良かったぁ⋯⋯まぁ、まだ近距離且つ書いた本人でしか発動できないんだけど。
遮音魔法をかける事でより詳しい話をする事ができるようになった俺達は、とりあえずセリウスとはぐれないよう、まずは歩き始めた。
そして、セリウスを目先で捕らえられる距離になった頃。ダレンは未だ信じられないという顔を浮かべるレイに、言葉を付け足した。
「まだ公には出回ってないからな。それに、俺らも大まかな情報しか持っていない。今までに四人。皆遠くから来た男爵クラスの独身貴族で、殺された後、ナイフで心臓の部分にバツ印が刻まれている事くらいしか知らねぇからな」
男爵で独身貴族が、四人も殺されてるって⋯?いくら遠くから来ていて、顔見知りもいないであったとしても、仮にも貴族。騒ぎが起こらないのはおかしくないか?
そう伝えると、ダレンは重いため息をついて答える。
「そいつら全員、裏通りで死んでるからな。ったく、週一の見回りついでに入ってみた場所で、まさか貴族が死んでるとは思わねぇだろ」
どうやら最初に被害者を見つけたのはダレンらしい。
大勢の人々が日々交流する街カルディナにも、立ち入ってはいけない場所が存在する。いや、正確には“立ち入ってもいいが、自己責任”だ。主に塀と家々の間の、光が遮られ一日中暗闇が覆う場所の事を指す“裏通り”は、ホームレスや売人が主に居着いている。そんな、金の亡者の集まりも同然なここに一般人よりも更に高貴なものを身にまとう貴族が入れば最後、どうなるかは想像にも難くない。
「⋯⋯あれ、でもそれだと裏通りの誰かが殺した可能性もあるけど」
「あぁ、俺も最初はそう思っていた。けど、三人目の殺人の時にその考えが変わった。一回目の殺人場付近を見回りしていた時、直近で殺された、胸にバツ印を負った死体を見つけてな。でも、身につけていた衣服も、アクセサリーも全部無事だった」
「⋯つまり、犯人は金銭が目的ではないと?」
「あぁ。それまでは発見が遅れたせいで、高価なものが他の奴らに根こそぎ持ってかれた後だったから、犯人の狙いは金銭だと思いこんでいたが、実際は違ったってわけだ」
「⋯でも、どうしてそれを俺に?」
するとダレンが、こちらを指さして言う。
「俺も、他の団員と同じくお前んとこで騒ぎを起こした奴が犯人だと踏んでいる。そこでだ。犯人のことで知ってることがあったら教えてくれないか?」
どうやらダレンは本気でイチが連続殺人の犯人だと思ってるようだ。⋯⋯でも、あいつがわざわざバレるような殺人をするか?まぁ、どっちにしろイチに関しては言わない約束だから⋯⋯
「ごめん、俺もよく知らない」
その言葉を聞いた途端、一気にダレンの気分が下がるも、すぐにダレンは丸まった背中をピシッと正した。
「だよなぁー、でもそりゃそうか。じゃないとお前、今頃死んでたかもしれないし」
「えっ」
「いや、実際は関係ないかもしれないが、たまに被害者の付近で殺されてる人間がいるんだ。胸に傷は無いからターゲットではないっぽいんだが、鋭利なものでこう、グサッと。ま、たまたまかもしれないがな」
前言撤回。やっぱあいつかもしれない。平気で人殺す発言して、その上やりかねない。そんな、意味不明で掴めない人間じゃないと、そんなんしないだろ。
クソっ、イチの可能性が出てきた以上ここは一旦引き返すか?今日はあまり魔法式も持ってきてないし⋯⋯
そう考えを始めたタイミングで、前方にいたセリウスがこちらを振り向いた。
「二人とも、着きましたよ」
そうして地図をしまったセリウスに続いて、俺達は店へと足を踏み入れた。
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