32 / 33
夏休み編
第三十二話 : 東の街カルディナ
しおりを挟む馬車に揺れること数十分、約半年ぶりに足を運んだそこは、住人や観光客、騎士や貴族など多くの人で賑わっていた。
街名“カルディナ”、通称「東の交易街」と呼ばれるこの街は、国の中心である王都の東に位置し、国内外問わず様々な物を寄せ集めては、売り買いがされている。たまにお宝品も眠っている事から、コレクターからも人気の街だ。
確か最近当主が代替わりしたって聞いてたけど、あまり変化はなさそうで安心した。
日々多くの人が行き交うこの街はその影響か、決して人を身分や出身で差別しない。誰でも気持ちよく、好きに買い物ができる所が観光客をそこらから引き寄せる魅力の一つなんだよな。
「んー、着いたぁ⋯⋯」
馬車から降り、太陽の光を全身に浴びながら大きく伸びをした俺は、のびやかな声を漏らした。
すると後ろから、あくび混じりの気の抜けた声が聞こえてきた。後ろを振り向くと、そこには長身で筋肉質な体をねじり、凝り固まった体を一生懸命ほぐす男がいた。アレク直属の先鋒部隊所属のダレンには、馬車の中は少し窮屈だったようだ。
「ダレン、薬屋ってどこだったか覚えてる?」
髪を掻きながら、ダレンが記憶をたどるように答える。
「えっと、確かここで一回右に曲がるような⋯」
「違います、真っ直ぐです」
突然会話に入ってくるものだから、驚いた。ダレンの言葉をきっぱりと否定した男は、しばらく荷物を漁った後、ため息混じりに馬車から身を降ろした。太陽の光に照らされ、眼鏡の縁を光らせた細身の男は、大きな鞄を肩に掛けつつ俺達二人に話しかけた。
「薬局までの道は私が案内します。二人共、ちゃんとついてきてくださいね、特にダレン!」
騎士団司令部に所属するセリウスは、自前の地図を取り出すと、俺達二人がどこかへうろつかないようにと目を光らせながら、大通りを歩きだした。
ダレンはまだしも俺まで警戒されてるのか⋯⋯確かに、ちょこっと抜け出して魔導書を見に行こうかなぁ~とは思ってたけど。
そうして、地図とにらめっこしながら歩くセリウスの後ろをただついていく俺達は、迂闊に屋台を巡ることも出来ず、結局薬屋に着くまでの間、軽い世間話でもすることにした。
「そういやレイ、お前の学校この前やばかったって聞いたけど大丈夫なのか?」
「別に俺はなんとも無かったよ、一瞬もの凄い威圧が来ただけで、すぐに消えてったし」
ダレンがどこまで知ってるのかは分からないが、イチの事を言ってはいけない以上、こう言うしかないんだが⋯⋯まぁ、大体合ってるだろ。
首の後ろで腕を組みながら尋ねてくるダレンに対し、必要以上なことを言っていないかと自分の言葉を反芻する。
「そうか⋯その犯人ってまだ捕まってないんだよな?」
「うん、らしいよ」
まぁ、イチのことは言ってないからな⋯⋯
アレクが口止めする以上、国絡みの可能性もあるし⋯⋯
「実は最近、ここらでちょっとした事件が相次いでてな。騎士団内で、お前らの学校の犯人と一緒のやつの仕業だーって言ってるやつもいてさ」
「⋯事件?」
そう尋ね返すとダレンは歩いていた足を止め、道に並ぶ屋台から視線を逸らし、俺の顔をじっと見つめ始めた。急な行動に、俺も歩みを止め、理由も分からずダレンの顔を見つめ返す。
屋台の呼び声と人々の笑い声が、妙に遠く感じる。
そしてダレンの真剣な顔から放たれた一言に、俺は言葉を失った。
「連続殺人だ」
51
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
幼馴染がいじめるのは俺だ!
むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに...
「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」
「はっ...ぁ??」
好きな奴って俺じゃないの___!?
ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子
ーーーーーー
主人公 いじめられっ子
小鳥遊洸人
タカナシ ヒロト
小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。
姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。
高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、
脳破壊。
千透星への恋心を自覚する。
幼馴染 いじめっ子
神宮寺 千透星
ジングウジ チトセ
小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。
美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている)
転校生の須藤千尋が初恋である
生まれ変わったら俺のことを嫌いなはずの元生徒からの溺愛がとまらない
いいはな
BL
田舎にある小さな町で魔術を教えている平民のサン。
ひょんなことから貴族の子供に魔術を教えることとなったサンは魔術の天才でありながらも人間味の薄い生徒であるルナに嫌われながらも少しづつ信頼を築いていた。
そんなある日、ルナを狙った暗殺者から身を挺して庇ったサンはそのまま死んでしまうが、目を覚ますと全く違う人物へと生まれ変わっていた。
月日は流れ、15歳となったサンは前世からの夢であった魔術学園へと入学を果たし、そこで国でも随一の魔術師となった元生徒であるルナと再会する。
ルナとは関わらないことを選び、学園生活を謳歌していたサンだったが、次第に人嫌いだと言われていたルナが何故かサンにだけ構ってくるようになりーーー?
魔術の天才だが、受け以外に興味がない攻めと魔術の才能は無いが、人たらしな受けのお話。
※お話の展開上、一度人が死ぬ描写が含まれます。
※ハッピーエンドです。
※基本的に2日に一回のペースで更新予定です。
今連載中の作品が完結したら更新ペースを見直す予定ではありますが、気長に付き合っていただけますと嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる