俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬

文字の大きさ
31 / 33
夏休み編

第三十一話 : 家で過ごす夜

しおりを挟む
ドアを開けてまもなく絶句したアレクは、ドアノブに手を添えつつ、目を見開き上下左右に動かした。その後ろでは、父さんが「キャッ」と言いながら両手で顔を覆っている。
ふと、俺の背後から微かに呻き声が聞こえてきた。棒のような両足に、絡みつく足をゆっくりと動かしたロイは、寝起きながらに両腕の力をぐっと込める。そして枕に預けていた頭を前のめりにし、懐にすっぽり収まる俺の頭の上に置いた。
「なんだ、アレクか」
頭上に顎をのせ、そう喋るロイの声は掠れていて、寝る前よりも悪化していた。早く薬と水を取ってこないといけないのに未だにロイの力は健在で、熱で少し弱まってるはずなのに俺の力ではちっとも動かせなかった。

すると、ロイの声が聞こえたからか。アレクはハッとした顔をし、そのはずみに勢いよくドアを閉めた。一人部屋に入れず嘆く父さんを気にもとめず、横暴な足取りでこっちに向かってきたアレクは、いきなり両手で俺の胴体を掴むと、後ろからがっしり抱いているロイから、俺の体を引き離そうとした。
そんなロイもまた、身を乗り出し、アレクに取られそうになる俺を必死に繋ぎ止めていた。
しかし相手は副団長。普段ならまだしも、病人であるロイにアレクの攻勢を防ぎ切ることはできず、ついに俺の体はアレクの手によってベッドの外に出ることになった。

すっぽり空いた空間を埋めるように縮こまったロイは、ベッドそばに立つアレクを睨みつけ威嚇するも、効果はなし。ロイから引き剥がした俺を小脇に抱えたアレクは、それはもう楽しげにロイを眺めていた。
そうしていると、後ろからドアの開く音が聞こえてきた。

「痛いなぁ、急に閉めるなよ。かすったじゃないか」

少し赤くなった額を片手で抑えながら話す父さんにアレクは一言「すみません」と告げたのち、俺を抱えたまま父さんの元へと歩み寄った。
だからなんで俺を抱えたままなんだよ!降ろさないのか!?
そう言いたくても、この異様な空気感の中では無理な話だった。
そうして父さんを前にしたアレクは、ロイをチラとひと目見て。

「団長、あいつ熱ありますよ」

驚いた。まだアレクに熱のことは言っていないはずなのに、ロイの様子がいつもと違う事に気づいてたんだな。⋯やっぱりアレクってロイのこと好きだよなぁ。教え子だからかいつも何かとロイにはツンケンしてるけど、ちゃんと見てる。

アレクの言葉を聞いた父さんはロイの額に手を当て、それが本当だと確認すると、すぐさま広間の団員に呼びかけロイの看病を最優先にした。こうしてロイの発熱は騎士団全体に瞬く間に拡散されることとなった。









「こんなに暗いと目、悪くなりますよ」

栄養の取れる夜食、冷えたタオルで体温を下げる――騎士団員の不器用ながらも的確な対応によって、あの後すぐに眠りについたロイをしばらくの間見守っていた俺は、急に背後から聞こえた声に対して体をビクつかせた。
読んでいた本を閉じ、隣の椅子に腰掛けるアレクを見つめる。
夜の訓練帰りなんだろう、アレクの着ている服に少し泥がついていた。そういえば、最初はアレクに汚れの一つも付けられず自身の力不足を嘆いていた団員たちも、最近は着々と力をつけているって父さんの手紙にもあったっけ。
そんなことを考えていると、ふと、アレクと交わしたある約束を思い出した。

「アレク、イチ⋯⋯003についてはいつ教えてくれるんだ?」

イチ――風魔法を使う裏世界の人間で、なぜか俺を好いている。
イチに関して、俺は誰にも言わなかった。ロイにも、先生にも。試合場から学校に向かう前、アレクから誰にも言わないよう約束したからだ。家に帰った時に詳しく話すという条件付きで。

俺の問いに、アレクは「明日の午後でも良いですか」と言葉を返した。

「分かった⋯⋯あれ、でも明日は訓練休みだよね、何かあるのか?」

そう言いつつ、ロイの額のタオルに触れ、手に取った俺は、そっと立ち上がり机の上に置かれた氷入りの水にタオルを浸し込んだ。
遠くからでも聞こえる大きなため息と共に、アレクが口を開いた。

「⋯⋯明日は朝から団員達と市街地に行くんですよ、在庫切れの治療薬を買いに。ここを出る前散々買っておけと言ったはずなんですがね。それに、解熱剤ももう数があまりないので買いだめしておこうと思って」
「帰ったら仕事の書類を片付けないといけないので、もしかしたらあいつの話は夜になるかもしれません」

ロイの額に冷たいタオルを乗せ、再び椅子に腰掛けた俺は、組んだ足に肘を乗せながら愚痴を溢すアレクに対し、軽く懐かしさを覚えていた。
出会いたての頃の、端正な顔立ちとはかけ離れた、どこぞの不良っぽい言動をするアレクもこんな感じだったなぁ。今ではあんまり見なくなったけど。
ていうか寮生活だと全然会うこともないし⋯⋯⋯って、あぁそっか、しばらくはここで暮らすんだよな。⋯⋯あれ、そういや俺の机の中って魔法式の道具あったっけ⋯?春の時一回帰ってきたけど、そん時はしばらく帰ってこないからって一式寮に持ってった気がする。⋯⋯てことは、今俺が持ってるのが全部ってことか!?

「なぁアレク!その買い物、俺が行っていい!?」

一瞬、嫌な予感が脳裏をよぎったものの、この夏を謳歌するため、俺は勢いよく申し出た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

BLゲームの悪役に転生したら攻略対象者が全員ヒロインに洗脳されてた

BL
主人公のレオンは、幼少期に前世の記憶を思い出し、この世界がBLゲームで、自身は断罪される悪役だと気づく。 断罪を回避するため、極力攻略対象者たちと関わらないように生きてきた。 ーーそれなのに。 婚約者に婚約は破棄され、 気づけば断罪寸前の立場に。 しかも理由もわからないまま、 何もしていないはずの攻略対象者達に嫌悪を向けられてーー。 ※最終的にハッピーエンド ※愛され悪役令息

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??

雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。 いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!? 可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?

生まれ変わったら俺のことを嫌いなはずの元生徒からの溺愛がとまらない

いいはな
BL
 田舎にある小さな町で魔術を教えている平民のサン。  ひょんなことから貴族の子供に魔術を教えることとなったサンは魔術の天才でありながらも人間味の薄い生徒であるルナに嫌われながらも少しづつ信頼を築いていた。  そんなある日、ルナを狙った暗殺者から身を挺して庇ったサンはそのまま死んでしまうが、目を覚ますと全く違う人物へと生まれ変わっていた。  月日は流れ、15歳となったサンは前世からの夢であった魔術学園へと入学を果たし、そこで国でも随一の魔術師となった元生徒であるルナと再会する。  ルナとは関わらないことを選び、学園生活を謳歌していたサンだったが、次第に人嫌いだと言われていたルナが何故かサンにだけ構ってくるようになりーーー? 魔術の天才だが、受け以外に興味がない攻めと魔術の才能は無いが、人たらしな受けのお話。 ※お話の展開上、一度人が死ぬ描写が含まれます。 ※ハッピーエンドです。 ※基本的に2日に一回のペースで更新予定です。 今連載中の作品が完結したら更新ペースを見直す予定ではありますが、気長に付き合っていただけますと嬉しいです。

処理中です...