俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬

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夏休み編 ー東の街カルディナー

第三十九話 : 誘拐

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――――なんだ、この匂い⋯⋯あんま嗅いだことないけど、花の匂いか?すげぇ落ち着く



―――あれ、妙に揺れるな⋯俺、馬車乗ってたっけ⋯⋯?



まどろみの中、ゆっくりと目を開ける。ぼやけた視界のまま、辺りを見渡すも、緑はおろか、光すら見えない視界に徐々に違和感を覚え始める。
しばらく回らない頭で考えた後、俺はやっと、今の異質な状況に気づき始めた。

ここはどこだ⋯?

上下左右が石壁で囲まれた、薄暗い通路。かろうじてついている天井の魔導灯は、チカチカと残りの寿命を示していた。窓も一切なく、光が差し込まないここでは、長い通路を連なって照らす魔導灯は重要な存在だというのに⋯⋯

いや、そんな事どうでもいい。今は、それよりも―――


なんで俺はリュウにおんぶされてんだ!!?


いや、えっ、なんで。え、何この状況⋯⋯⋯⋯⋯ていうかこれ、じゃね?

少し記憶が曖昧だけど、そうだ俺、突然全身の力が抜けたかと思えば、急に気持ち悪くなって⋯⋯あれは、リュウの仕業だったのか?だとしたらいったいどうやって⋯⋯何か唱えてるようには見えなかったけど。

リュウの肩を枕代わりに顔を横に向けていた俺は、目線を通路から、目の前のリュウに移す。本当は今すぐにでも飛び降りて、正面から「ここはどこだ」と言いたいものの、何かの魔法をかけられたのか。体はピクリとも動かせず、目だけが自由に動かせる状態だった。それでも見える範囲に限界はあり、若くツヤのあるリュウの肌を見つめるか、通路を眺めるかの二つしかない状況で、俺は目を閉じる選択をした。

ていうか俺、このまま殺されたりしないよな⋯?
間違いなくリュウは最初、俺を殺す気でいた。しかし、俺が時間停止をしてからというもの、急に顔色を変えては興奮気味に“欲しい”宣言をしてきた。
それに、そのまま殺す気だったのならあの場で殺してるはずだ。誰も見ていない、すぐには気づかれることもない。そんな中、わざわざここまで()運んできたという事は、殺す以外の目的を見つけたからだろう。

⋯⋯なんだろう。イチといいリュウといい、なんで俺にはこうも変人が寄ってくるんだ。イチは未遂だったものの、リュウに限っては本当に誘拐するし⋯⋯⋯でもまぁ、一応知ってる仲だからか意外と冷静でいられるな。
あれ、そういや、レンはいないのかな?声も聞こえないし、今はリュウと俺以外いないのかも。
くっ、せめてもう少し可動域が広ければ⋯⋯

そんな俺の考え事を聞いていたかのように、後ろから突然見知った声が聞こえてきた。

「なぁりゅう、そいつが起きてんの知ってんだろ?」

びっ⋯⋯くりしたぁ、そうか、後ろにいたのか。全然足音、聞こえなかったな。

「うん、気付いてるよ」

そう言ってこちらに顔を向け「おはよう」と囁くリュウ。レンの声にびっくりして目を開けた俺は、こちらをまじまじと見つめるリュウと、互いに見つめ合う形になっていた。

「どうせもうすぐ着くし、このままでもいいかなって」

⋯着く?一体どこに?

そんな困惑の色を読み取ったのか、リュウはいきなり左を向いた。
そんな俺も、リュウの顔越しに、左側の壁を見つめる。
何があるのか、と好奇心が恐怖よりも勝っていた俺は、リュウの見つめる方向を一心に向いていたが、それもすぐに後悔に塗り替えられた。

俺が見たもの。それは、檻に入れられ、精気を失った人間だった。
それも何人も。ボロボロに傷んだ髪、薄汚れた服、ガリガリの体。皆、魂が抜けたように倒れ込んではブツブツと声を漏らしていた。

檻は、ちょうど長く狭い通路から出た、溜まり場のような場所に設置されていた。だいぶ広いはずの場所なのに、先程通っていた通路よりも更に狭くなったことからも、檻の広さが分かる。

しかし、こんな悍ましい光景を絶対目にしたにも関わらず、リュウは何事もなかったかのように檻の前を通り過ぎたと同時に視線を前へと戻した。後ろについてきているはずのレンも、何一つ声をこぼさなかった。まるで、当たり前の光景のように、二人はなんら反応も見せなかった。

⋯⋯これは、尋常じゃない。

目を閉じ、先程の光景を忘れようと必死に別の事を考える。それでも強烈に脳に焼き付いた景色というのは、そう簡単には消えてくれなかった。そんな迫りくる記憶の中で、俺はふと先程の景色にどこか既視感を覚えた。
薄汚れ色が濁ってはいるものの、見覚えのある青色の生地に肩の装飾。茶色いベルトは、そんじょそこらじゃ見かけない上質なもので、重厚な光沢が無意識に記憶に刷り込まれていた。
黒い靴、ちぎれた剣差し⋯⋯間違いない、あれは騎士団の団員だ⋯!!!
しかし何故ここに?他の人に比べて、比較的小綺麗だったから無意識に脳が記憶していたものの、気づかなかったらどうなっていたか⋯⋯⋯もしかして、あの人が、リュウが引きずっていた団員か⋯?

一つの記憶を手がかりに、芋づる式に考えていると、突然リュウが足を止めた。

「ここだね」

そう言って、リュウは目的地の方へ体を向ける。一方俺は、頭が横向きのため、目的地がどこかすら見えていない。そうしていると、リュウはレンを呼び、自身の首に掛かった鍵を取らせた。
口も手も動かない。逆らう術がない。リュウが手を離せば、俺はこのまま床に転がるだけだ。

ガチャ

レンが鍵を開ける。
ふと、先程の光景が、再び頭の中に浮かび上がってきた。一種のトラウマのように、しきりに映し出されては中々消えないこの記憶に、俺はハッとした。

そうか、俺もあそこに入るかもしれないのか⋯⋯どこか俺は大丈夫だと、そう思っていたが、あれを平気でスルーするようなやつらに俺の常識は通用しないかもしれない。となると、俺が今から入るのは、檻―――


嫌だ、怖い、どうしよう。


脳の中が警報で満たされる。早く、入れられる前に逃げなくちゃ―――
瞬間、

パチン

とリュウが指を鳴らす。同時に、俺はひどい脱力感を覚えた。いきなり戻ってきた重力に、体が追いつかないらしい。
俺を降ろすため手を離そうとするリュウの体を、両手でガシリと掴む。

「ま、まだ待って欲しい」

今降ろされたら地面に倒れる、まだ檻には入りたくない。どちらの考えから出た言葉かは分からない。咄嗟に出た言葉がこれだった。

するとリュウは、少し歩いた後、俺をベッドの上に座らせた。安定したその座り心地に、俺は安堵のため息を漏らすと同時に、辺りを見回す。どうやらここは、檻ではなく一つの部屋だった。
寮の部屋より少し小さいここは、見渡す限りベッド、机、椅子⋯⋯と人一人ひとひとりがちょうど住めるほどの家具で構成されていた。
窓がなく、ドアに鉄格子があること以外は、王都にある安宿の一室とあまり変わらないかもしれない。

ベッドに腰を下ろす俺の横には、リュウが座っている。
横のリュウと前のレン、二人から監視されている俺は、一刻も早くここから逃げ出さないといけない。

⋯⋯掛けていた鞄もポケットの中の魔法式も取られている。これは俺、逃げられるのか⋯⋯?
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