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夏休み編 ー東の街カルディナー
第三十八話 : 残り時間 20秒
しおりを挟む存在は知ってても、なんで魔力を感じる事ができるんだ―――
そう言おうとした口を、塞ぐようにレンが声を荒げた。
「は、はぁあっ!?おい龍、どういうことだ!?」
後ろから飛びかかってきたレンに、リュウが少し体勢を崩した。
「僕も理解が追いついてないよ。けど、確かに感じるんだ。あの、独特な魔力を」
後ろにくっつくレンをなだめつつも、リュウの視線は俺の頭から爪先までをまじまじと見つめていた。
すると、レンがリュウの耳元に口を近づけ、小声で話す。しかし動揺しているのか、その声は大きく、俺の耳にもしっかりと聞こえるものだった。
「ってことは、こいつも俺等と同じ―――」
「いや、違う。彼が使ったのは時間停止魔法―――純粋な、古代魔法だ」
レンの会話を止めたかと思えば、再び出てきた「古代魔法」という単語に、指先がピクリと反応した。
「純粋な、って⋯おい、それって⋯⋯⋯!」
「あぁ、⋯⋯欲しい⋯⋯⋯!!!」
リュウの、興奮を孕んだ声と表情に、俺は一歩後ずさった。
「だけど龍、俺、武器が⋯!」
「分かってる。僕がやるよ」
そう言うと、リュウは何の武器も持つことなく、丸腰でこちらへと向かってきた。
リュウは、俺が時間を止めたことを疑っていない。何か証拠があって、確信しているんだ。古代魔法を使ったこともバレている。でないと、それらの単語自体出てこないはず。
それに、純粋な古代魔法ってのは、一体⋯⋯
「何も持たなくていいのか?」
転移魔法の準備完了まで残り二十秒。防御壁ももう壊れる寸前。あと少しなんだ、時間を稼がないと。
「うん。僕、武器は使わないんだ」
ということは、魔法か素手⋯⋯いや、リュウは黒髪。平民の出だと考えると、魔法式を出す様子もないし、素手である可能性が高い。
素手相手なら、防御もギリギリ持ちそうだ。
良かった、どうにか間に合いそう―――――
グラリ。
「⋯⋯あ⋯?」
足の力が抜け、地面にへたり込む。先程までなんとも無かったはずの上半身は重くなり、俺の体は地面に突っ伏す形となった。
なんだ、これ⋯⋯は、え⋯⋯⋯今、何かされたのか⋯?いや、そんな素ぶりは一度もなかった。レン⋯は違うか、とっくにやってるだろうし。
⋯となるとリュウ⋯⋯いや、第三者って可能性も⋯⋯⋯
やばい、頭が回らない。せめてもと無理やり顔を上げ、辺りを見回すも、グニャリと曲がる視界によって、すぐに断念することとなった。
「あれ、なんか魔法かけてた?仕方ない、もう一度するか」
「⋯⋯あぁ゛」
直後脳を掴まれ、激しく揺さぶられる感覚が、全身に響き渡る。
声を出したくても、出せない。体は金縛りにあったように、ピクリとも動かせなくなっていた。
抵抗もできず、ただひたすら襲いくる苦痛を受けとめる。
⋯⋯くそっ、何が起こって⋯
⋯やべぇ、意識が⋯もう⋯⋯⋯
徐々に遠ざかっていく意識の中で、微かにリュウの声が聞こえてきた。
「あぁ、レイ。安心して、僕が襲ったのは、あの二人じゃないから」
あの二人⋯⋯セリウス、ダレンは無事、ということか⋯⋯?
「ーーじゃあ、おやすみ。いい夢を」
そんなリュウの言葉を最後に、俺は意識を手放した。
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