俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬

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夏休み編 ー東の街カルディナー

第四十三話 : コウという男

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こんな事なら、いっそ体に防御用の魔法式でも書いときゃよかった。
知らぬ間に、護身用で常時張っていた防御壁が壊されていることに、俺はさっき気がついた。
俺に敵意を向ける相手の攻撃を感じたら現れるように設計された防御壁は、一応俺が意識を失っても発動されるようになっている。つまり、俺が気絶して運ばれる間に壊されたということか。

ってのは、今はどうでもよくて。

このってやつは、何をしようとしてるんだ⋯?

一人用のベッドに乗り込んだ挙げ句、仲間(二人は仲間なんだよな⋯?)の制止も聞かず、俺を睨みつける男。猫のように縦に鋭い瞳により、その冷たい眼差しはより圧を増していた。

ベッドの縁ギリギリだった両膝を、前に。
すでに壁に張り付いていた俺はこれ以上下がる事もできず、せめてもと自分の身体を守るように体を横に向け、うずくまった。

“やる”って言ってたが、何をするんだ。
もしかして、⋯⋯洗脳魔法か⋯?いや、有り得る。洗脳魔法を使えるやつがいるかもいれない以上、このコウって男がそいつの場合も十分にある。

嘘だろおい、もしこの男が本当に洗脳使いだったら、いよいよ逃げることが不可能になる。
どのくらい洗脳できるかは分からないが、自分自身の事や過去の記憶を忘れた場合、こいつらに対する警戒心や、脱出しようという気持ちも忘れてしまうかもしれない。
それはまずい⋯!!!

「なぁレン!こいつをなんとか―――」

なんとかしてくれ。顔を上げて言う。しかし、そう言い終わる前に、コウの右手は俺の首を掴んだ。
少し力を入れられ、血管が脈打つのが分かる。


クソッ、ここまでか⋯?
せめて、せめてあの捕まえられた団員だけでも逃がすことが出来たら⋯⋯

コウが詰め寄り、距離が縮まる。身を丸め、目を瞑りった俺は半ば強引に覚悟を決めた。
暗闇の中。俺は、自分に何が起こるのかを考えずにはいられなかった。
しかし、次の瞬間には、その考えは一気に吹き飛ばされていた。

ざりっとした感触が、首の横筋を、上から下へ一直線になぞる。それを、二回、三回。
出そうになる声を抑え、勢いよく顔を上げた俺は、犯人と思われる男に目をやった。

コウは、俺と目が合うやいなや、舌なめずりをした。
いつの間にか口あては下にずらされ、端正な顔面がさらに強調されている。
しかしその顔がこちらへ再び迫りくるように見えた俺は、体勢を直し、コウを体の正面で捉えた。

これで舐められることは無いだろう。

そう思ったのも束の間、今度は両手首を掴まれ、壁に体ごと抑えられてしまった。座った体勢という事も相まって、思うように力が出ない。
こうなれば、と繰り出した足技も軽く避けられしまった。
今一度体を前に寄せ、俺の両足が、コウの体を挟むようにセッティングされる。
いつしか両手は片手のみで縛られ、もう片方の手は俺の顎をがっしりと掴んでいた。

そして、コウは再び俺の首を舐め始めた。
必死に抵抗するも、手や顔は固定されて動けないし、足だってコウの体を挟む以外できない。
逃げられない、この男から。

「ひっ⋯⋯うあっ⋯⋯」

抑えようとしてもつい出てしまう声に、顔が赤くなり、涙ぐむ。
先程までの不安は消え去り、頭の中は、今や恥ずかしさ一色に染められていた。

「いっ―――」

すると、突然立てられた歯に体がビクリと跳ね上がる。

おいおい、ヴァンパイアかよ!!?

あまりに予想外の行動に、俺はツッコむことしか出来なかった。

血が流れる感覚と、何かが流れ込む感覚。
俺の首に一心に噛みついては、未だに離そうとしないコウに、なぜ離さないのかと疑問を覚える。

⋯⋯コウのやつ、血を飲んでるとかは無いよな⋯?
それか、洗脳魔法は特殊な魔法。何かしらの材料や条件があるのかも。
⋯いやでも、飲む必要は無いだろ。

⋯⋯ヤバいな、こう呑気に考えてる場合じゃないかもしれない。
勢いよく抜けていく血は、徐々に俺の体の力を抜いていた。
抵抗する気力も、何かを思考することすら、結構難しくなってきた。

しかしそんな事はつゆ知らず。コウは一心不乱に俺の首を食らいついていた。

⋯⋯これ、気絶コースか?

不意に、コウの背中越しにいる男に目がいった。
レンはこちらの視線に気づくと、同情の目を俺に向けた。
どうやら、コウのこの行動に対して、レンは快く思っていないようだ。

だが、そのレンの視線もすぐに別の場所へと移動した。
それはとても酷く驚いたもので、コウに抑えられて一切動けずにいるこの状況を少々恨めしく思ったが、その考えもすぐに去っていった。

「⋯⋯こう⋯?」

爽やかで明るい声。ここに来る前にも後にも聞いたその声は、そちらを見ずにとも、誰のものだかすぐに分かった。

これは、助かったと思っていいのか⋯?

リュウの声を聞いたコウは、ようやく俺の首から口を離した。


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