ルイヨウ

小屋瀬 千風

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先生

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スタスタスタ………
僕は学校の中を歩き回った。出来るだけ授業に出る時間を減らしたかったのだ。

「それにしても、いつも先生がいない所は本当に先生がいないな。見回りをしている先生ぐらいはいると思ったんだが……」

僕は後ろを確認した。

「ふぅ、もうさすがにいないよな。あのツーンとくるような視線、怖かったなぁ。知らない人ってのもそうかもしれないけど。」

僕は小さい声で独り言を言いながら廊下を歩いた。
多少授業に遅れてもあの見知らぬ男の人のせいにしたらいいと思った。少しあの人には悪い気がするけど、、、
で、でも、あの人が僕を連れて行ったのは皆見てるし………。

「やっぱり少し悪いかなぁ。」

僕は少しだけ、あの男に罪悪感を覚えながら、「ちょっとだけにしとくか、廊下歩くの。」
と思った。

その時だった。

「よぉ、素直にあのまま教室まで戻ると思ったのによ、まさかこんな、お前の教室まで遠いところまで来やがって」

「なっ!?」
(なんでここに!?ありえない!だって僕は学校校内地図の端っこの方に、本当に誰も気づかないような所にある廊下を通っていたはず。
しかも、早歩きで。僕が最後にこの人を見た時、結構距離が離れていたはずなのに。
普通ここまで来るのって結構時間が、)

「なんでここにいんの?」

「…………………」

「ねぇ!俺聞いてんだけど!きーみーに!」

「……………………」

「はぁ、しゃーねぇ、どうせもうすぐっていうかもう授業始まってるしよ、少年よ!少し俺に付き合え!」

「…………え?」

スタスタスタ………
トットットッ………

廊下に二つの足音が鳴り響く。
僕とこの人の足音だ。
僕の隣にいる、見知らぬ男。その人が軽はずみに歩いているのを僕は見ていた時だった。

「なぁ、お前。結構弱いな。」

「え?」

「いやさぁ、俺は一応ここの学校の、まあ、いわば先生の一人みたいなもんなんだよ。でさ、この学校で働いているってことで、他の先生とか、いろんな先生とかと話すんだけど、この前っていうか去年にこの学校、体力測定みたいなのあったろ、その時の君の一個下の学年、まぁ、今の二年の平均をこの前この学校の体育教師から見せてもらってよ、何でも、また今年もあるから、この結果見てアドバイスあるか的な事聞かれて、どの平均も全国の平均より少し超えてるし大丈夫だろみたいなこと言ったんだよ。」

「はぁ、、、」
(君は一個下の学年よりも力が弱い奴ってことを言いたいのか!?言いたいのか!?人が少しだけ気にしてることを!!!)

「でも君、俺がお前の手を掴んだ時、振り払っただろ。けどそん時、力強くない俺でも振り払われずに捕まえられたからさ。」
「いやぁ、俺って結構力弱い方なんだぞ、これでも。皆この性格で気づいてないかもしれないが!!!」

「そ、そうなんですね。」
(結局、何が言いたいんだこの人………!!!)

「俺は力が弱い。君も弱い。つまり、仲間だ俺たち!!!」

「は、はぁ~~~!?」

僕はおとなしい。子供の頃からそうだった。けど、そんなおとなしい僕もこの変な男のそのセリフからは、反応せざるを得なかったんだ。

「そもそも僕、あなたの名前、知りませんよ!」

「え?まじで?」

「はい、ホワイトハッカーがこの学校にいるってことも、そのホワイトハッカーの顔を見るのも今日初めてのことなんですから。」

「え!担任の先生とか何か言わなかったの!?」

「はい。そういう話は一回も。」

「うーーーーーん、なら、今から俺について教えてやる!」

(え……………)

「俺の名は葉柴 夕(はしば ゆう)!」

「えっ!?」

「驚くのも無理ないよなぁ、俺と君は苗字の読みが一緒だ。まぁ、漢字は違うが偶然の一致!すげぇよな!」

「そうなんですね。…………………っていや、なんで僕の名前知ってるんですか!?」

「ん?ああ、一応ここに通っているすべての生徒の名前と顔は覚えているぞ!あぁでも、声は知らん。だってパソコンや書類で見て覚えてるしな。」

「!?」
(嘘だろ…ここの学校の生徒数、合計で三百人ぐらいいるんだぞ。それを全員!?嘘だろ………)
「あの、この学校、結構生徒数多かったと思うんですけど。」

「あぁ、三百四十七人、先生とかの大人を入れると三百六十人以上だったか。それがどうした?」

「どうした?って、三百人以上の名前と顔を覚えてるって。じゃあ、寮の人達は、ここの学校には寮制度もある!」

「もちろん、寮に住んでる人も覚えてる。」

「………………」
(この人頭おかしい、絶対に、絶対に!!!)

「ま、まぁ、一旦この話は置いておきましょう。夕さん、いや、葉柴先生、もう一時間目終わってしまいそうなんで、こ、これで失礼しま………」

「ちょっと待てよ~、羽柴君?いや、瑠衣くん。俺の名前、葉柴先生だと、君も先生みたいになるだろぉ、それだとさぁ、だから夕さん!それか夕先生!さあどっち?選んで!」

「え、えっとじゃあ、もう教室戻りますね、
夕先生。」

「おう!」
「場所、分かるか?」

「はい。それくらいは分かりますよ。では。」

「じゃ~な~!また休み時間でな~」

「えっ!?来るんですか~!?」
僕は夕先生は少しおかしい人だと思い、早歩きで自分の教室へと向かった。

「「羽柴 瑠衣」か………。」

「?」
何か夕先生がぼそっと言ったような気がした。
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