きっとあの世界には興味がないっ!

yumecycle

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1章

2話 きっとまなゾーンにはなにもない

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 -今朝、俺の個人的な用で彼女の寮を訪ねようとすると、扉の前で梨子と、クラスの男子が向き合っているのを目撃した。俺は思わず物陰に引っ込みしばらく見守っていると、男子生徒の頬が紅潮して間もなく。九十度のお辞儀と右手を差し出すと共に「好きです!」という言葉が飛び出た。
 俺は呆気に取られながらも、知り合いのこういう状況を見るのはなんだか悪いと思い、そのまま静かに立ち去った。

 梨子りこの方の答えは聞かなかったが、その後の朝食の調理の時間の楽しそうな雰囲気を見る限り、見事成就したのだろう。
 梨子はクラスでも可愛い部類に入り、男女問わず人気者だ。一方、その彼も容姿端麗、運動神経抜群と、どこぞの完璧野郎で女の子に非常にモテる。
 そんな男が、数いる女の子の中で梨子を選んだ。そんな幼なじみの幸せを祝おうじゃないか。
 だが、そう思っていても、俺の心のどこかでは本気で祝えない自分がいた。
 それは、羨ましいことからの嫉妬心とかではなく、もっと別の―

「…梨子はさ、いいよな。この林間学校を楽しめる相手がいてさ」

 その答えを出す前に、俺は口走っていた。

「え?どういうこと?」

 俺の唐突の発言に梨子は目を丸くする。
 -止めろ。これは、間違ってる。
 しかし、答えを求める俺の口は自分の意思と反し、次から次へと言葉を発してしまう。

「朝さ、あのイケメンと話してただろ?」

「あ、えっと、見てたんだ…?」

 -止めろ。

「良かったじゃないか、おめでとう。学校とか部活でも周りから認められてたし、お似合いだよ」

「な、何言ってるの、裕璃谷ゆりやくん?どこか…」

 -止めてくれ。

「小さい頃から彼氏欲しいとか言ってたもんな…まさか、それが今日叶うとはさ。もっと早くてもよかったんじゃないか?」

「ねえ…裕璃谷く……」

 -止めろって。

「梨子のことくらい、分かってるよ。ここで俺なんかと吊るんでないで、イケメン彼氏さんと、ここら辺にいるカップル達と一緒に、好きなだけイチャイチャしてくればいいんじゃないか?俺は一人で-」

 そこまで言って、急に口の動きが止まった。
 耳から微かに聞こえる嗚咽を、俺は聞き逃さなかった。
 恐る恐る、横目越しに視線を合わせると―

「…さっきから、何、言ってるの?…私のこと、分かってるとか…!全然、何も分かってないよ!」

「ぁ……」

 何年も幼なじみをやってきて、今までで見たことがなかった、クシャリと歪んだ彼女の顔を間近に目撃し、咄嗟に言葉がでない。

「ほんとは…ほんとは…!私、は……裕璃也くんの、こと……っ!」

 梨子は勢いよく立ち上がると、そのまま寮の方へと駆け出して行ってしまう。

 ―やってしまった。ここまで言うつもりもなければ、あんな顔にするつもりもなかったのに。

「はあ……」

 色々溜めていた息を一気に吐き出した。
 俺は一体何がしたかったんだ。ただ暇潰しのためだけにカップルだらけの林間学校に参加し、自分の不満をぶつけるために幼なじみを傷つけた。
 項垂れ、なんとなく左腕の腕時計に目が入る。もう結構いい時間帯である。ぼちぼち帰らねばならない。

「………」

 いつの間にか周りにいるカップルが増えていることに気づき、どうしたものか暫し考える。道沿いに行けば、間違いなくイチャイチャゾーンは避けられない。そんな所へ突っ込めば白い目で見られるに決まっている。

 なら、少々面倒くさいが森の中を遠回りするしか他ない。

 そう決心すると俺はゆっくり立ち上がり、その場を後にした。
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