きっとあの世界には興味がないっ!

yumecycle

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1章

7話 きっと袋の中はコントローラーが入ってる

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「やっと解放された…」

 見た感じ、怪しい奴は誰であろうとぶっ刺してやる、みたいな感じの門番だったが、実際はただの犬好きのおっさん。自分の犬の自慢話をたっぷり三十分ほど聞かされ、ようやく街に入ることができた。
 見渡す限りの人通りに、その間を行き交う馬車。外から見るより遥かに広い街で俺が立つ通路沿いには、売店やお店らしき建物がズラリと並んでおり、中央の噴水を境目に綺麗な街並みがどこまでも広がっている。
 本当に異世界の街というのは漫画とかゲームで見る景色そのまんまで、こんな事態になったというのに少しばかりの感動を覚える。
 しばし見入っていると、前方の人混みから見知った顔がひょっこりと現れる。

「お疲れ、タケモト。おっさんの自慢話はどうだった?」

「だからね?俺ユリヤ……って、ん?何でそのこと知ってんの?」

 今度は子犬姿ではなく、人間姿で登場したカトレア。手にはさっきまで無かった大きめの袋がぶら下がっている。
 俺の指摘にカトレアは、門の方に顔を向けながら話を続ける。

「あの門番の人、凄い犬好きでね?自分の犬の話始めたらしばらくは止まんないから。しかも、あそこを通る人通る人に話してんのよ。犬を飼ってるとしたら尚更ね」

「だから俺を飼い主に仕立てて、その身代わりにした、と……」

「そゆことー。さぁて、何から食べようかな~」

「………」

 あたりまえだと言わんばかりの態度に、なにか文句の一つでも言ってやりたいところだが、元を辿れば俺のせい。そのためあまり強く言えない。恐らく彼女はそのことを分かっててやっているのだろうから尚更質が悪い。
 俺の絶句と心配を余所に、袋の中をガサゴソしながらプラスチックの入れ物をいくつか取り出すカトレア。中身は焼きそばや焼き鳥、唐揚げなど祭りの屋台で出てそうな茶色い物ばかり。

「…なにそれ?」

「ああ、これ?お腹空いたからあちこちの店廻ってたのよ。ここ、お店がいっぱいあって迷っちゃうわよね」

―ぐ~

 カトレアの持つカロリー高めの料理の数々を目にして、自動的に俺のお腹が鳴る。
 そういえば、現実世界の方で昼ご飯のカレーライスを食べてから何も食べていない。既に喉もカラカラで潤したいところ。

「…あげないわよ?」

 そんな俺を見たカトレアは、軽くこちらを睨みながら食料達を守るようにして袋を抱く。
 さっきもそうだったが彼女には仲間意識というものがないのだろうか。これからの魔物とかの戦いの前に、飢え死にで人生終わってしまう。
 そうして彼女の頬張る焼きそばを羨ましげに見つめていると、不意に誰かとドンッと肩がぶつかる。

「あ、すいません」

「い、いえ…!」

 俺が謝ると、全身を黒いフードで身を包む男は急いでいるのか、どこか慌てた様子でそそくさと去って行った。
 現実の方であんな人がいたら怪しまれるだろうが、ここは異世界。なんの不思議もない。
 が、先程の門番との話とフード男と交わした言葉で一つ、疑問が出てきた。

「俺さ、思ったんだけど、ここって普通に日本語通じるよね。それに食べ物だって」

 俺が袋を指差しながら言うと、焼きそばを頬張るカトレアが割り箸をこちらに突き付けて答える。

「ま、食べ物とかは一部だけだけどね。日本にある崖から落ちたんだから言語は日本語よ…もぐもぐ」

「…ん?それって海外には海外の異世界があるってことか?」

「そ。異世界こっちの世界でいう外国は現実あっちの世界でいう外国と同じ。つまり、異世界は大陸全土で繋がってるってことね。因みに、種族も国によって違うわよ」

 カトレアはそれ以上話す気はないらしく、焼きそばを再びつつく。
 俺達は日本からこの異世界にやって来たため、言葉は日本語で通じるし、見る限り日本の種族は『ニンゲン』。これが海外から来るとなると、例えばアメリカの種族は『サラマンダー』で英語、ロシアの種族が『エルフ』だとして言語はロシア語、といった具合か。
 そのことを聞いて少し安心感が出たが、それ以外はやはり未知の世界。
 ゲームでは、俺がコントローラーで操作したキャラクターが操作コマンドに従って戦い、冒険していた。だがここは違う。俺自身が生身で挑まなければいけないのだ。
 そこまで考えてから重要な疑問がまた一つ。

「やっぱりここって異世界なんだからさ、俺の職業とかってあるの?」

「そりゃもちろんあるわよ。実は私、こう見えても召喚士サモナーだしね!」

「え…」

「なによ?」

「い、いや…」

 子犬に変身するだけだと思った。

「ま、丁度良いわ。仲間も欲しかったことだし、ギルドに行くわよ!」

「ちょ、待っ!」

 そうやって引っ張るのはやはり、手とか腕ではなく耳。

 痛い。
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