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1章
9話 きっとブランド物と鱈は高い
しおりを挟むほぼ男だらけの人混みを掻き分けていると、掲示板の前で腕組みをするカトレアの姿があった。
性格はあんなだが、一応は美少女。そんな立ち姿でも絵になるから不思議である。
「おーい、カトレア」
そう呼んでカトレアに軽く手を上げるが、聞こえてないのか、こちらに振り向く気配がない。
距離が距離なので近くに来てみると、カトレアは掲示板の貼り紙を一点に見つめ、口元はにんやりと笑みを浮かべているではないか。
「なに笑ってんだよ…」
「は?え、何?旅人(笑)のタケモト?一体どこ行ってたのよ」
「おい、なんか余計なフレーズ増えてないか!それと、どこ行ってたのかは俺の台詞ね!」
「だから、言ったじゃない。仲間が欲しいって。旅人(笑)だけが同行者だなんてあたしはごめんよ」
「うっ…」
確かに人数的に心許ないし、カトレアの戦力は知らないが、まともに戦ったこともなければまともに戦えない俺。これではこの先やっていける気が全くしないのは頷ける。
そしてカトレアはさっきから笑みを浮かべていたであろう貼り紙を指差すと、自慢気に言い放つ。
「この素晴らしい貼り紙さえあれば、仲間が一気に百人くらい増えること、間違いなしだわ!」
「なになに…?」
言われるがまま目を通す。
『私達サマンサダババサ部隊は超強いパーティメンバーを募集しています!今、私達の部隊に入ると総額百万相当のゴールドをプレゼント!さらにさらに!なんでも言うことを聞く奴隷、通称『タケモトくん』をお付けします!ぜひ我こそは、と言う人は明日の正午、ギルド前にお集まりください!PS.焼きそば食べたい』
「…なんだこれ」
「どう?我ながら素晴らしい文面だと思うんだけど」
「いや、どこがだよ!」
俺は掲示板を掌で叩きつけた。これは文面とかの問題ではなく、内容に問題がありすぎる。
「まず!サマンサダババサ部隊って何!誰かの名前!?」
「私の名前で私の部隊に決まってるじゃない。私の二つ名よ、いいでしょ?」
こんなどっかの会社みたいな二つ名があっていいのだろうか?
「あと!百万ゴールドなんてお前持ってるの!?」
「さっき食べ物代に使っちゃったし、あるわけないじゃない」
「じゃあこれ出鱈目じゃん!」
キョトンとした顔で本人は言っているが、ばれたらこれ、結構大変なことではないのか?
しかし、カトレアは被りを振った。
「出鱈目なんかじゃないわ。入ってすぐとは書いてないもの。いつかあげるわよ、いつかね?」
こいつ、汚すぎる。払うわけないとは思ってはいたが…。
だがこれは建前。最大の問題はこれだ。
「あとこれ!この奴隷のタケモトくんって間違いなく俺だよね?」
「え、他に誰がいるの?」
「当然の如く言うな!まず俺タケモトじゃねーし!奴隷なんてやらないからな!」
「あれ、あれれれ?そんなこと言っていいのかな~?誰のせいでこんなことになったんだったっけ~?」
「くっ……!と、とにかくこれは却下!」
「あ、ちょっと辞めなさいよ!」
俺が貼り紙を剥がそうとするのを、カトレアが食い止めてくるので必死で阻止してると、突如、ギルドの大きな扉がバンッ!と豪快に開かれる。
その場にいた全員が一斉にそちらに顔を向けると、そこには素朴な半袖半ズボンの一人の男性が息を切らし、肩を上下させている。
「なにがあったんだ!?」
さっきぶつかったギルドの代表格(?)っぽい爽やかなお兄さんが、ここにいる人達を代表して訪ねる。
男性は息を整えながら、切れ切れの言葉でこう言った。
「ぐ、グリード教団が、現れやがった…!」
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