きっとあの世界には興味がないっ!

yumecycle

文字の大きさ
12 / 30
1章

11話 きっと風呂に入んないのは仕方ない

しおりを挟む

「……あのさ」

「何よ?(笑)」

「既に名前じゃないんだけど!…じゃなくて!お前さっき戦うみたいなこと言ってなかったっけ?いつまで座ってるんだよ」

 そうなのだ。あれだけ担架を切っておいたくせ、ギルド内ががら空きになったにも関わらずカトレアは未だ、悠々と椅子に座っている。この様子では一歩も動く気配がない。
 俺の言葉を聞いたカトレアは、またもや溜め息を吐き出した。

「はあ……分かってないわね、だからここにいるんじゃない」

「?…何言って……」

「あんたはさ、教団退治に行かないの?ねえ?グリード教団の信者さん!」

「え!?」

 そう言ってカトレアが顔を向けた先-
 そこには、グリード教団がやって来たことをいち早く知らせに来た、半袖半ズボン男が居た。

「は?…君、何を言ってるんだ?」

「それはこっちの台詞よ。知ってた?ただの街の住民は、ここに知らせには来ないのよ。知らせるのは、常に外で見張っている門番」

 言われてみればそうだ。今までの教団の動きは、攻めて来ると言ったら外から。ワープ魔法を使った事例はないと言っていた。そのため門番の人が一番早く伝えないのはおかしい。
 それでも男は首を横に振る。

「それは、俺が門番から頼まれたからで-」

「なんなら、そこの受付の人に確認を取ってもらってもいいけど?」

 カトレアが、一階のクエスト受付のお姉さんを指差しながらそう言った、次の瞬間-
 男は突如、薄気味悪い笑みを浮かべ、次いて全身から黒いオーラを全面に放ち始めた。みるみる内に元の人間の姿は崩れて行き、変わりに、顔には真っ黒な仮面、全身は黒いローブで覆われる。
 そこまで見て俺は「あっ」と声を漏らす。

「…あの時の」

 その男は、カトレアの焼きそばを食べるところを見ていた時にぶつかった奴だった。あの時はなんとも思わなかったが、今見ると明らかに気味が悪い印象が目立つ。
 受付のお姉さん達の悲鳴が上がる中、仮面男はカトレアに問いかける。

「お前、いつから気付いていた…?」

「お前~じゃなくて、カトレア様と呼びなさい?あんた達の臭ーい匂いなんてすぐ嗅ぎ分けられるのよ!」

 なるほど、カトレアは犬だからか。それにしてもあいつ、臭いのか……。
 相槌を打ちながら鼻をクンクンさせていると、仮面男はカトレアの言葉を気にした様子もなく、紫の魔方陣らしきものを前方に展開し始める。

「何者かは知らんが…向かって来るなら手加減はせんぞ?」

「ふん!臨むところよ!私の召喚術を見せてあげるわ!」

 カトレアはガタッと勢いよく立ち上がると、くるりと一回転する。
 するとどういう原理か、カトレアの右手には、さっきまで無かった自分の顔の大きさほどの杖が握られていた。白を基調とした持ち手部分と、先端には宝石のようなものが埋め込まれている。それを握る姿は、さながら魔法少女のようだった。
 そのまま杖を下に向けると、今度は地面前方に水色の魔方陣が出現。目を閉じるとゆっくりと口を開ける。

「汝、我の名の元に具現し、その力を解放したまえ…」

「おお……」

 俺は感嘆の声が漏れた。カトレアのふざけたような姿ぐらいしか見たことのない俺は、真面目にやってる姿を目に、思わず見とれてしまう。
 なにより、実物の魔方陣を目の当たりにしたり、いかにもそれらしい詠唱を聞いたり、俺はさっきから興奮しっぱなしだ。
 詠唱が終わったのだろう、カトレアは目を見開くと同時に大きく杖を振る。

「いでよ!私の召喚獣!!」

 魔方陣は大きな光を放ち、辺りを照らす。そこから出て来たのは-
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※基本週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

処理中です...