きっとあの世界には興味がないっ!

yumecycle

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1章

13話 きっと耳を澄ますと悲鳴が聞こえる

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「ポコ!」

「………」

 俺は言葉を失った。

「いけー!ポコタン!」

「ポコー!?」

「ポコターンっ!…くっ、もう一回!」

「ポコー!?」

「ポコターンっ!…くっ、もう一度!」

「ポコー!?」

「ポコターンっ!…くっ、まだまだ!」

「ポコー!?」

「ポコターンっ!…くっ、ワンモア!」

「もういいから!」

「離して!私はポコタンの仇を打たなきゃいけないの!」

「そのせいで新たなポコタンが犠牲になってるんだよ!」

 尚も召喚を止めない彼女を、俺は必死に止める。
 現に、傷だらけのポコタンが地面に数体転がっている様は、可哀想というか、なんというか、かなりシュールな光景になりつつある。
 そして、これまでの過程を見ていた俺は薄々あることに気が付いていた。

「…まさかお前、ポコタンしか召喚できないんじゃあるまいな…?」

「はいいい?そんな訳ないじゃない!今日はたまたまなのよ!たまたま!」

「たまたまっていう時点でなんかおかしくね?」

 杖をブンブン振って否定するカトレアに疑いの目を隠せずにいると、

「信じてないわね?今に見てなさい…ギャフンと言わせてやるんだから!」

 そう言ってカトレアは杖を握り直す。
 嫌な予感しかしないが-

「ふざけるな!」

 そんなことを言ってられるのも束の間、敵は待ってくれない。
 俺達が雑談してる間に作り上げた仮面男の黒い波動は、容赦なく俺達に向かってくる。

「うわっ!」

「ちょっ…!」

 ぎりぎりのところで、なんとかそれぞれ左右へ回避する。

「あんた空気読みなさいよ!今からもう一回やるところだったのに!戦隊ものの敵の方がよっぽど賢いわ!」

 カトレアが仮面男に対し文句を言う中、俺は次の行動を探るべく仮面男の方を見る。しかし、そこに仮面男の姿はなく-
 変わりに「きゃー!」という女の人の悲鳴が受付の奥から聞こえると、そこから仮面男が顔を見せる。腕には悲鳴の根元と思われる、一階のクエスト担当の受付嬢ががっちりとホールドされている。

「この女を殺して欲しくなかったら、今すぐ投降しろ!さもなくば…分かってるよな?」

 脅しの言葉と共に、受付嬢の喉もとに手を当て、掌サイズの魔方陣を展開する。
 受付嬢のお姉さんは、今にも泣き出しそうな表情でカトレアに必死な視線で訴えている。

「カトレア…」

 本人もこの人質を捕られるという状況変化に苦しい表情を隠せない。なんだかんだ言えど、彼女は普通の人情というものがあり、優しさがあるのだ。俺としても、最悪なことだけは避けたい。
 大人しく投降するしかないのか…?と思ったら不意にカトレアは真顔になり、こう言った。

「やだ」

「は…?」

「え…」

「…貴様、今なんと言った」

「え?なに?聞こえなかった?い、や、だ、って言ったのよ。お分かり?」

 お分かんねえよ!何言ってんの!ほら見ろ!受付の人怒ってるよ!凄い目でこっち睨んでるよ!血走ってるよ!
 やはり駄目だ。カトレアは優しさ云々の前に人情の欠片もない。
 もう一度考え直すようカトレアを説得しようとした瞬間、カトレアは先にこちらへやって来ると、俺に素早く耳打ちをしてきた。

「時間稼ぎ、頼んだわよ」

「え…?まっ…」

 「待って」と言う前にカトレアは一歩後退してしまう。
 時間稼ぎって?戦えっていうのか?無理だろ。絶対無理だろ。
 俺が脳内パニックを引き起こしていると、先に仮面男が声を張り上げた。

「ふふふ……どうやら答えは決まったようだな?恨むなら、そこの女を恨めよ?」

「い、嫌…!」

「ち、ちょ、ちょっと待て!」

「なんだ」

 やばい。何も話題が浮かばない。

「えっと…そ、そう!俺が買うバッグはサマンサダババサなんだが…あなたは?やっぱりナイス派?アデデダス派?あ、もしかしてキーマとか!」

「恨むならそこの女を恨むんだな」

「嫌…!」

「あー!待って!タンマ!お願い!」

「…なんだ」

 まずい…仮面男ちょっと苛ついてきてるぞ?

「んーっと…そうだ!昼間!さっき俺とぶつかりましたよね?」

「それがどうした」

「なんで急いでたのかなーなんて…はは」

「お前に関係ない。恨むんなら…」

「はい!ストップ!まだ!まだ聞いてないことが…」

「なんなんだ」

 あー!仮面男と受付の人、明らかに怒ってる!受付の人に関しては眼球が飛び出るんじゃないかってくらい飛び出そうとしてるよ!

「うんと…ね?あれ…あれ…そう、焼きそば…美味しい?」

 俺としても限界を感じ始め、ちらりと背後のカトレアを見やるが、杖を片手にしたまま動く気配が全くない。
 何かの考えがあるのだとは思うが、そろそろ早くしないとまずいどころの話ではすまないぞ。

「ふはは…」

 だが、その時はかなり早く来てしまった。
 仮面男の薄気味悪い笑い声が突如聞こえると、受付嬢を地面へ振り落とし、魔法を発動するための詠唱を口に-

「つくづく馬鹿な奴等だな…遊びは終わりだ」

「い、いや…!助け…」

 受付嬢は拘束が解けたとはいえ、脚の力が入らず上手く逃げることが出来ない。
 唯一の戦力のカトレアも、動けない。
 助けを呼ぼうにも、誰も、いない。

 動けるのは、俺だけ…。
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