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第4章 ケズレルモノ
38-4 対岸とこちら側
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隈射目本部。そこにある居住階層の一つの部屋に、僕らは住むことになった。「お婆さんも含めて家族全員でということになるので広い部屋がいいだろう」と右柳さんに言われて、その通りの部屋に案内された。
地下十二階の三〇六号室。
その階自体に部屋が多くある上、三○六号室そのものにも部屋数は多かった。
案内されたあとでも、僕は会議室に入りびたり、話を聞いた。
調査はじりじりと進んでいるはず。でも、いまだ連中の宇宙船は見付かっていない。本拠地だけでも早く見付かればいいのに。その近くに奴らの船があるはず、それらが見付かればあとはもうすぐ解決――と、そう思いたいけど。実際どうなんだ……?
そう考えている時に会議室のドアが開いた。
振り返った僕の視界に入ったのは、鳥居さん。
室内を見渡した彼が、ここに僕がいると気付いた素振りを見せて――
「ああ、大樹くん、スマホ、GPS機能を取り除けたから」
と近付いてきた。
『ああそれか』と思って受け取る。
「じゃ」
鳥居さんはすぐにどこかへと去っていった。
この時には考えがまとまらなくなっていた。ほかに、考えて答えが出ることってあるのか?――よく分からなくなって頭を抱えた。
とりあえずスマホが帰ってきたし、実千夏と連絡を取っておこう。ただ、GPS機能がもうないから探られないと言っても確実とは言えない。実千夏側で誰かに聞かれるとほとんどの場合困る。だから口で話すのではなくチャットアプリを使うことにした。
これも不安要素がない訳ではないけど他人には気付かれ難いと思う、信頼できる相手に使うくらいならいいはず。
それに、実千夏が僕と繋がっていることを奴らはまだ知らない。知りえない。そのはず。
『荷物、勝手に自分で取りに戻ったよ。ほかはそのままにしといていいからね。それより今無事? 何も変なことなかった?』
と僕が送ると、しばらくして実千夏から返事が。
『心配してくれてありがと。私は無事だよ、今もう自宅に戻ってる途中。学校が休みになったの。それ以外のことはないよ、大丈夫。それと、荷物のこと、どうなってるか分からなくて要太くんが心配してた。もちろん私もだよ。要太くんには、荷物の心配しなくていいって言っといてあげて。私からは言う方法がないから』
『無事ならよかった。要太にそれ言っておく、教えてくれてありがとう』
こちらからはそう返しておいた。
今後、ある程度の期間、学校からの課題は、ネットやメールを通じて出されることになっているらしい。
『これからも無事でいてほしい、極力周りには気を付けて』
そんなことを書いて送ると、返事はこうだった。
『うん。大ちゃんもね。絶対無事でいてよ。絶対帰ってきて。普通に会えるのを、私、ずっと待っちゃうんだからね』
僕が帰ってこなかったら、っていう実千夏を想像して、切なくなった。今すぐ会いに行きたい。
でも今は会えない。近くにいると――それを目撃されると――実千夏が危険だから。そのことも送っておいた。
まあ、ほとんどの人が寝静まった夜になら、会えなくはない。そんな時だけだ、会えるのは。でも、もしかしたら――誰かの証言から実千夏が探られて見張られでもしていたら――そう思うと、会いに行くのはまずい、そんな考えがずっと頭にある。
こんな状況に慣れないと――。
そう思うと、しょうがなさで胸がぎゅっとなる。
溜め息を吐きたくなったその口で深呼吸をして、実千夏に言われた通り、要太にメールを送った。
『スマホとか鞄、回収しに行って今僕が持ってるから、そのことはもう安心してていいよ。要太も周囲に用心してね』
それへの返事はこうだった。
『それならよかった。誰かを利用されて持ち出されたかと思って心配だったんだ。俺も用心する。無事帰って来いよ』
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数分前。船に戻ってすぐだ。
地べたに這いつくばった姿であごと膝の痛みに耐えながら、俺は、作戦に失敗したと思って嘆いていた。フジミヤダイキの仲間の中に医療用マスクをした女がいたからだ。こちらと同じことをしている、あれはきっとルオセウ人。そのはず。
俺達は過激派と呼ばれているが、あの女は恐らく穏健派。そうだ、きっとそうだ。
『ナノセッソ! ワクロヤエルダ……ソプスズキダリュアク!』俺のこの言葉は、このマスクに取り付けた翻訳機能がオフになっていないために、翻訳されて俺自身の耳にも届いた。「あの女! 翻訳機……セットしていやがった!」そんな声になって。
こんな姿を見せる気はなかったが、こうなってしまってからでは強がっても無意味。半ば愚痴――そんな風に叫んだ俺の声を受け、型紙使いのあいつが俺を、しゃがんで見下ろした。妙なことを思ってんじゃないだろうな。
そしてそいつが、俺の耳の翻訳装置のボタンを押し、オフにして。
「リセコサムス、ケッゾハド。ズキナクァラムス、セウクニィタチヤイナ。ハドクス?」
聞き間違いではない。『作戦は、続行だ。やらないことは、損でしかない。だろう?』確かにこの意味に聞こえたんだ。
俺は否定できなかった。
――そうだな、ここまでやったんだ。俺は痛い思いまでした。やらない方が損だ。
だから「コハドラ」と返答した。
耳の方の翻訳機能をオフにされたせいで、マスク側では日本語に訳されたものの、俺には「そうだな」という意味の言葉がそのまま聞こえた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
会議室から藤宮家の面々が去ってのち、数分が経った頃、嘉納さんから俺に連絡が来た。嘉納さんはこう言った。
「風浦くん、あの番号に掛けてみてください。大樹くんのよく行く場所、住所、とにかく何でも知っている――とでもチラつかせ、直に会ってくれれば彼について話す……という風に誘い出してください。そして――」
指示内容を聞いて、俺が承諾。「分かりました」
すると嘉納さんは「では、頼みましたよ」と、いつもの丁寧な口調だ。
「ええ」
直後、すぐに通話が切れた。
それから俺はある一室に向かった。パソコンルームだ。そこで叫んだ。「鳥居! 左雨! どっちかいないか!」
ひょっこりと顔を出したのは左雨の方だった。
「ちょっと手伝ってほしい、音声解析が必要なんだ」
「分かりました」
彼女を連れて、まずは地下七階のコンピュータ機材倉庫に。そこでとりあえず現場で必要な機材だけを彼女が手に持った。
彼女を連れて今度はマギュート練習場へ。そこで奏多くんに連絡を取った。彼は家に帰っていたからだ。来てもらった。
頼み込み、消しゴムのゲートを利用させてもらう。人目に付かない場所にこの三人で向かった。
そこから更に郊外へ。
そして、人の寄り付かない公衆電話を使ってジャック犯の番号に掛ける。――というところで、音声の記録の準備を左雨が行った、とりあえずは小さな録音機で。
「オッケーです」
左雨に言われてから作戦決行。通話の最中は、奏多くんに辺りを見張ってもらった――。
……数時間が経ち、もう日も落ちている――のだが、その夜を実感できない地下に、俺達はいる。
会議室で一息吐いていた俺に、入ってきた歌川が。
「あ、風浦。あの番号に電話掛けたんだって? どうだったんだ?」
彼は船の在り処を地道に探索中だった。その探索から帰ってきたところでの今の言葉。
俺も俺でその類の調査を長い時間やっていて(歌川より早く切り上げて)今は休んでいる最中だった。だから先に会議室にいた。
彼に対しての返事だが、俺は首を横に振った。「駄目だった。すぐに切られたよ。音声からも奴らの居場所は分からなかった」
「そっか……。あー、ちなみにどんな風に切られたんだ?」
「奴らも『いい人ぶってる』からな――」
『捜査のため直に会うことはできない、情報を頂けることは嬉しいのですが、それだけは……』
「――ってな、らしそうなことを言われただけ。暗に拒否。奴らも用心してるってことだな」
「そうなのか。こんなことしでかして、大胆なんだか冷静なんだか」
歌川はそう言って首の後ろを上下に掻いた。
俺は奴らがなぜ会おうとしないのかと考えた。まあ、捜査されていることが分かっているからという理由はありそうなワケだが。
その理由とは関係なく、ほかにも問題を抱えているかもしれない。たとえば――
「ジャック犯も、イタズラ電話に苦労してるのかもな」
なんて。
俺の言葉でか、歌川は薄く笑った。
俺は付け加えた。「俺達の前に、警察も同じことをしてたのかもしれない。もしそうだったら、奴らが警戒して当然ってことにはなるのかもな」
歌川は肯いた。そして半ば呟くように。「警察は何か知らないのかな」
……一応、連携を取ったことのある嘉納さんに聞いてみた。警察に聞いてくれないかと頼むことになるかもという考えもあった。
結果、嘉納さんが俺に電話でこう答えた。
「この件に関して調査指揮権を持っているのは――警察内では警察上部の者ということになっていますが、彼らにその上から指示を出しているのは私です。私は何もせず様子を見るようにと言っています。言った通りならば何もしていないはずです」
「そうですか。ありがとうございました。では、何かあったらその時はまた。ええ。じゃあ――」
俺が通話を切ると、一緒に耳を澄まして聞いていた歌川は、深呼吸してから俺に。「ということは? この先どうすればいいんだ?」
「地道に調査していくしかないな」
俺も正直気落ちしていた。それが声にも現れた。
こちらのそんな声を聞いたからか、歌川の内心は溜め息に現れた――と思う。で、彼はあごに手を当てた。それから何やら気付いたらしい。
「ジャックの範囲の端を調べるってのはどうだ? そこから逆算するんだよ。この方法だと、こちらが派手な動きをしないで済む、気付かれずに――」
「あー、それなんだけどな」切って悪いが、と思ってから続けた。「電波ジャックの方法ってのがそもそも――イチェリオに聞いたんだが――あー……何やら特殊な方法らしいんだよ。んー、どう言ったらいいかな」
俺は頭を整理してから説明した。
「映像データの情報を電波に乗せて拡散する……そういう機械を、ドローンみたいにどこかへ予め飛ばしてから遠隔操作で起動できる、そういう物がルオセウにはあるらしい。『地球で言うテレビ』の電源がオフだったとしても強制的にオンにできるもので、本来は緊急避難用に使う物って話だ。でも、改造されて悪用されると、こういうことも起こるんじゃないか、と。『緊急強制放送の規模がほぼ同じだから恐らくそれだろう』だっけな、そう言ってたよ」
「本当にそうなのか」
「らしい。で、その予め飛ばされているであろう機械ってヤツが既に奴らの手元に戻ってるだけなら、お手上げ状態――そういうことらしいよ」
「マジか。……? じゃあ、それが手元に戻ってないとしたら?」
歌川は険しい表情を見せた。
俺はと言うと、そう聞いたあとで腕時計を見た。もうかなり暗い。こうなっては……。「確かにまだ隠されてる可能性もある。だから一応、調べてはみたらしい」
「ん?……あ、俺の言った方法とかで調査してたってことか」
「ああ、そういうことだ。ヘリでも監視した。でも、今度はヴェレンって奴だったかな、あいつが、『見付かりませんでした』とさ」
「そうかぁ……」
歌川は肩を落とした。首を傾けたのも、かなりの遣る瀬無さのせいに違いない。
地下十二階の三〇六号室。
その階自体に部屋が多くある上、三○六号室そのものにも部屋数は多かった。
案内されたあとでも、僕は会議室に入りびたり、話を聞いた。
調査はじりじりと進んでいるはず。でも、いまだ連中の宇宙船は見付かっていない。本拠地だけでも早く見付かればいいのに。その近くに奴らの船があるはず、それらが見付かればあとはもうすぐ解決――と、そう思いたいけど。実際どうなんだ……?
そう考えている時に会議室のドアが開いた。
振り返った僕の視界に入ったのは、鳥居さん。
室内を見渡した彼が、ここに僕がいると気付いた素振りを見せて――
「ああ、大樹くん、スマホ、GPS機能を取り除けたから」
と近付いてきた。
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「じゃ」
鳥居さんはすぐにどこかへと去っていった。
この時には考えがまとまらなくなっていた。ほかに、考えて答えが出ることってあるのか?――よく分からなくなって頭を抱えた。
とりあえずスマホが帰ってきたし、実千夏と連絡を取っておこう。ただ、GPS機能がもうないから探られないと言っても確実とは言えない。実千夏側で誰かに聞かれるとほとんどの場合困る。だから口で話すのではなくチャットアプリを使うことにした。
これも不安要素がない訳ではないけど他人には気付かれ難いと思う、信頼できる相手に使うくらいならいいはず。
それに、実千夏が僕と繋がっていることを奴らはまだ知らない。知りえない。そのはず。
『荷物、勝手に自分で取りに戻ったよ。ほかはそのままにしといていいからね。それより今無事? 何も変なことなかった?』
と僕が送ると、しばらくして実千夏から返事が。
『心配してくれてありがと。私は無事だよ、今もう自宅に戻ってる途中。学校が休みになったの。それ以外のことはないよ、大丈夫。それと、荷物のこと、どうなってるか分からなくて要太くんが心配してた。もちろん私もだよ。要太くんには、荷物の心配しなくていいって言っといてあげて。私からは言う方法がないから』
『無事ならよかった。要太にそれ言っておく、教えてくれてありがとう』
こちらからはそう返しておいた。
今後、ある程度の期間、学校からの課題は、ネットやメールを通じて出されることになっているらしい。
『これからも無事でいてほしい、極力周りには気を付けて』
そんなことを書いて送ると、返事はこうだった。
『うん。大ちゃんもね。絶対無事でいてよ。絶対帰ってきて。普通に会えるのを、私、ずっと待っちゃうんだからね』
僕が帰ってこなかったら、っていう実千夏を想像して、切なくなった。今すぐ会いに行きたい。
でも今は会えない。近くにいると――それを目撃されると――実千夏が危険だから。そのことも送っておいた。
まあ、ほとんどの人が寝静まった夜になら、会えなくはない。そんな時だけだ、会えるのは。でも、もしかしたら――誰かの証言から実千夏が探られて見張られでもしていたら――そう思うと、会いに行くのはまずい、そんな考えがずっと頭にある。
こんな状況に慣れないと――。
そう思うと、しょうがなさで胸がぎゅっとなる。
溜め息を吐きたくなったその口で深呼吸をして、実千夏に言われた通り、要太にメールを送った。
『スマホとか鞄、回収しに行って今僕が持ってるから、そのことはもう安心してていいよ。要太も周囲に用心してね』
それへの返事はこうだった。
『それならよかった。誰かを利用されて持ち出されたかと思って心配だったんだ。俺も用心する。無事帰って来いよ』
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数分前。船に戻ってすぐだ。
地べたに這いつくばった姿であごと膝の痛みに耐えながら、俺は、作戦に失敗したと思って嘆いていた。フジミヤダイキの仲間の中に医療用マスクをした女がいたからだ。こちらと同じことをしている、あれはきっとルオセウ人。そのはず。
俺達は過激派と呼ばれているが、あの女は恐らく穏健派。そうだ、きっとそうだ。
『ナノセッソ! ワクロヤエルダ……ソプスズキダリュアク!』俺のこの言葉は、このマスクに取り付けた翻訳機能がオフになっていないために、翻訳されて俺自身の耳にも届いた。「あの女! 翻訳機……セットしていやがった!」そんな声になって。
こんな姿を見せる気はなかったが、こうなってしまってからでは強がっても無意味。半ば愚痴――そんな風に叫んだ俺の声を受け、型紙使いのあいつが俺を、しゃがんで見下ろした。妙なことを思ってんじゃないだろうな。
そしてそいつが、俺の耳の翻訳装置のボタンを押し、オフにして。
「リセコサムス、ケッゾハド。ズキナクァラムス、セウクニィタチヤイナ。ハドクス?」
聞き間違いではない。『作戦は、続行だ。やらないことは、損でしかない。だろう?』確かにこの意味に聞こえたんだ。
俺は否定できなかった。
――そうだな、ここまでやったんだ。俺は痛い思いまでした。やらない方が損だ。
だから「コハドラ」と返答した。
耳の方の翻訳機能をオフにされたせいで、マスク側では日本語に訳されたものの、俺には「そうだな」という意味の言葉がそのまま聞こえた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
会議室から藤宮家の面々が去ってのち、数分が経った頃、嘉納さんから俺に連絡が来た。嘉納さんはこう言った。
「風浦くん、あの番号に掛けてみてください。大樹くんのよく行く場所、住所、とにかく何でも知っている――とでもチラつかせ、直に会ってくれれば彼について話す……という風に誘い出してください。そして――」
指示内容を聞いて、俺が承諾。「分かりました」
すると嘉納さんは「では、頼みましたよ」と、いつもの丁寧な口調だ。
「ええ」
直後、すぐに通話が切れた。
それから俺はある一室に向かった。パソコンルームだ。そこで叫んだ。「鳥居! 左雨! どっちかいないか!」
ひょっこりと顔を出したのは左雨の方だった。
「ちょっと手伝ってほしい、音声解析が必要なんだ」
「分かりました」
彼女を連れて、まずは地下七階のコンピュータ機材倉庫に。そこでとりあえず現場で必要な機材だけを彼女が手に持った。
彼女を連れて今度はマギュート練習場へ。そこで奏多くんに連絡を取った。彼は家に帰っていたからだ。来てもらった。
頼み込み、消しゴムのゲートを利用させてもらう。人目に付かない場所にこの三人で向かった。
そこから更に郊外へ。
そして、人の寄り付かない公衆電話を使ってジャック犯の番号に掛ける。――というところで、音声の記録の準備を左雨が行った、とりあえずは小さな録音機で。
「オッケーです」
左雨に言われてから作戦決行。通話の最中は、奏多くんに辺りを見張ってもらった――。
……数時間が経ち、もう日も落ちている――のだが、その夜を実感できない地下に、俺達はいる。
会議室で一息吐いていた俺に、入ってきた歌川が。
「あ、風浦。あの番号に電話掛けたんだって? どうだったんだ?」
彼は船の在り処を地道に探索中だった。その探索から帰ってきたところでの今の言葉。
俺も俺でその類の調査を長い時間やっていて(歌川より早く切り上げて)今は休んでいる最中だった。だから先に会議室にいた。
彼に対しての返事だが、俺は首を横に振った。「駄目だった。すぐに切られたよ。音声からも奴らの居場所は分からなかった」
「そっか……。あー、ちなみにどんな風に切られたんだ?」
「奴らも『いい人ぶってる』からな――」
『捜査のため直に会うことはできない、情報を頂けることは嬉しいのですが、それだけは……』
「――ってな、らしそうなことを言われただけ。暗に拒否。奴らも用心してるってことだな」
「そうなのか。こんなことしでかして、大胆なんだか冷静なんだか」
歌川はそう言って首の後ろを上下に掻いた。
俺は奴らがなぜ会おうとしないのかと考えた。まあ、捜査されていることが分かっているからという理由はありそうなワケだが。
その理由とは関係なく、ほかにも問題を抱えているかもしれない。たとえば――
「ジャック犯も、イタズラ電話に苦労してるのかもな」
なんて。
俺の言葉でか、歌川は薄く笑った。
俺は付け加えた。「俺達の前に、警察も同じことをしてたのかもしれない。もしそうだったら、奴らが警戒して当然ってことにはなるのかもな」
歌川は肯いた。そして半ば呟くように。「警察は何か知らないのかな」
……一応、連携を取ったことのある嘉納さんに聞いてみた。警察に聞いてくれないかと頼むことになるかもという考えもあった。
結果、嘉納さんが俺に電話でこう答えた。
「この件に関して調査指揮権を持っているのは――警察内では警察上部の者ということになっていますが、彼らにその上から指示を出しているのは私です。私は何もせず様子を見るようにと言っています。言った通りならば何もしていないはずです」
「そうですか。ありがとうございました。では、何かあったらその時はまた。ええ。じゃあ――」
俺が通話を切ると、一緒に耳を澄まして聞いていた歌川は、深呼吸してから俺に。「ということは? この先どうすればいいんだ?」
「地道に調査していくしかないな」
俺も正直気落ちしていた。それが声にも現れた。
こちらのそんな声を聞いたからか、歌川の内心は溜め息に現れた――と思う。で、彼はあごに手を当てた。それから何やら気付いたらしい。
「ジャックの範囲の端を調べるってのはどうだ? そこから逆算するんだよ。この方法だと、こちらが派手な動きをしないで済む、気付かれずに――」
「あー、それなんだけどな」切って悪いが、と思ってから続けた。「電波ジャックの方法ってのがそもそも――イチェリオに聞いたんだが――あー……何やら特殊な方法らしいんだよ。んー、どう言ったらいいかな」
俺は頭を整理してから説明した。
「映像データの情報を電波に乗せて拡散する……そういう機械を、ドローンみたいにどこかへ予め飛ばしてから遠隔操作で起動できる、そういう物がルオセウにはあるらしい。『地球で言うテレビ』の電源がオフだったとしても強制的にオンにできるもので、本来は緊急避難用に使う物って話だ。でも、改造されて悪用されると、こういうことも起こるんじゃないか、と。『緊急強制放送の規模がほぼ同じだから恐らくそれだろう』だっけな、そう言ってたよ」
「本当にそうなのか」
「らしい。で、その予め飛ばされているであろう機械ってヤツが既に奴らの手元に戻ってるだけなら、お手上げ状態――そういうことらしいよ」
「マジか。……? じゃあ、それが手元に戻ってないとしたら?」
歌川は険しい表情を見せた。
俺はと言うと、そう聞いたあとで腕時計を見た。もうかなり暗い。こうなっては……。「確かにまだ隠されてる可能性もある。だから一応、調べてはみたらしい」
「ん?……あ、俺の言った方法とかで調査してたってことか」
「ああ、そういうことだ。ヘリでも監視した。でも、今度はヴェレンって奴だったかな、あいつが、『見付かりませんでした』とさ」
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