落し物

超絶ラビリンスコーヒースライム隊長Lv3

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落し物

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「あの、これ落としましたよ」
 不意に声を掛けられた。
 優しそうな声音だったし、若い女性の声だったので下心丸出しの青春期真っ只中の高校1年生の体育会系の僕としては振り向かざるを得ない。
「何を落としましたか?」
 振り向きながら相手の容姿を一瞥しながら少し爽やかな声を作って言った。
 相手は僕が思っていた通り、若い女性で多分僕と同い年ぐらいだと思った。
「えっと、これです」
 その手にはあれが……。
 えっと……面倒臭い相手来たこれ。まあ、僕も面倒臭い性格だから言えないんだけど、僕より面倒臭い相手来たこれ。
「それ、僕のでは無いと思います」
 僕はもうその場を立ち去りたくて、言った。
「いいえ、これはあなたの持ち物ですよ。だってさっき私、いいえワタクシこの目ではっきりとクッキリと見ましたもの」
 少し胸を張って探偵の様に言う様を見て少し呆れる僕。
「見たって、そんなに偶然タイミング良く落とす所見える物ですかねえ」
「ええ、私視力6、0ですから!」
「いやマサイ族かよ」
「日本人です。メイドインジャパンの純日本人です! 和風美人です!」
「とうとう自分の事美人って言っちゃったよ」
「主観的にも客観的にも事実ですから!」
 確かに美人ではあるけども。それは認めるけども。
「でも、証拠は無いですよね」
「ええ、無いですわ」
「じゃあそれは僕の物とは言えないですよね」
「証拠は無いわ。でも確かめれば良いだけの話じゃない」
 彼女はそう言って僕の手を取ってある場所へ行くと言って歩き出した。
 着いた場所は。
「遺伝子分析機関……」
 そう彼女は僕が落とした髪の毛をわざわざ拾って僕に落とし物として届けようとしてくれていたんだ。
「分かったよ。こうなったなら徹底抗戦だ」
 僕は遺伝子分析機関に彼女と共に入った。
 そこで髪の毛を遺伝子分析にかけてもらう事にした。検査費は彼女持ちだ。
「検査結果が分かるまでしばらく日にちが掛かるみたいね。連絡先を交換しましょう」
「分かったよ」
 僕は彼女とラインの交換をした。
 検査結果当日、僕は彼女と駅で待ち合わせをした。遺伝子分析機関へと向かう為だ。
 彼女はナチュラルメイクで服装もオシャレをしていて、前に会った時よりも美しく見えた。
 遺伝子分析機関に着いて分析表を見る。
 検査結果は確かに分析にかけた髪の毛は僕の物だった。
「お見事だ。僕の負けだよ」
 僕は素直に負けを認めた。
「何を言っているの? 勝ちとか負けとか。私はただあなたが髪の毛を落としたからあなたに拾って届けただけなのよ。私は落とし物を拾っただけに過ぎないのよ」
「そうなんだ。でもわざわざ僕の髪の毛を拾って届けなくても。他にも色んな人が髪の毛を毎日100本とか落としているんだろ。人間1日100本ぐらい髪の毛落とすって言うし」
「そうね。なんでかしら。でもしいて言うならば私はあなたに髪の毛だけじゃなくて愛のハートも届けたかったのかも知れないわね」
 何この展開。まさかの逆ナンだったとは。
 しかし、僕のハートは彼女に撃ち抜かれた様な感覚に陥っていた。
「さあ落とし物も返したわけだし、この後ランチでもどうかしら」
「分かったよ。今日は僕が奢るよ」
 僕は彼女の手を取ると飲食店が集まる場所へと向かって歩き出した。
 僕はその後彼女と付き合い、やがて結婚をした。
 今でも僕の頭には彼女が落とし物として拾ってくれた一本の髪の毛が植毛してある。
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