【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希

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第二部

7 演奏会

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 四日間降り続いた雪は、屋敷の庭を、屋敷から見える世界のすべてを白銀に変えた。

 しんしんと降り積もった雪が世界を変えていくのが楽しくて、三階に位置する部屋の窓から飽きもせずディーノは毎日外を眺めた。時折外に出て雪に触れもした。

 ディーノにとって雪は珍しいものではなかった。生活と共にあり、寒くなれば降り積もるのが当然の、身近な存在だった。けれど、雪が降るとなんとなく胸が弾んでしまう。寒いし雪かきなど仕事がプラスされてしまうにもかかわらず、非日常のような気がして、わくわくしてしまうのだ。

 今は雪かきをしなくてよくなった。だから余計に心が浮き立った。

 風邪を引いてはいけないので、外に出る時間はほんの少しだけにした。

 一度だけ屋敷内で迷子になってしまって執事長に部屋まで送り届けてもらったけれど、今はもう玄関から部屋までの行き来も、宴の会場も覚えた。

 最初は館の広さに圧倒されたが、ある程度許された自由の中で館を冒険してみると、ひどく単純な構造であることがわかった。ただ単に威圧感のある空気に萎縮して、脳が軽いパニックを起こしていただけのようだった。

 ディーノたちの部屋は中庭を挟んだ玄関の真裏側にあり、宴の会場は玄関の左手側になる。三階の高さになる天井まで吹き抜けていて、天井や壁一面には華やかな絵が堂々と画かれている。玄関よりも華やかな場所だった。

 二階席が左右にあって、そこから舞台を見下ろすことも可能な造りになっていた。

 シャルレ・カリエール公爵夫妻が音楽や演劇好きで、五年の月日をかけて造ったこのホールで頻繁に演奏会やオペラや芝居を催しているという話を、何度か食事を共にして耳にした。

 様々なところで演奏をしてきた師匠も、このホールの広さや設備の良さに感嘆の声を上げていた。

 後数時間で宴は開始される。屋敷には招待客がぞくぞくと詰めかけ、屋敷の玄関前には馬車による渋滞の列ができていた。遠方から呼ばれた客たちは数日前から滞在しているため、屋敷内にも招待客はすでにおり、ホールや玄関はもちろん、着飾った男女で屋敷は賑わっていた。

 出演者の演目は、リュート以外にもチェンバロやヴァイオリンの有名な演奏家、オペラ歌手、バレエダンサー、人形劇師、手品師と様々だ。

 演目の伴奏や演目のない時間のBGMを演奏する楽団もいて、彼らは朝のうちに屋敷に出入りして準備をすませ、すでにホールや談話室、玄関ロビーなどで演奏をして招待客を出迎えている。

 チェンバロやヴァイオリン奏者たちは同じ階で部屋を借りており、ディーノたちがここについた翌日、挨拶を兼ねて彼らと食事を共にしている。皆が一度はここでの演奏を経験している人たちだそうだ。

 チェンバロは鍵盤楽器だが、リュートと同じでその音量は小さめ。ホールのあの広さに大勢の人が入って音が響くのかを心配していた師匠は、チェンバロ奏者から話を聞いていた。

 師匠の心配通り、小さな音量の楽器では舞台で演奏をしても後ろまでは届かないこともあるそうだ。そのため彼らはホールの中央に小さな舞台を作ってもらい、そこで演奏をしたらしい。今回もそうなるだろう、との話だった。

 その後、師匠は一度ホールでリハーサルを行ない、音の響き具合を確認している。が、招待客の人いきれや騒々しさがピンとこない、と首を傾げていた。
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