【完結】とあるリュート弾きの少年の物語

衿乃 光希

文字の大きさ
97 / 157
第二部

44 ロマーリオ(イレーネ目線)

しおりを挟む
 顔を上げると、視線の先にはロマーリオがいた。

 相変わらずのぐねぐねした髪の毛だけれど、洗いざらしの白いシャツを着ているとこざっぱりして見える。泥だらけで駆け回っていた子供の頃とえらい違いだ。

「おはよう。早いじゃない」

「なんか目が覚めちまった。ほら、俺って朝強いからさ」

 前のことを思い出し、イレーネは首を捻った。

「嘘だよ」

「どうしてそんな嘘を」

 イレーネは思わず笑ってしまった。

「ガキの時はずっと寝てたいって思ってたけど、今は朝早いんだ。ギルドごとに住む区画が決まってて、俺たちの居住区の隣がパン職人の居住区なんだよ。朝からいい匂いが漂ってくるから腹が減って目が覚めるんだ。今じゃいい目覚ましになってる」

「幸せそうね」

「そうだろ。焼き立てのパンは最高の食べ物だからな。おかみさんが毎朝焼き立てを買ってきてくれるんだ。今日も一日頑張るぞって気合が入る」

「街の生活はどう? もう慣れたと思うけど」

「広くて迷ったこともあったけどな、今はもう大丈夫だ。たまにここに居た奴らと呑みに行ったりもするんだ」

「会ってるんだ」

「うん。職人だけじゃないから合わせるのはなかなか難しいけど、たまにはな。街での生活に馴染めないやつもいるから、ガス抜きしてやらないと」

「みんなうまく生活できてるわけじゃないのね」

「人も物も溢れてるからな。戸惑うことのほうが多いかな。ここは閉鎖的だろ。完全に閉めてるわけじゃないけど、街から離れてるぶん、どうしたって交流の機会は減るから。いいのか悪いのかわからないよな」

「素晴らしい所よ、ここは。優しくて心の広い人ばかり。一緒に生きてるって感じが好きだわ。とても」

「へへ。なんか嬉しいな」

 照れるロマーリオを見ていると、本音とはいえ呟いたことがちょっとばかり恥ずかしくなった。

「あなたを褒めてるわけじゃないわ」

「ええー、俺は含まれてないの? ああ、神よ」

 大袈裟なポーズで頭を抱えるロマーリオがおかしかった。

 もちろんロマーリオには感謝をしている。彼がいなければ、子供たちの輪に入るのにもっと時間がかかっていたことだろう。だから小さな声で呟いておいた。「嘘よ」と。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

大好きなおねえさまが死んだ

Ruhuna
ファンタジー
大好きなエステルおねえさまが死んでしまった まだ18歳という若さで

処理中です...