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第三部 最終話
8 ニルス
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王都を抜けてから、十日ほど進むと、道案内の看板が出ていた。それに従い小道を進むと、木々の生い茂る視界の先にぽつりぽつりと家が見えてきた。
マウロの隣で景色を眺めていたディーノは、荷台の師匠たちに声をかけた。
「ニルスに着いたよ」
二人はもぞもぞと動いて幌をめくって外を眺める。
「素朴な感じで、雰囲気のいいところですね」
「そうだな」
ピエールと師匠がそれぞれ街の感想を口にした。
レンガや石を積み上げて造られた平屋の建物が並んでいる。蔦が絡み、自然との調和がとれていて、まるでおとぎ話の世界に足を踏み入れたようだった。
緩い坂道を登り、道に沿って曲がると、一気に視界が開けた。
遠くに山がそびえ立ち、手前の丘陵地帯に赤い屋根の家々が連なっていて、教会のものらしい尖塔が一際目立つところにあった。山と建物の間には青々とした緑が生い茂る。
風光明媚な景色に心を奪われ、しばらくの間誰も何も言わなかった。馬だけが黙々と歩を進めていく。
やがて街中に入った。
通りを歩く住人が、興味深そうな顔をこちらに向けてくる。お客が珍しいのかもしれない。
馬車を一度止め、手紙をくれた人物の家を訪ねると、教会の近くにある広い家とのこと。のろのろと馬を進めて、坂道を登る。
歴史の古そうな建物が多く、愛情をかけて手入れをしているのが伝わってくる町並みだった。
猫が尻尾をピンと立てて通りをゆったりと歩き、軒先で犬が眠っている。
どこかで飼っているのだろう、牛や鶏、山羊や羊の鳴き声が聞こえてくる。
通りを行く住人はみんな穏やかなそうな顔をしていて、この街だけ時間の流れがゆっくりなのではないか。そう思ってしまうほど、のんびりした穏やかな空気が漂っていた。
坂道を登りきったところにある教会の前を通り過ぎると、教えてもらったとおり、すぐそこに他の家々よりも広い敷地を有する二階建ての家があった。
門扉の前に馬車を横付けし、ピエールが馬車を降りる。扉に取り付けてあるノッカーを叩くと、少しして扉が開いた。ピエールが現れた女性と話をしている。
話し終えたピエールが馬車に戻ってくると、
「先生。ギュルダン様がお待ちかねだそうです。馬車は裏に回してくれとのことです」
「ならば、ここで降りようか」
ディーノも御者台から降りて二人の後ろをついていった。
家から出てきた人に案内されてマウロが馬車を動かし、角を曲がった。
促されるままに家にお邪魔すると、師匠と同じ年頃のすっきりした体型の中年男性が、手を広げながらこちらに向ってきた。そしてにこやかに微笑みながら師匠に抱きついた。
「やあ、ロドヴィーゴ。待っていたよ」
「招待ありがとう。アルフレート」
二人のおっさんが熱い抱擁を交わす光景に、ディーノはほんの少しだけぎょっとして足を一歩引いた。
マウロの隣で景色を眺めていたディーノは、荷台の師匠たちに声をかけた。
「ニルスに着いたよ」
二人はもぞもぞと動いて幌をめくって外を眺める。
「素朴な感じで、雰囲気のいいところですね」
「そうだな」
ピエールと師匠がそれぞれ街の感想を口にした。
レンガや石を積み上げて造られた平屋の建物が並んでいる。蔦が絡み、自然との調和がとれていて、まるでおとぎ話の世界に足を踏み入れたようだった。
緩い坂道を登り、道に沿って曲がると、一気に視界が開けた。
遠くに山がそびえ立ち、手前の丘陵地帯に赤い屋根の家々が連なっていて、教会のものらしい尖塔が一際目立つところにあった。山と建物の間には青々とした緑が生い茂る。
風光明媚な景色に心を奪われ、しばらくの間誰も何も言わなかった。馬だけが黙々と歩を進めていく。
やがて街中に入った。
通りを歩く住人が、興味深そうな顔をこちらに向けてくる。お客が珍しいのかもしれない。
馬車を一度止め、手紙をくれた人物の家を訪ねると、教会の近くにある広い家とのこと。のろのろと馬を進めて、坂道を登る。
歴史の古そうな建物が多く、愛情をかけて手入れをしているのが伝わってくる町並みだった。
猫が尻尾をピンと立てて通りをゆったりと歩き、軒先で犬が眠っている。
どこかで飼っているのだろう、牛や鶏、山羊や羊の鳴き声が聞こえてくる。
通りを行く住人はみんな穏やかなそうな顔をしていて、この街だけ時間の流れがゆっくりなのではないか。そう思ってしまうほど、のんびりした穏やかな空気が漂っていた。
坂道を登りきったところにある教会の前を通り過ぎると、教えてもらったとおり、すぐそこに他の家々よりも広い敷地を有する二階建ての家があった。
門扉の前に馬車を横付けし、ピエールが馬車を降りる。扉に取り付けてあるノッカーを叩くと、少しして扉が開いた。ピエールが現れた女性と話をしている。
話し終えたピエールが馬車に戻ってくると、
「先生。ギュルダン様がお待ちかねだそうです。馬車は裏に回してくれとのことです」
「ならば、ここで降りようか」
ディーノも御者台から降りて二人の後ろをついていった。
家から出てきた人に案内されてマウロが馬車を動かし、角を曲がった。
促されるままに家にお邪魔すると、師匠と同じ年頃のすっきりした体型の中年男性が、手を広げながらこちらに向ってきた。そしてにこやかに微笑みながら師匠に抱きついた。
「やあ、ロドヴィーゴ。待っていたよ」
「招待ありがとう。アルフレート」
二人のおっさんが熱い抱擁を交わす光景に、ディーノはほんの少しだけぎょっとして足を一歩引いた。
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